原因は自分にある。が、11月17日に神奈川・ぴあアリーナMMでワンマンライブ「ARENA LIVE 2024 白昼夢への招待」を開催した。
満員のぴあアリーナ、開いた“白昼夢”への扉
「ARENA LIVE 2024 白昼夢への招待」は、げんじぶにとって昨年11月の同所での公演以来、2度目のアリーナワンマンライブ。チケットは早々にソールドアウトという高い注目度の中で迎えたライブ当日、げんじぶは東洋風の美をコンセプトとした世界観で観測者(原因は自分にある。ファンの呼称)を“白昼夢”へと誘う2時間のステージを披露した。
楼門が朱色に染まり7色の花びらが舞い散ると、音玉の爆発とともにげんじぶの7人が姿を見せた。白い詰襟と織物の生地が特徴的な和洋折衷のジャケットには、花と鳳凰の刺繍。その雅やかな佇まいに満員の客席から声が上がった瞬間、本公演のテーマソングである「夢之相 - イメノアイ」が鳴り響く。和楽器の音色とデジタルサウンドがパワフルに交錯するこの曲に気迫を漲らせ、エネルギーに満ちた歌とダンスで観る者を白昼夢へと誘う扉を勢いよく開けた7人。続く「以呂波 feat. fox capture plan」のイントロでは、この曲を待ち望んでいたかのような観測者たちの歓声が響く。いろは歌をモチーフに過去と現在との往来を歌う「以呂波」は、げんじぶが和のコンセプトを初めて取り入れた楽曲だ。涼やかなピアノが疾走するサウンドの上、時空を超える“主人公”を演じる桜木雅哉を筆頭に7人は雄弁な歌とダンスで幽玄の世界を現出させた。
「以呂波」と同様、ピアノの音色が鮮烈に曲をリードする「余白のための瘡蓋狂想曲」へ続くと、今度は舞台後方からファイヤーボールが勢いよく噴出。7人は炎を背に高速BPMを乗りこなし、軽やかなダンスステップと切れ味鋭いラップで観測者をヒートアップさせた。そして、続くロックナンバー「黄昏よりも早く疾走れ」ではメンバーがメインステージから伸びる花道へとダッシュ。アリーナの中央に設けられたセンターステージの上、大倉空人は四方を囲む観測者へ向け「おい、この瞬間一番楽しんでいこうぜ!」と力強く語りかける。加速度的な盛り上がりの中で「嗜好に関する世論調査」へとなだれ込むと、今度はリーダーの吉澤要人が「観測者のみんな! 盛り上がる準備はできてるか!?」とファンを鼓舞。この呼びかけに大きな歓声を返した観測者は、細かな歌割りをリズミカルに歌いつないでゆく7人のパフォーマンスをペンライトの光で彩り、客席へマイクを向けるメンバーへ向けて大きな「2択! 2択!」のコールを送る。怒涛の勢いでげんじぶの音の世界へと聴衆を引き入れたオープニング。観測者の熱い声を受け取った武藤潤は、お返しとばかりに曲終わりで不意打ちのウィンクを放ってみせた。
“赤”に染まる甘美な世界へ
5曲を終え暗転したアリーナに響いたのは電話のコール音。ここでスポットライトを浴びた武藤が“電話の向こう側”の相手へ向け「ずっと君のことを考えていたんだけど……」と思いを伝えると、メンバーは順に思いを吐露していく。「話そらさないでよ。僕のこと、好き?」と問いかける小泉光咲、「俺のそばにいろよ」と訴える吉澤……。それぞれが言葉に力を込めるたび、客席から漏れるのは声にならない悲鳴。そして最後に登場した杢代和人が「愛してるよ。離さない」と告げたその瞬間「半分相逢傘」のドラマチックなイントロが鳴り、7人は朱色の和傘を手にこの曲を披露した。ステージビジョンに乱れ飛ぶ赤い花びらが観る者を甘美な世界へと誘う中、吉澤は「これでどっちも悪いね」と小さく笑って観測者の歓声を欲しいままに。続く「In the Nude」では、勢いよく落とされた7本の布の向こう側に姿を消したメンバーが装い新たに再登場し、スウィングするリズムに身を委ねる。長野凌大と桜木、吉澤と小泉のペアがシルエットで見せたペアダンスも艶やかなムードを加速させるアクセントになっていた。
