YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。2023年10月に連載がスタートし、今回で1周年を迎えることができました。これもひとえに読者の皆さんのおかげです。これからも引き続きご愛顧のほどよろしくお願いいたします。
今週はYouTubeで9月20日から9月26日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングでは、当連載の8月2週目の記事で紹介したのち徐々にランクアップしていた弌誠の「モエチャッカファイア」がついにウィークリー1位に。初登場92位から着実に話題を広げた結果、今回の素晴らしい順位に輝いた。
28位にはYEONJUN(TOMORROW X TOGETHER)の「GGUM」が登場した。この曲はEDMを取り入れた中毒性の高いヒップホップナンバー。YEONJUNは作詞やパフォーマンスの構成にも参加しており、随所に彼のこだわりや独創性が感じられる。
34位にはnqrseの「Nightfall Ops」が登場。9月22日にMVが公開されて、1週間で200万回再生を突破した。
80位は悠馬(コムドット)の「情京」がランクインした。この曲は上京をきっかけに別れてしまった彼女に思いを馳せる切ないラブソング。MVに悠馬の学生時代からの推しである、元・櫻坂46の鈴本美愉が出演したことも話題となった。
人気グループのメンバーのソロ曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップした。
櫻坂46「I want tomorrow to come」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場26位
櫻坂46が10月23日にリリースする10thシングル「I want tomorrow to come」のMVが到着した。この曲では前作9thシングル「自業自得」に引き続き、三期生の山下瞳月がセンターを務めている。今回の選抜発表を受けて、山下は9月26日に公開された公式ブログで心境をつづっている。
「2作連続センターと聞くときっと驚く方が多いのが事実だと思いますし、自分自身もきっちりとその重要さを理解しているつもりではいます。でも、もちろん弱音を吐くつもりはなくて。加入してから常に三期生も、私自身もありがたい環境の中のびのび楽しく活動させて頂けて色んな景色を見させていただけて、全部全部これまでの先輩方とBuddies(※編集部注:櫻坂46ファンの呼称)の皆さんの頑張りのおかげで。私はその中に混ざって、色々なことを学ばさせていただいたのできっと強く前を向いて10thシングルに貢献できる人になるべきだと思います」
2作連続でのセンター抜擢という重圧を背負いながらも、弱音を吐かずに、周囲に感謝して、強く前を向こうとしている山下。「I want tomorrow to come」のMVはそんな彼女の思いが感じ取れる、挑戦的な映像になっている。
MV監督を務めたのは、初めて坂道グループの映像を手がける中村浩紀。彼はHiromitsu Kitayamaの「JOKER」やゲスの極み乙女。の「ロマンスがありあまる」なども監督しており、陰影を生かした芸術性の高い映像に定評がある。「I want tomorrow to come」もまた、メンバーのさまざまな表情を引き出したライティングや、躍動感のあるダンスシーンなど、思わず見入ってしまうMVに仕上がっている。YouTubeのコメント欄では「新しい櫻坂の第一歩を感じるMV! 天ちゃん夏鈴ちゃん的野の立ち姿だけで魅せてくるの流石すぎる。タイトルの出し方オシャレすぎない???」「新たな櫻坂が見れて幸せ」など称賛する声が多く上がっている。
tuki.「愛の賞味期限」弾き語りver. -晩餐歌アンサーソング-
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場71位
当時15歳だったシンガーソングライターのtuki.が、2023年9月29日に配信リリースした「晩餐歌」は、デビュー曲にもかかわらずいきなりのバイラルヒットとなり、ストリーミング再生数は3カ月後の今年1月に累計1億回を突破。まだ中学3年生だった彼女は、わずかな期間で誰もが知るほどの人気アーティストの仲間入りを果たすことになった。
そんな鮮烈なデビューからちょうど1年後の2024年9月29日にリリースされた新曲「愛の賞味期限」は、「晩餐歌」のアンサーソングとして作られた楽曲だ。そばにいる時間が長くなるにつれて、付き合っている相手が自分に興味を持たなくなっている状況を感じた結果、「愛が賞味期限切れになる」という名フレーズに着地する。
YouTubeのコメント欄では「晩餐歌は“何回一緒に夜を過ごしても得られない愛を頂戴““フルコース”“(最後の)晩餐”って言葉を言ってて、高級で深すぎる愛を伝えてるのに対して、この歌は“賞味期限”“コンビニ”って単語ですぐ無くなってしまうような愛を伝えてる気がする……!」「フルコース→コンビニエンス。何十回の夜を過ごしたって得られぬような愛してるを並べてみて→今日は今日の愛だからさ、今日何もくれないならお腹がすくわ。これ対比よすぎるね。tuki.さん本当天才だわ」など、歌詞に関する考察が盛り上がっている。
9月29日にはMVが公開されており、歌詞の世界観を見事に表現したアニメーションになっているので、合わせてチェックいただきたい。
オーイシマサヨシ「あとの祭り」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場83位
TOKYO MXのテレビドラマ「サバエとヤッたら終わる」に提供したオーイシマサヨシ初のドラマ主題歌「あとの祭り」のMVが公開されたのは8月14日。その後、9月30日のドラマ最終回に向けてこの曲の注目度も高まり、ついにYouTubeのMVランキングに初登場を果たした。
この曲では歌い出しの「一線超えたら あとの祭り」という歌詞をはじめ、「勝つのは理性か本能か」「一時の空気に流されて その責任取れますか?」など、好きな人と一線を超えそうな状況を前に、脳内がパニックになってしまう様子を表現している。仲のいい女子との友情と性欲の間で揺れるキャンパスライフを描いたドラマにピッタリな楽曲だ。オーイシ自身がこの曲について「自分がいままで作った曲の中でも一番ぶっ飛んだ曲になりました! アーティストイメージなど諸々をかなぐり捨てて丸裸の心で制作したので、気に入っていただけると幸いです!」とコメントしている通り、彼の過去作の中でも屈指のぶっ飛んだ1曲だ。
MVを手がけたのは「なまらめんこいギャル」「ロールプレイング」「世界が君を必要とする時が来たんだ」を含め、オーイシのMVではおなじみの安井塑宇。法被を着て踊り狂うシーンは、大根仁監督のドラマ「モテキ」のOPを彷彿とさせる。先述した頭の中のパニック状態を表すかのように、ひまわりのオーイシ、舞妓のオーイシ、恋愛ゲームのオーイシなど、奇想天外な映像の数々に思わず笑ってしまう。
なお、この曲はMVのほかにダンスパフォーマンスビデオも公開中。2025年3月に東京・日本武道館で行われる「オーイシ武道館 Vol.2」に備えて、しっかりと練習して振付をマスターしよう。