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ゴスペラーズが極上のハーモニーで30年の軌跡を紡いだアニバーサリーライブ

ゴスペラーズ(撮影:笹原清明)
1日前2025年01月14日 3:02

ゴスペラーズがメジャーデビュー30周年記念ライブ「ゴスペラーズ 30周年記念祭」を12月20、21日に東京・日本武道館、昨日1月13日に大阪・大阪城ホールで開催。3公演のみという貴重なアニバーサリーライブには、全国各地からファンが駆け付け、大盛況となった。この記事ではデビュー記念日にあたる12月21日公演の模様を紹介する。

最高の夜の幕開けはあの名曲で

開演時刻の17:00を迎えるとスモークがステージを覆い、5つのシルエットが浮かび上がるドラマチックなスタイルでライブはスタート。その中で村上てつやがすぅと息を吸い込む音が聞こえたのち、光沢のある鮮やかなピンクのスーツに身を包んだメンバーが観客の前にお目見え。5人はその声だけで代表曲である「ひとり」を歌いつなぎ、満員の武道館を柔らかく包み込んだ。

メンバーが「ようこそ、『ゴスペラーズ 30周年記念祭』へ」と挨拶した直後にはいきなり銀テープが放たれ、会場はたちまちパーティムードに。祝祭感たっぷりの空気を浴びた村上、黒沢薫、酒井雄二、北山陽一、安岡優はステージの端から端までハンドマイクで移動しながら、手練れぞろいのゴスペラーズバンドの演奏に乗せて「靴は履いたまま」を歌い出した。村上が「最高の夜にしよう」と高らかに歌えば、黒沢が「朝が来るまで騒ごう」と観客に呼びかけるように続け、ステージの中央でハイタッチを交わす。さらに酒井、北山、安岡はスーツの裾を優雅に揺らしながら軽やかなステップを踏み、観客の視線を奪った。

酒井のソウルフルなボーカルと、観客のコーラスが響いた「一筋の軌跡」、ライブ前日の高揚感をファン目線、アーティスト目線の両方から歌った「F.R.I.」、アメリカのソウル/ダンス番組「ソウル・トレイン」へのオマージュがたっぷり込められたポップな映像演出が目を引く「24/7」をシームレスに届けたのち、メンバーを代表してリーダーの村上が挨拶。「本日、我々……メジャーデビュー30周年を迎えることができました!」「最高の景色を目に焼き付けながら、一生懸命歌っていきたいと思います!」と宣誓する。黒沢が「歩んできた道のり、30年分の軌跡をたっぷりたっぷりお届けしたいと思います」と続け、デビュー10周年のタイミングで発表された「ミモザ」へとつなげる。「感謝」を意味する花言葉を持つこの曲を、5人は情感を込めて歌い観客をうっとりさせた。

数々のヒットシングルを世に放ってきたゴスペラーズだが、カップリング曲にもファンから広く愛される楽曲が多く存在する。酒井の「珠玉のカップリングコーナーです!」という言葉を合図に突入したブロックは、2001年リリースの「砂時計」をはじめ、「冬物語」や堺雅人が主演するミュージックビデオも話題の「東京スヰート」などで構成。世間的には“隠れた名曲”とされるナンバーが、ゴスペラーズバンドの生演奏とともに惜しみなく披露された。さらに、ここで北山が甘い低音ボイスで「今夜は皆さん、懐かしいあの頃へLet's go back!」とメドレーコーナーの始まりを予告。すると、ざわめきにも似た歓声が上がり、少し照れ臭そうに笑う村上の顔がスクリーンに大写しになった「Tonight」を皮切りに、“末っ子”安岡のあざとかわいい魅力が存分に発揮される「それでも恋はやってくる」、5人が見事なフォーメーションダンスで観客を魅せる「BOO~おなかが空くほど笑ってみたい~」、北山の熱演が光ったコント仕立ての「まちがいさがし」など、歌はもちろんのこと、それぞれのキャラクターの特性を生かしためくるめくステージが繰り広げられた。懐かしい楽曲が連なるメドレーを締めくくったのは2000年リリースの「Slow Luv」。北山の軽やかな高速ターンが、場内の華やかなムードを一層引き立てた。

情報過多、怒涛の灼熱の後半戦

メンバーの幼少期や学生時代の写真が会場を和ませた幕間を挟み、ライブは後半戦へ。純白のスーツに衣装替えをした5人は、アカペラによる「Promise -a cappella-」のパフォーマンスで再び観客を“ゴスペラーズワールド”に引き戻した。30年間の活動の中で、音楽を軸にさまざまなチャレンジを繰り返してきたゴスペラーズ。「30周年記念祭」では、俳優の中村まことを“語り部”として迎える形で、音楽と演劇を融合させたシアトリカルライブ「ゴスペラーズ坂ツアー1999 “アカペラ人”」「ゴスペラーズ坂ツアー2003 “アカペラ港”」「ゴスペラーズ坂ツアー2021 “アカペラ” #あなたの街にハーモニーを」における名場面を詰め込んだブロックが設けられ、メンバーが歌い、踊り、演技をして、その芸達者ぶりを存分にアピールするひと幕も。ファンは時空を超えて再現される懐かしいシーンの数々に目を細め、ノスタルジーに浸った。