「美しい人」では7脚のソファに深く腰掛けたまま、ジャジーなサウンドに乗って蠱惑的なパフォーマンス見せる7人。それぞれの挑発的な視線と仕草に魅入る観測者の静かな興奮を加速させるように、桜木や武藤はフェイクにアレンジを効かせる。7人の豊かな表現力によって舞台上からあふれ出た愛執や色香は観る者の感性を強く刺激し、ぐんぐんと高まって行った熱は“狂気の愛”を歌う「Mania」で最高潮に。自らの小指を噛みながら鋭い視線でカメラを見遣る桜木と大倉、風に舞う蝶を思わせるような不安定な足取りでステージを駆ける長野。楽曲の世界観に没頭する7人が見せる迫真のパフォーマンスを、聴衆は息をのむように見つめていた。
9曲を一気に駆け抜け、ここで初めてMCの時間を取ったげんじぶ。自己紹介を終え満員の客席を見渡した大倉は「個人的にはね、こんなにたくさんの観測者に囲まれたらやってみたいこと! イヤモニを外してみんなの声を聞きたい! 皆さん盛り上がってますか!?」と呼びかける。観測者から大きな声が返ってくると、メンバーは大倉に続いて次々にコール&レスポンスを発生させて盛り上がる。そんな中、ラーメンマニアの小泉は「リピートアフタミー、“チャーシューラーメン大盛りで!”」と、ひときわ個性的な呼びかけをし、メンバーと観測者を大いにざわつかせた。
大気圏突破の新曲披露
「OKそのまま盛り上がっていきましょう!」。ステージに注がれた大歓声に長野が頷き呼びかけるとライブは次のシーンへ。「シェイクスピアに学ぶ恋愛定理」でステージいっぱいに広がった7人は「クラップしようぜ!」と誘い、観測者をひとつにまとめ上げていく。ペンライトの光と大きな声で送られる愛を受け取った長野は「観測者、大好きです!」と顔をくしゃくしゃにしてハートのポーズを作った。センターステージで届けられた「チョコループ」では、歌う吉澤に顔を近付けて笑わせる大倉の茶目っ気たっぷりな仕草に笑顔の輪が広がる。清涼感あふれるボーカルを聞かせた小泉は「チョコミント、あーげる!」というキュートなセリフで曲を締めくくった。宇宙人の“キミ”との奇想天外なラブストーリーを歌う「推論的に宇宙人」では観測者から大きなコールが飛び、7人はにぎやかなムードの中で息の合った楽しい掛け合いを展開。するとこの曲で“宇宙人役”を務めている小泉と長野は、アウトロで残る5人をステージの外へと追いやり「ニナニナ!」とポーズを決めながら姿を消した。普段とは異なる曲のエンディングに客席が困惑した次の瞬間、7人はポップアップで順にステージへとカムバック。大ジャンプで観衆を沸かせたメンバーは「P-P-P-PERO」のシュールかつポップな世界観で観測者の目と耳を楽しませる。ラストシーンで1人客席と向き合った大倉は、とびきりの笑顔と“舌ペロ”ポーズで歓声を独り占めしていた。
そしてライブ中盤には、げんじぶが12月4日にリリースするコンセプトEP「テトラヘドロン」より、新曲「Go to the Moon」が初披露された。「げんじぶ史上初めて、一緒にタオルを回せる曲が誕生しました!」と長野が言うと、大倉は「さあ皆さん、僕たちと一緒に日本、世界を超えて宇宙の果てまで飛んでいく準備できてますか!?」と観測者に呼びかける。華やかなブラスサウンドが鳴り響く「Go to the Moon」は急加速するスピードで夢へと近付いていく情景をパワフルに歌うスカナンバー。軽快な裏打ちのリズムに合わせて7人が勢いよくタオルを振り回しながら花道を駆け抜けると、観測者も大きなシンガロングで彼らに呼応。笑顔でひとつになるお祭り騒ぎの光景を、ステージの四方から噴出する紙吹雪がにぎやかに彩っていた。
観測者、いつもありがとな!
