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「生きてるうちくらい成長したくない」a flood of circleが満員の野音で鳴らした愚直なロックンロール

佐々木亮介(Vo, G)(Photo by Viola Kam[V'z Twinkle])
約1か月前2024年08月15日 13:04

a flood of circleが8月12日にデビュー15周年記念公演を東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で開催した。

実力で10年ぶり野音を満員に

2006年に結成され、2009年4月に1stフルアルバム「BUFFALO SOUL」でメジャーデビューしたa flood of circle。何度かのメンバーチェンジを経て、2016年から佐々木亮介(Vo, G)、渡邊一丘(Dr)、HISAYO(B)、アオキテツ(G)という布陣で活動している。なお、a flood of circleが野音のステージに立つのは約10年ぶり。佐々木はインタビューで当時のことを「下駄を履かせてもらっていたというか、自分たちの実力だったかどうかわからない」と振り返っており、決して成功とは言い難い状況だった。しかし、彼らは腐ることなく、粘り強く着実にライブを重ね、メンバーが変わろうとも、コロナ禍に見舞われようとも、一度も活動を止めることなく“転がり”続け、自分たちのシンパを獲得してきた。その結果、この日の野音公演はソールドアウト。夏らしい天候にも恵まれ、開演時には耳をつんざくほどの蝉の声が会場周辺にこだましていた。

節目のライブ、満員御礼のシチュエーションであっても、a flood of circleの無骨なスタイルは変わらない。下手にグランドピアノが厳かに鎮座している以外、ステージセットはシンプルそのもの。SEもなくふらりとした調子でメンバーが姿を見せると、怒号のような歓声と拍手が沸き起こった。佐々木が身にまとっているのは、デビュー時以来変わらないトレードマークである黒の革ジャン。彼が「おはようございます。a flood of circleです」とおなじみの挨拶を放ったのを機に、渡邊がギャロップのようなビートを打ち鳴らし、ライブは「BUFFALO SOUL」の収録曲である「Buffalo Dance」で勢いよく幕を開けた。HISAYOの豪胆なベースに、唸りを上げるアオキのノイジーなギター、そこに佐々木のシャウト混じりのボーカルが絡みつく。「俺は生きている」。佐々木の実感を伴った声が夏空に響くと、オーディエンスは思わず快哉を叫んだ。

俺、好きなんだよね。青臭いって言葉

「たまたま野音が抽選で当たったので(公演を)やることになった」とうそぶいていた佐々木だったが、ライブはほぼ年代順にa flood of circleの歴史をたどるアニバーサリーらしい構成に。奥村大(G / wash?)を迎えて制作された2009年11月発表の「博士の異常な愛情」、HISAYO加入直前にリリースされた「Human License」、ライブの定番曲として愛され続ける「Blood Red Shoes」と各時代のa flood of circleを象徴してきた楽曲が息もつかせぬ勢いで叩き付けられていく。

ひりついた空気に風穴を開けたのは、てらいもなく愛を叫び歌った「I LOVE YOU」、マンガ「ふつうの軽音部」に登場したことをきっかけに改めて脚光を浴びている「理由なき反抗(The Rebel Age)」の2曲。佐々木は自分の定位置などないとばかりにハンドマイクでステージを練り歩き、客席にマイクを向けてシンガロングを求める。すると少し暗くなり始めた野音に、メンバーを後押しするような大合唱が起きる。アクセルを踏みっぱなしの前半戦に区切りをつけたのは「ベストライド」。佐々木はアンプの横に置いていた「お茶割り」のロング缶を煽り、「なけなしの命賭けて野音までやってきた」「世界を塗り替えるんだ 今日こそ」と自らを鼓舞した。

空に半月がうっすらと浮かぶ中、切実に奏でられた「月面のプール」を経て、佐々木は「青臭いって言葉があるじゃない。俺、好きなんだよね。青臭くない人で面白い人はいない。みんな今日は真っ青で素敵です」と笑う。そして、その言葉を体現するように「BLUE」をアコースティックアレンジでパフォーマンスして、オーディエンスの青臭い感情を喚起した。その後、再びギアをトップに入れた4人は、渡邊、HISAYO、アオキのテクニカルなプレイを生かしたブルースセッションなどを挟みつつロックチューンを連投。「Lucky Lucky」ではアオキのギターにトラブルが発生するも、演奏の手を一切止めず、阿吽の呼吸で乗り切る胆力でバンドの揺るぎない絆を証明した。

