8月28日に発売されるクリープハイプ初のトリビュートアルバム「もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって」の先行試聴会が8月5日に東京都内で行われ、クリープハイプが出席した。
タイトルは「二十九、三十」の歌詞から
トリビュート盤はクリープハイプが現メンバー編成になって15周年を記念してリリースされる、全11曲収録の作品。クリープハイプと縁の深いback number、indigo la End、10-FEET、ヨルシカ、ano、東京スカパラダイスオーケストラ、My Hair is Bad、ウルフルズ、UNISON SQUARE GARDEN、WurtS、SEKAI NO OWARIの参加がアナウンスされていた。
試聴会「もしも予約してくれたならそっとこんな声を聴いて」ではトリビュート盤の収録曲がついに明らかに。本作の予約購入者の中から選ばれた幸運なファンとともに、尾崎世界観(Vo, G)、長谷川カオナシ(B)、小川幸慈(G)、小泉拓(Dr)が各曲のワンフレーズを聴き、楽曲にまつわるトークを繰り広げた。
ファンの温かい拍手を浴びながらステージに登場したクリープハイプ。悩みながら決めたという「もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって」というタイトルについて、尾崎は「二十九、三十」の歌詞「もしも生まれ変わったならいっそ家電にでもなって」が元になっていることを説明する。そして、収録曲の発表を前にカオナシは「どの楽曲をどのアーティストが担当するのか、これをもって発表になるってことですよね?」と期待感をのぞかせた。
広く知られている曲をカバーしたSEKAI NO OWARI、原曲キーを上げたヨルシカ
楽曲を「栞」に決めたうえでSEKAI NO OWARIにオファーしたというクリープハイプ。尾崎は「SEKAI NO OWARIに壮大なイメージがあるので、一番広く知ってもらってる曲じゃないと太刀打ちできないんじゃないかという気持ちがありました」と率直な思いを語り、小泉は「曲の持ってるポテンシャルの引き出し方が違って、ポップな仕上がりになっていて素晴らしいですよね。俺が演奏するともっとゴツゴツしちゃうんだけど、軽快になっているなと思いました」とサウンド面に触れた。
トリビュートの収録曲の中で唯一原曲キーより高いのがヨルシカ「憂、燦々」。尾崎は「原曲キーより高いのに落ち着いて聴こえるのがヨルシカの魅力。すごいボーカリストに歌っていただけるのがトリビュートのよさだなと思いました」とヨルシカの才能をたたえる。カオナシはキタニタツヤがベースを弾いていることに触れ、そのサウンドを絶賛した。
“弱い男”を歌う10-FEET・TAKUMA、フレーズの“お返し”をしてきたUNISON SQUARE GARDEN
10-FEETは悩みに悩んだ末に、TAKUMA(Vo, G)が好きな「手と手」をカバーすることに決定したという。カオナシは「この曲の主人公は“弱い男”というイメージが個人的にあるんですけど、TAKUMAさんが歌う弱い男もいいなと思いました」とボーカルに言及し、小川は「TAKUMAさんが原曲のフレーズをなぞって弾いてくれて。スカパラの加藤(隆志)さんもギターで参加しているんですけど、加藤さんのストラトの音がとても気持ちいいですね」とギターフレーズの感想を述べた。ドラムサウンドをチーズにたとえたのは小泉で「クリープハイプがプレーンだとしたら、10-FEETは燻製味のような気がしました」と語った。
UNISON SQUARE GARDENがカバーしたのは、7月のクリープハイプとの対バンライブ「UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE“fun time 歌小屋”」(参照:ユニゾン×クリープハイプ、お互いの存在へ感謝を示した武道館アニバーサリー対バン)でも披露した「イト」。尾崎は「2番のAメロのところは田淵智也くんが歌ってるんだよね。珍しいことなのですごくうれしいです。ユニゾンのトリビュート(「Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~」)に参加して『さよなら第九惑星』をカバーしたときに自分たちの曲の『栞』と『寝癖』のフレーズを入れたんですけど、そのお返しとしてユニゾンの『イト』には『シュガーソングとビターステップ』のフレーズが入っていて。そういうのができるのも長くバンドをやっているからこそだと思います」としみじみ語る。小泉は複雑に展開するドラムを聴いて「リズムが変態ですよ。あんなことしなくていいんですよ」と笑顔を浮かべた。
声に感情があふれるano、オリジナリティを発揮したindigo la End、若いのにすごいWurtS
anoがクリープハイプの楽曲の中からセレクトしたのは「社会の窓」。これを聴いた尾崎は「演じてるようで素のままを出してるような、不思議な方ですよね」とコメントし、小川も「anoさんは声に感情を乗せるのが上手ですよね」とその歌声の魅力に引き込まれる。