アリーナに充満する熱気を沈めるような雨音がライブを次のシーンへと進めると、7人はここでバラードナンバーの「豪雨」を披露。ジャケットを羽織りスタンドマイクの前に立った彼らの胸に迫る歌声のリレーを、観測者は静かに熱い眼差しで受け止める。続く「結末は次のトラフィックライト」も幻想的なバラードアレンジで届けられ、メンバーはひと言ひと言に意味と思いを丁寧に込めながら曲を歌い紡いでいった。7人の歌声にフォーカスが当てられたセクションのハイライトとなったのは「僕らの世界・物語」。高難度なハイトーンのメロディが紡がれるサビパートを長野と大倉は力強く歌い上げ、その真摯な歌声でオーディエンスの心を揺さぶる。そして武藤がまっすぐな眼差しで最後のパートを歌い届けた瞬間、7人は静かに舞台下へと姿を消した。
ステージビジョンに映し出されたのは、それぞれ異なる場所に佇むメンバーの姿を捉えた映像。カサブランカを手にした浜辺の桜木から夜景を背に立つ吉澤まで、それぞれ異なる7曲の世界観が抽象的に表現される中、彼らは空間に現れた白い扉を順番に開けていく。「Welcome to my daydream」。“白昼夢へようこそ”というメッセージが改めて示されたそのとき、センターステージには7人の姿。着物とパンツスタイルを大胆にミックスした黒の装いでオープニングとは正反対のビジュアルになった彼らは「原因は自分にある。【別解】」でパフォーマンスを再開させる。デビュー曲「原因は自分にある。」のリアレンジバージョンであるこの曲で7人が見せたのは、5年前からの進化をありありと提示するたくましいパフォーマンス。繊細な表情のニュアンスや吉澤をリフトアップするダイナミックなハイライト、呼吸のそろったターンジャンプで魅せる群舞と、めくるめく展開で観測者を魅了していく。そのまま「原因は君にもある。」へとなだれ込むと、今度は次々に正面を変えながら歌い踊る全方向型のパフォーマンスで熱狂を加速させた7人。「僕たちはあなたに歌います。あなたは僕たちに歌ってください!」という長野の訴えに観測者も全力のシンガロングを返し、会場中の熱気を受け取った武藤は「観測者、いつもありがとな!」と大きな笑顔で叫んで思いを伝えた。
僕らと観測者のみんななら、絶対に夢を叶えられる
熱狂の余韻そのままに、晴れやかな表情で観測者たちと向き合った7人は、大倉の「今のこの素直な気持ち、明るい気持ちを1人ずつ述べない?」という問いかけから順に思いを伝えていく。「寝る前に『去年を超えなきゃ』と思ってベッドについた」という長野が「でも、みんなの顔を見たらどうでもよくなっちゃって。ここで会えていることがすべてだなって。今日は改めて来ていただいてありがとうございます!」と感謝すると、桜木は「あと少しで終わってしまうのが寂しいけど、もっと大きな会場で会えるようにがんばるので。これからもよろしくお願いします!」と呼びかける。武藤は「去年よりすごい『ららら……』が届きました!」と「原因は君にもある。」のシンガロングに興奮が収まらない様子で「もっと大きなステージでも響かせようぜ! 最高! 観測者、いつもありがとうございます」と伝えた。
「この景色が当たり前じゃない中、こうしてライブができてうれしいですし、僕ら5年以上活動しているけれど、その中でも一体感のあるライブができたんじゃないかなと思います」と力強く手応えを語った小泉に続き、杢代は「マジでみんなのこと好きだなって思う。僕たちがいるのはあなたたちがいるからこそなので、これからもずっと一緒にいましょう!」と呼びかけ。大倉が「これからもその声を僕たちに伝えて、聞かせてください」と訴えると、最後に吉澤は「今こうして観測者のみんなに囲まれている中で思ったことがあって。言いたいことがあります。僕らと観測者のみんななら、絶対に夢を叶えられると思います。そう確信しました! 原因は自分にある。は誰も置いていかない、そんなグループです。これからも未来を歩んでいきましょう!」と晴れやかな表情で思いを伝えた。
