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アジカン後藤正文が音楽支援を行うNPO法人創立「何度でもチャレンジできる場所を目指す」

後藤正文
約1か月前2024年07月19日 8:05

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文(Vo, G)がNPO法人「アップルビネガー音楽支援機構」を設立。本日7月19日に静岡・藤枝市役所にて法人の設立会見が行われ、理事を務める後藤、代表理事の小林亮介氏、北村正平藤枝市長らが出席した。

「アップルビネガー音楽支援機構」とは

「アップルビネガー音楽支援機構」はインディペンデントに活動するミュージシャン・アーティストに対して「金銭的、技術的な支援」を継続的に行うことを目的として今年5月10日に発足。活動総称を「APPLE VINEGAR Music Support」とし、藤枝市内に音楽制作スタジオ「Music Inn Fujieda」を建設し、同市を拠点に活動していく。

会見で後藤は、NPO法人を創立するに至った背景を説明。音楽制作における環境の変化が起き、ストリーミングの普及によって音楽の聴かれ方も変わり、制作費が減少してきていることから、インディペンデントで活動しているアーティストたちの活動がままならなくなってきたと真剣な表情で述べる。「(制作費の圧縮によってアーティストが)クリエイティブなチャレンジができない。失敗できないような環境になってしまう。予算が減り、環境がよくなくなりと負のスパイラルが起きて、スタジオの閉鎖などもあり、大手の人たちとインディペンデントの人たちの環境の差を感じるようになった」と口にした彼は、若いアーティストに資金援助をすべく私設音楽賞「APPLE VINEGAR -Music Award-」を設立したものの、それだけではサポートが追いつかないと語る。

アーティストたちが直面している現実に危機感を覚えた後藤は、気兼ねなく使えるスタジオ探しに奔走。藤枝市の空き家対策の部署に勤めていた友人の小林氏から、市内にお茶の倉庫の空きがあることを教えてもらったことがスタジオ設立につながったという。後藤は「地方に音楽スタジオがあることは大事」と強調し、スタジオ文化の継承が鈍ってしまう状況、メジャーとインディーズアーティストの間に富と機会が偏在していることについてアーティストの立場から解説。土蔵を改装して作られる「Music Inn Fujieda」には後藤が長年集めた機材を提供することもアピールした。

また後藤は、「スタジオだけでなくコミュニティを作って、金銭的な面だけでなく、技術的、情報的な面でもインディペンデントなミュージシャンを支える目的でNPO設立に至った」「NPOにした理由は多くの人の協力を得て活動するため、なるべく活動を透明化するため。藤枝市のレガシーにしてほしいし、みんなでシェアして、みんなで育てて、みんなで歩んでいくようなスタジオ作りたくて『APPLE VINEGAR Music Support』を立ち上げました」と自身の決意を語った。

創立者・後藤正文の決意

「アップルビネガー音楽支援機構」が展開する主な事業は「アーティスト支援のためのスタジオ『Music inn Fujieda』運営事業」「録音物の製作支援事業」「私設音楽賞『APPLE VINEGAR -Music Award-』の運営事業」「イベント制作と運営事業」「地域振興事業」「宿泊施設の運営事業」「コミュニティスペース運営事業」の7つ。年内着工、2025年秋頃完成予定の「Music inn Fujieda」は、木造の土蔵を改修した吹き抜けのあるスタジオで、ドラムも演奏できる天井の高い空間になるほか、ミキシングルームなども完備予定。さらにスタジオに隣接する母家は宿泊施設としてリノベーション中で、滞在しながら音楽制作に集中できる環境が作られる。

会見中にはアジカンメンバーの応援コメント映像も上映されたほか、藤枝旧市街地の活性化を推進、地域振興、若手音楽家支援育成などの推進を目的とした連携協定「藤枝旧市街地活性化に関する連携協定」の締結式も実施。後藤は締結式を終えたあと「素晴らしい場所にして、藤枝市の発展にも貢献できるようなコミュニティにしたいと思います」と決意を口にし、質疑応答では「地域としての交流の場になってほしい気持ちが大きい」「自由に失敗できる、何度でもチャレンジできる場所を目指す。たくさんの音楽を作ってくれたら幸いです」「場所柄ツアーバンドが立ち寄ってもらえるスタジオになったら」と「Music Inn Fujieda」の設立に向けて意気込んだ。

気になるスタジオの利用料について後藤は協議中であることを前提に、「目標は1日あたり3万円あたりでお貸しできたら、施設の維持費などを考えると妥当」「宿泊費は検討中だが、お金がない若手はタダで泊めてあげたい……」と自身の率直な思いを明かしていた。