何回倒れてもやってきたロックンロールバンドがここに

すっかり夜の帳が下り、照明演出が本領を発揮する時間帯。佐々木はグランドピアノの前に座るとポロポロと鍵盤を叩き、かすれた声で「白状」を歌い出した。2021年にリリースされた「白状」はそのタイトル通り、佐々木が感情と思いを吐露したバラード。佐々木にはまばゆいスポットライトが落ち、その影を床に色濃く映し出す。この上ないドラマチックな演出の中で彼は、横にたたずむメンバーと、固唾をのんで見守るオーディエンスの視線を受けながら「これが生きる理由だ くたばるとこまで 行こうぜ」と絶唱。a flood of circle、そして自身のアーティストとしてのスタンスをステージに刻み付けた。「白状」を契機に続いたのは、佐々木の生き様を愚直なまでに表現した「花降る空に不滅の歌を」「月夜の道を俺が行く」「本気で生きているのなら」といった楽曲。2023年に発表された「ゴールド・ディガーズ」では、激しいアンサンブルに乗せ、歌詞の一部を「武道館 取んだ2年後 赤でも恥でもやんぞ」と変えながら気炎を上げ、バンドとしての“次の一手”を示した。

ここまで時系列で発表してきた楽曲をプレイしてきた4人だったが、本編のクライマックスに据えたのは未来への渇望を歌った、メジャーデビュー前の楽曲「プシケ」と「シーガル」。「何回倒れてもやってきたロックンロールバンドがここにいる。ただのヤツにしか歌えない歌があるってことを証明しようぜ」という言葉に呼応するように、客席のあちこちから歓声が沸き起こった。

アンコール代わりの「ロックンロール」コールを浴びながら4人は再びステージへ。佐々木は「才能が枯れてる。でも枯れてからが勝負。だってやるしかないから」「毎年アルバムをひねり出すくらいが、ステージで歌ってる意味があると思う」とニューアルバムのリリースを告知しつつ、「今日にふさわしい曲」という紹介から15年間の軌跡に思いを馳せた「虫けらの詩」を叫ぶように歌い上げる。「死ぬまで元気でね」。そんな言葉を少しぶっきらぼうに放った佐々木がアカペラで「Honey Moon Song」を歌い始めると、その声に徐々に渡邊、HISAYO、アオキの奏でるビートや音色が加わる。その間、ビルの間からは半月が顔を覗かせ、柔らかい光で4人を照らし、拳を突き上げるオーディエンスを包み込んでいた。

ライブ中に「死んだとき、『この人なりに成長しました』とか弔辞を読まれるだけなんだと思うんだよね。だから生きてるうちくらい成長したくない」「余裕が生まれるのは怖い。ギリギリのときだけできる歌がある」と笑いながら語っていた佐々木。3時間で32曲披露するという暴挙ともいえる“ギリギリ”のライブを終えた4人は、満身創痍の様相を見せながらも晴れ晴れとした顔でステージをあとにした。

セットリスト

「a flood of circleデビュー15周年記念公演 “LIVE AT 日比谷野外大音楽堂”」2024年8月12日 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)

01. Buffalo Dance
02. 博士の異常な愛情
03. Human License
04. Blood Red Shoes
05. The Beautiful Monkeys
06. I LOVE YOU
07. 理由なき反抗(The Rebel Age)
08. I'M FREE
09. Dancing Zombiez
10. GO
11. Black Eye Blues
12. ベストライド
13. 月面のプール
14. BLUE
15. 花
16. New Tribe
17. ミッドナイト・クローラー
18. Blood & Bones
<Session>
19. Lucky Lucky
20. 美しい悪夢
21. Rollers Anthem
22. 北極星のメロディー
23. 白状
24. 花降る空に不滅の歌を
25. 月夜の道を俺が行く
26. 本気で生きているのなら
27. キャンドルソング
28. ゴールド・ディガーズ
29. プシケ
30. シーガル
<アンコール>
31. 虫けらの詩
32. Honey Moon Song

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