中村の「30周年おめでとう!」という祝辞を受け取った黒沢は、「アカペラという歌のスタイルがいろいろ(僕たちに)経験をくれました」とこれまでの足跡を回顧。続けてほかのメンバーもブレイク前に「笑っていいとも!」にレギュラー出演していた頃について語ったり、セットリストにはない「ウイスキーが、お好きでしょ」のカバーを披露したりと声を武器に駆け抜けてきた日々に思いを馳せる。そこから5人は「Deja Vu」でロマンチックなムードを演出したのを機に、古今東西、多種多様でアップテンポなラブソングを届ける流れに。しかし、ただのストレートな愛を投げないのがゴスペラーズの流儀。観客を3パートに分け、ともに美しいハーモニーを奏でた「愛の歌」のあと、黄金のスーツが特徴のMr. LOVE MACHINEの独壇場であるThe Miracles「LOVE MACHINE」のカバーになだれ込むというジェットコースター的な展開でオーディエンスを翻弄する。さらにはメンバーは情報量の多すぎるパフォーマンスを経て、何事もなかったかのように「Mi Amorcito」を歌い出すという、ゴスペラーズだからこそできる離れ業で会場を大いに沸かせる。村上はそんな怒涛の流れを「例年より15分長い、灼熱の後半戦をお届けしました」という言葉でまとめて観客を笑わせた。

愛おしい人たちのために「ずっとずっと歌い続けていきます」

しかし、安岡の「我々ゴスペラーズにとっての愛おしい人は、我々の音楽を愛し続けてくれるあなたです。ずっとずっと歌い続けていきます」という宣言でにぎやかな空気は一変。その言葉を裏付けるように5人は「抱きしめられたら もう離さない」「愛しい人よ」と歌う「永遠(とわ)に」、そして「離れていても 二人の季節がそこにあるから 約束するよ 君と歩こう」と誓う「約束の季節」を5声のハーモニーで丁寧に紡ぎ上げる。そこに、オーディエンスのシンガロングが重なり、アーティストとファンが築く相思相愛の空間が武道館に広がった。

アンコールは、アリーナエリアに設けられた正方形のセンターステージで5人が向き合い、アカペラで「星屑の街」を歌うパフォーマンスで幕開け。1人でも多くの観客の近くで声を届けたいというメンバーの思いが込められた演出に、驚きと喜びが入り混じった歓声が全方位から沸き起こる。その後、メインステージに戻ったメンバーはここで自己紹介ソング「侍ゴスペラーズ」、ゴスペラーズとしての決意表明を刻んだデビュー20周年シングル「SING!!!!!」で改めてボーカルグループとしての矜持を提示した。

3時間を超えるアニバーサリーライブもいよいよ佳境というとき、メンバーが自分たちを支えてくれるファンやスタッフへの感謝の思いを、それぞれの言葉で口にする。黒沢は「ずっともがいてきたからここに来れた。この5人でやってこれてよかった。僕は欲張りなんで、もっとゴスペラーズでいい歌を歌いたい」とアーティストとしての野望を明かし、村上は「最高の記念日になりました」と語り、この日のセットリストが、これまでにゴスペラーズが発表してきたアルバムやEPから1曲以上を組み込んだセットリストであることをネタばらし。「お世話になった人たちへの恩返しになるかなと思った」とその背景を説明し、「これからまだまだ続く“ゴスペラーズ坂”を登っていく力に変えていきたい」と30年間の歩みを凝縮したライブを振り返った。

ゴスペラーズの歴史を3時間半に凝縮した「30周年記念祭」の最後を飾ったのは、真珠婚式と呼ばれる結婚30周年をモチーフにした最新曲「パール」だった。真珠のような光沢のあるスーツを身にまとった5人の口からこぼれる歌声は、粒立ったまま溶け合い、極上のハーモニーを紡ぐ。観客はその音をひとつでも聴き逃すまいと耳を傾け、巨大なスクリーンに5人の後ろ姿を認めるや、この日一番の拍手で彼らを見送った。

各ストリーミングサービスでは現在ライブのセットリストをもとにしたプレイリストを公開中。またWOWOWでは2月に「ゴスペラーズ 30周年記念祭」の模様を放送・配信する。

セットリスト

ゴスペラーズ「ゴスペラーズ 30周年記念祭@日本武道館」2024年12月21日 日本武道館

01. ひとり
02. 靴は履いたまま
03. 一筋の軌跡
04. F.R.I.
05. 24/7
06. ミモザ
07. 街角 -on the corner-
08. 言葉にすれば
09. 砂時計
10. 冬物語
11. 東京スヰート
12. Tonight
13. それでも恋はやってくる
14. t.4.2.
15. BOO~おなかが空くほど笑ってみたい~
16. まちがいさがし
17. Slow Luv
18. Promise -a cappella-
19. こういう曲調好き
20. Tiger Rag
21. Moon glows (on you)
22. I Want You
23. 離れていても ~Wherever you are~
24. 星空の5人~WE HAVE TO BE A STAR~
25. Deja Vu
26. In This Room
27. 愛のシューティング・スター
28.1, 2, 3 for 5
29. 愛の歌
30. LOVE MACHINE
31. Mi Amorcito
32. 永遠(とわ)に
33. 約束の季節
<アンコール>
34. 星屑の街
35. Love me! Love me!
36. 侍ゴスペラーズ
37. SING!!!!!
38. パール

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