STUTSのワンマンライブ「“90 Degrees” LIVE at 日比谷公園大音楽堂」が8月10日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)で開催された。
涼しげな空気をブチ破ってお祭り男登場
日本を代表するヒップホッププロデューサーとして活躍し、昨年6月には東京・日本武道館でのワンマンライブを成功させたSTUTS。今回のライブの舞台である日比谷野音と言えば、伝説的イベント「さんピンCAMP」が行われたことでも知られるヒップホップの聖地だが、彼が野音で単独公演を行うのはこれが初となる。STUTSは憧れの舞台でどんなライブを繰り広げたのか? テーマはずばり“夏祭り“だ。
当日の野音は、ジリジリと蝉の鳴き声が響き、いかにも夏真っ盛りといった風情。そこに現れたバンドメンバーの岩見継吾(B)、仰木亮彦(G / 在日ファンク)、TAIHEI(Key / Suchmos、賽)、吉良創太(Dr)、武嶋聡(Sax, Fl)がゆるやかに演奏を始める中、半袖短パンのSTUTSも合流する。彼らのさわやかなセッションで会場には涼しげな空気が流れるが、STUTSがMPCを叩き始めると、サプライズゲストのKMCがいきなりバイブス全開で登場。畳みかけるように金テープがパーンと放たれ、会場はお祭りムードに一変した。
STUTSが歌い始めたきっかけは
夏そのもののような熱いラップで先陣を切ったお祭り男・KMCに続いては、「Ride」で仙人掌がマイクを握り、その後も事前にアナウンスされていなかったゲストが次々とステージへ。STUTSバンドのグルーヴィな演奏に乗せて、シンガーの北里彰久やYo-Seaが清涼感あふれる歌声を届け、Yo-Seaとのコラボ曲「Pretenders」で現れたC.O.S.A.はパンチの効いたラップで観客をブチ上げる。
またゲストを迎えた曲の合間に完全生バンドで演奏された「One」では、STUTS自身がラップし、tofubeatsのパートも自ら歌唱。今では自身の歌声を乗せた楽曲を多数リリースしているSTUTSだが、以前は歌うことに躊躇いがあったという。そんな彼が歌うきっかけになったと語るのが、7年前に行われた長岡亮介(ペトロールズ)とのセッションだ。ここでラップに挑戦したことが現在のSTUTSのパフォーマンスにつながっている。
そうした縁を語りつつ、野音のステージに長岡を迎え入れたSTUTSは、彼とタッグを組んで制作し、NHK Eテレ「あおきいろ」に提供した楽曲「いろどりのうた」をデュエット。STUTSは観客の前に堂々と歩み出て自身の声を野音に響かせ、アウトロでは長岡が仰木と鮮やかなギタープレイを繰り広げた。
誰のせい? それはあれだ?
長岡とC.O.S.A.がそろい、「Above the Clouds」が始まると、KID FRESINOも加わって客席は大盛り上がり。こうして数珠つなぎのようにしてSTUTSの仲間たちが代わる代わるステージに現れ、にぎやかなパーティは続いていく。Campanellaがスキルフルにラップした「Stickey Step」に続いては、「Storm」で再び飛び出してきたKMCがパワフルなスピットで観客の心を揺さぶる。ライブ中盤にはSTUTSのライブには欠かせない存在と言える盟友のJJJやBIMも登場。眼帯姿のBIMはJJJに「大丈夫?」と心配されていたが、ものもらいとのことで、「最近『ワンピース』読んでるから」と説明して観客の笑いを誘った。
次第に日は落ちていき、BIMが「マジックアワー」を歌い終える頃には、あたりはすっかり真っ暗に。去り際に「誰かのせいにしたくなっちゃうときがあると思うんですよ」と切り出したBIMの「誰のせい? それはあれだ?」「夏のせい!」という唐突なコールアンドレスポンスから登場したのはスチャダラパー。彼らは昨年から急速にSTUTSと親交を深め、ここ1年で“ジョイントライブ”を重ねている。この“ジョイントライブ”でおなじみになったのが、楽曲を“ジョイント”させるパフォーマンスだ。STUTSとスチャダラパーは「サマージャム’95」と「Summer Situation」というそれぞれの夏曲をシームレスにジョイント。すでに何度も披露されているコラボだが、夏の野音というシチュエーションにこの上なくマッチしていた。
スチャダラパーは巧みなトークで巻き気味の進行を調整する熟練芸も見せてステージに残り、「Pointless 5」でPUNPEEとコラボすると、続くマイクリレー曲「Expressions」にも参加。軽快なビートに乗ってBoseとANI、Campanella、北里、仙人掌、そしてバンドメンバーがそれぞれの個性を発揮したパフォーマンスを見せる中、シャボン玉が宙を舞い、お祭りムードは最高潮に達した。
フリースタイルからのブギー・バック・ハラスメント
JJJを迎えた「Changes」でライブ本編は一旦締めくくられるが、祭りはまだまだ続き、PUNPEEとの「夜を使いはたして」でアンコールがスタート。さらにSTUTSが「Renaissance Beat」を演奏し始めると、STUTSのワンマンで恒例となったフリースタイルセッションが始まり、PUNPEE、 KMC、BIMがマイクを回す。
3人のマイクリレーがしばらく続いたのち、スチャダラパーが合流すると、彼らはフリースタイルではなく往年の名曲「今夜はブギー・バック」をパフォーマンス。Boseのやや強引な振り(ブギー・バック・ハラスメント)でPUNPEEと STUTSがフックを歌唱し、観客を大いに楽しませた。そしてSTUTS自身が歌う「Seasons Pass」でライブは穏やかに終演。その人柄ゆえかSTUTSのライブは常にほほえましい空気が流れているが、開放的な野音の雰囲気も相まって、いつも以上にグッドバイブスに満ちたライブだった。
なおSTUTSは、ZOT on the WAVEとのユニット・STUTS on the WAVEとして、10月8日に東京・Zepp Shinjuku(TOKYO)でワンマンライブを行うことを発表。終演後のBGMとして、ZOT on the WAVEとともに制作したと思われる新曲のトラックをプレイしていた。今後のリリースを楽しみにしておこう。
セットリスト
STUTS「“90 Degrees” LIVE at 日比谷公園大音楽堂」2024年8月10日 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)
01. 90 Degrees Intro
02. Rock The Bells feat. KMC
03. Ride feat. 仙人掌
04. One
05. Daylight Avenue feat. 北里彰久
06. Paradise(Ever Green)
07. Flower feat. Yo-Sea
08. Pretenders feat. C.O.S.A., Yo-Sea
09. Come to Me
10. いろどりのうた
11. Above the Clouds feat. 長岡亮介, C.O.S.A., KID FRESINO
12. Presence I feat. KID FRESINO
13. Conflicted
14. Sticky Step feat. Campanella
15. Storm feat. KMC
16. 心 feat. JJJ
17. Voyage feat. JJJ, BIM
18. Veranda feat. BIM
19. マジックアワー feat. BIM
20. サマージャム’95 / Summer Situation feat. スチャダラパー
22. Pointless 5 feat. スチャダラパー, PUNPEE
23. Expressions feat. Campanella, 北里彰久, 仙人掌, スチャダラパー
24. Changes feat. JJJ
<アンコール>
25. 夜を使いはたして
26. Renaissance Beat
27. Seasons Pass