後藤正文 コメント

自分の所属するバンドとは別に、私は主にインディーで活躍するバンドやミュージシャンたちの活動の手伝いをしてきました。そうした現場は、メジャーレーベルの制作環境よりも予算の規模が小さく、各楽器の録音につかえる資金に制約があります。
誰でも小さなパソコンで音楽制作ができるようになり、自宅の一室を改装したようなプライベートスタジオは増え続けていますが、商用のレコーディング・スタジオは閉鎖や閉業が続いています。文化として守るという意志なくしては、維持することが難しいでしょう。
効率化を是とする社会のなかで、富や機会は偏っていきます。金銭的に恵まれた人だけが、優れた環境にアクセスできるようになっていきます。商業的に成功しなければ、より良い設備は使えません。
そうした経済的な障壁の前に引き返す人が多い社会が、どれだけの可能性を失っているのかを想像すると、何かをせずにはいられないと思うようになりました。
まずは、明治時代から残るお茶の倉庫=土蔵をレコーディング・スタジオに改築します。
スタジオには私がこれまでに集めたレコーディング機材を惜しみなく提供し、
誰でも自由に使えるように整備します。
そして、隣接するビルには滞在用の宿泊施設と、
様々なワークショップや地域交流が行なえるコミュニティスペースをつくります。
顧客を集めて営業するのではなく、参加者を募って共に運営していくような、新しいかたちのスタジオを目指します。

江崎晴城理事(藤枝江崎新聞店代表) コメント

本日は所用により参加できず申し訳ありません。
才能あるミュージシャン支援の夢に向かって奔走する後藤さんの姿に共感し、私はNPO法人アップルビネガー音楽支援機構の理事として、藤枝市の旧市街地で計画されているレコーディングスタジオおよび「ミュージックインフジエダ」事業用地建物を提供することにいたしました。
藤枝市にアーティストや音楽を楽しむ方々が多く集うことを想像するだけで胸が踊ります。人口減、少子高齢化、商店街の衰退などの課題解決にも寄与するNPOの活動を、藤枝市が連携協定でバックアップしていただけることはたいへん心強く、深く感謝いたします。
本日を機会に、取り組みに対しより多くの方のご支援、ご賛同をいただきますようお願い申し上げます。

釈徹宗理事(相愛大学学長) コメント

本日は藤枝市とNPOアップルビネガー音楽支援機構との協定締結発表にお集まりいただき、ありがとうございます。
NPOの活動は、公機関や民間企業などが扱いにくいようなニッチな領域を埋める特性を持っています。
その特性を十分に生かすためには、機動力のあるフットワークで、さまざまな組織や共同体や個人と連携・協働・懸架していくことが大切になってまいります。
このたびの協定は、NPOアップルビネガーによる「若手音楽家の育成・支援」「地域振興」という思いと、藤枝市による「旧市街地活性化」「まちづくり」の意向とが組み合わさった結果です。
どうぞご理解、ご支援、ご協力を心よりお願い申し上げます。

神吉直人理事(追手門学院大学経営学部教授) コメント

本日は担当講義があり、足を運ぶことが叶いません。
生まれたばかりのNPOに、いち早く市からの支援をいただけること、大変頼もしく思います。
心より感謝申し上げます。
過去から続く音楽文化の土壌を豊饒なまま次代にパスする。また、その文化へのアクセスを各人の環境にかかわらずなるべくフェアで民主的なものとする。こうした後藤さんの願いを、ご縁があっていろいろなところで伺ってきました。そしてこの度、後藤さんの活動を支援させていただく機会を賜りました。経営組織論、組織行動の研究者として、組織運営に関わる点から意見を述べさせていただくとともに、公私で知り合ったいろいろな地域のコミュニティの担い手の方々を後藤さんに紹介することで貢献したいと考えています。
後藤さんだけでなく、役所をはじめとする藤枝市の方々と他地域をつなぐきっかけになれれば幸いです。
後藤さんのASIAN KUNG-FU GENERATIONに「スタンダード」という曲があります(是非、この曲を聴いてください)。
この後生まれるちょっと風変わりな施設・ミュージックインフジエダのことを、一人でも多くの市民のみなさまが「何か気になる」場所として見守り、時には足を止め、声をあげるなど、何らかの形で関わってくださいますように。
後藤さんの願いでもある藤枝市発の試みが、文化支援のスタンダードだ、となりますように。

※江崎晴城の崎は、たつさきが正式表記。

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