観測者の声を求める桜木の威勢のいい煽りとともに、「ケイカクドヲリ」でラストスパートをかけた7人。にわかにステージを降りてアリーナ通路へと飛び出した彼らは、観測者が騒然とする空気の中でアッパーなラップでマイクリレーを展開しフロアのあちこちで悲鳴を沸き起こす。小泉のハイエナジーなロングトーンがさく裂すると、「Joy to the world」では通路の各所に設けられたお立ち台に登り、さらなる声を求めた7人。観測者とのひとときを思い切り楽しむ7人の活気に満ちた歌声を会場中から送られるコールが彩った「マルチバース・アドベンチャー」では、長野が「もしもこれからも一緒に進んでくれたら、僕たちは君の手を離しません。これからもよろしく!」と叫び、吉澤は曲のラストに「みんなに会えて本当によかった!」と破顔する。げんじぶと観測者との熱い一体感は「THE EMPATHY」で最高潮に。センターステージから花道を駆け抜け、メインステージで観測者のシンガロングを受け止めた7人の幸福感に満ちた表情がビジョンに映し出される中、杢代は「最後まで楽しんでいってください!」と呼びかけた。
夢から覚めた瞬間は夢の続きのままで
真紅に染まったバックビジョンが7つのシルエットを浮かび上がらせたその瞬間、アリーナに鳴り響いたのは「柘榴」のダークなイントロ。シュルレアリスム的世界観で描かれるモノクロのアニメーションを背にした7人は不敵な笑みを浮かべながらスウィングし、げんじぶの真骨頂とも言えるシニカルな世界観へとオーディエンスを誘っていく。きらびやかな天文時計が時を刻む中で披露された「無限シニシズム」でさらにその世界観を深め、大倉と吉澤は感情を露わにしたラップでも観測者を圧倒。轟音のバンドサウンドが疾走する「Museum:0」へと展開すると、7人はバイタリティに満ちた歌唱とめくるめくフォーメーションダンスを見せ、歌詞にある“壮絶なる最高傑作”というフレーズをステージ上に具現化するようなパフォーマンスで観測者を魅了する。
げんじぶのアイデンティティの深淵へと突き進んでいく彼らが次に届けた「0to1の幻想」ではオープニングで登場した楼門がネオンカラーに光り、7人の周囲を色とりどりのファイヤーボールが舞う。楽曲には三味線など和楽器を取り入れた大胆なアレンジが施され、古の響きと近未来的デジタルサウンドが波のように押し寄せる中で気迫あふれる歌唱と舞を見せる7人。和か洋か、過去か未来か、幻想か現実か。すべてがないまぜになったカオス的世界観で圧倒的な高揚を生み出したメンバーが客席に背を向け姿を消すと、ステージ上のビジョンは即座にげんじぶの来年の活動のインフォメーション映像に切り替わって「白昼夢への招待」の幕が下りたことが知らされる。夢から覚めたのか、夢の続きのままなのか。会場にはかつてないような不思議な余韻が充満していた。
セットリスト
原因は自分にある。「ARENA LIVE 2024 白昼夢への招待」2024年11月17日 ぴあアリーナMM
01. 夢之相 - イメノアイ
02. 以呂波 feat. fox capture plan
03. 余白のための瘡蓋狂想曲
04. 黄昏よりも早く疾走れ
05. 嗜好に関する世論調査
06. 半分相逢傘
07. In the Nude
08. 美しい人
09. Mania
10. シェイクスピアに学ぶ恋愛定理
11. チョコループ
12. 推論的に宇宙人
13. P-P-P-PERO
14. Go to the Moon
15. 豪雨
16. 結末は次のトラフィックライト
17. 僕らの世界・物語
18. 原因は自分にある。【別解】
19. 原因は君にもある。
20. ケイカクドヲリ
21. Joy to the world
22. マルチバース・アドベンチャー
23. THE EMPATHY
24. 柘榴
25. 無限シニシズム
26. Museum:0
27. 0to1の幻想
(撮影:米山三郎、笹森健一)