indigo la Endはいくつか候補がある中で最終的に「ABCDC」をセレクトしたという。川谷絵音(Vo, G)が以前から好きだったこの曲に関して、小泉は「原曲に忠実にやってくれているんですけど、サビのコード進行は変えてるよね。indigoのオリジナリティが出ていていいですよね」、カオナシは「長田(カーティス)くんがアルペジオ主体でアレンジしていて、これぞindigoのギターサウンドだなと思いました」とそれぞれ感想を口にした。
「キケンナアソビ」はクリープハイプがライブでもよく披露してきた、打ち込みのサウンドが中心の1曲。WurtSのカバーを聴いた尾崎は「バンドサウンドにしてくれたことに驚いたし、落ち着いているけれど尖っていて、気だるそうな感じがある。自分たちではこういうカッコいい感じにならないので、うらやましいですね。若いのにすごいよ。トリビュートの参加者では最年少です」と絶賛する。続けてカオナシは「ロック調でダンサブルな感じがWurtSくんっぽい。ライブで聴きたいなと思いました」と声を弾ませながら話した。
新しく命を吹き込んだ東京スカパラダイスオーケストラ、人間力に満ちたウルフルズ
8曲目には東京スカパラダイスオーケストラ「ナイトオンザプラネット」、9曲目にはウルフルズ「二十九、三十」とクリープハイプの先輩バンドが並ぶ。「ナイトオンザプラネット」のカバーには尾崎がボーカルで参加。尾崎本人は「ボーカルを別で録っていて、スカパラの演奏でまた新しく命を吹き込んでもらった感覚ですね。長くバンドを続けてきたからこそ、表現できる余裕と深みを感じました」と語る。クリープハイプでキーボードも担当するカオナシは「ピアノソロではけっこう原曲に寄せてくださっていて、沖(祐市)さんが私の手を握って前を歩いているような、そんな気持ちになりした」と沖の演奏に言及した。
ウルフルズ「二十九、三十」はクリープハイプ選曲によるもの。その理由について尾崎は「トータス(松本)さんの声で聴きたいという個人的な願いがあって。バンドとしても人間としてもすごくカッコいいなと思います」と明かす。一方、小泉は「以前ライブで共演して。打ち上げのときに俺のこと『男前やな』と言ってくれたんで、『そちらこそ』と返したら、すごく笑ってくれたんですよ。その記憶が強いですね。カバーもウルフルズさんみたいに温かい雰囲気になっていて、人間力を感じました」とトータス松本との思い出を懐かしみながら、カバーへの思いを言葉にした。
アップテンポなMy Hair is Bad、安心して聴けるback number
「ただ」はマイヘアの椎木知仁(G, Vo)お気に入りの楽曲で、尾崎は「2番のAメロには原曲にない歌詞があって、すごく素敵なフレーズなのでぜひ注目していただきたいなと思います」とマイヘアのカバーバージョンをアピール。小泉は「かなりアップテンポで驚きましたね」と原曲と異なるポイントに触れる。
「バンド」はクリープハイプ曰く“思い出がありすぎる曲”。小泉は「back numberのメンバーも『バンド』という曲からきっと何かしらを感じていると思うんですよ。世の中のバンドをやってるすべての人がこの曲をカバーしたらいいと思う」とこの曲を改めてプッシュする。尾崎は「バンド」の制作時期を振り返りつつ「原曲はクリープハイプの活動が不安定な時期に作ったので、よくも悪くもゴツゴツしていて心を揺さぶる部分があるのかなと思うんですけど、back numberのカバーは安心して聴ける……また違ったタイプの『バンド』にしてもらえたと思います」と語った。
集まったファンへメッセージ
トリビュート盤の全11曲を紹介し終えたクリープハイプ。尾崎は「ずっとトリビュートを作りたいと思っていたけれど、現メンバー15周年のボーナスとして、夢のようなことがあってもいいのかなと思って、今年作ることに決めました。どのアーティストも快くオファーを受けてくれて、本当にうれしかったです」と話し、集まったファンに向けて「なかなかCDが売れない時代に買っていただけるのは幸せです。これからもクリープハイプとしてがんばっていくのでよろしくお願いします」とメッセージを送った。
「もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって」収録曲はこちら
V.A.「もしも生まれ変わったならそっとこんな声になって」収録曲 / アーティスト
01. 栞 / SEKAI NO OWARI
02. 憂、燦々 / ヨルシカ
03. 手と手 / 10-FEET
04. イト / UNISON SQUARE GARDEN
05. 社会の窓 / ano
06. ABCDC / indigo la End
07. キケンナアソビ / WurtS
08. ナイトオンザプラネット / 東京スカパラダイスオーケストラ
09. 二十九、三十 / ウルフルズ
10. ただ / My Hair is Bad
11. バンド / back number