炙りなタウンが3月9日に地元岡山のライブハウス・CRAZYMAMA 2nd Roomで初めてのワンマンライブ「かかあ天下」を開催した。
「岡山炙りなタウン、始めます!」
炙りなタウンは2018年4月に岡山で結成された3人組パンクバンド。メンバーはゆきなり(G, Vo)、しおきち(B, Vo)、2023年10月に加入しためぐぞう(Dr, Cho)。インディーレーベル・WAKASA WO WARAUNA WORKSに所属し、全国でライブを重ね、今年2月にはGreen Dayのサポートアクトとして大阪城ホールに立った。
結成から約7年、炙りなタウンは、初ライブを行ったCRAZYMAMA 2nd Roomを初ワンマンの会場に選んだ。チケットがソールドアウトし、約200人のファンが待ち構える中、いよいよ3人が出陣。バンドにとって馴染みの会場で、ゆきなりがギターのチューニングを終え、初期曲「ホームラン」で幕を開けた。ゆきなりが「fromガラガラのCRAZYMAMA 2nd Roomから、最初で最後の初ワンマン『かかあ天下』。岡山炙りなタウン、始めます!」と宣言。しおきちとめぐぞうも演奏に加わり、爆音が会場を揺らすとフロアが一気に沸き、熱気が渦巻いた。
「炙りなタウンがワンマン? 大事件だ!」
「岡山炙りなタウン! “あんたのバンド”になりに来ました!」とゆきなりが叫び、夏の青春を描く「63円」を披露。「わしらのホーム、CRAZYMAMA 2nd Roomへようこそ」と呼びかけ、観客と合唱で盛り上がる。続いて狂おしい恋心と青春が浮かぶ「プルースター」を投下。ゆきなりが「初めてここでライブしたあの日からなんにも変わってない!」と叫び、しおきちが髪を振り乱す激しさを見せ、めぐぞうがマシンガンのようなドラムを叩く。さらにこの日だけのアレンジとして「炙りなタウンがワンマン? ワンマン? 大事件だ!」というフレーズが飛び出し、場内の熱気が爆発した。なお炙りなタウンは数年前から自身を“あんたのバンド”と表現してきた。そう主張する背景にあるのはこのバンドが持つメッセージ性。音楽への情熱、ロックスターへの憧れ、青春の思い出、恋愛の記憶、愛情、夢、希望、絶望、孤独、家族、人生などさまざまな思いが詰まった楽曲が多数あり、観客1人ひとりの人生に寄り添う存在であることが楽曲によって示されている。
全速力でライブ序盤を駆け抜け、しおきちは初ワンマンについて「すごい」とシンプルに意見し、めぐぞうは立ち上がって笑顔で手を振る。ゆきなりは「気合いは入ってるけど、みんなの顔とか見てたらいつも通りやれそうです。この7年間、対バンライブをずっとやってきて。対バンだと『あのバンドには負けたくない』とかがあるけど、今日はそういうのがないけん」と語り、さらに熱を込めて続けた。「今日もわしはワンマンだろうが、『戦いたい』と思って来ました。何と戦うか? やっぱり炙りなタウンを好きなやつに負けたくない。わしが一番炙りなタウンでいるために! 炙りなタウンがどうしても好きで、時間とお金を使ってここを選んでくれたやつに、わしは絶対に負けたくない! だからあんたも炙りなタウンなんかに負けんな! 対バンやろうぜ!」と観客一人ひとりに宣戦布告。汗だくの観客は笑顔で拳を突き上げ応えた。
7年前には誰も想像できなかった満員のライブハウス
ライブ前半は続く楽曲「初恋」まで、青春や恋愛の情景がまざまざと浮かぶパンクチューンの数々が並んだ。8曲目に疾走感あふれるショートチューン「狼煙をあげろ」で気合いを入れ直してから「反省文」になだれ込むと、めぐぞうが「かかってこいよコラ!」と珍しく観客を煽る場面も。ゆきなりはバンド結成時を振り返り、「炙りなタウンを組んだ当初、わしはギターボーカルじゃなかったし、ベースのすみだ(しおきち)もベースじゃなかった。でもバンドがやりたくて始めた」と語る。初めてCRAZYMAMA 2nd Roomに出演した日、店長や副店長から「大丈夫か? 歌も楽器も下手すぎる」と言われたことを明かしつつ、それでも同ライブハウスは炙りなタウンにチャンスを与え続けた。「イカれた、何が起こるかわからないライブハウスで育ったから、何が起こるかわからないバンドになった」と感慨深げに語り、7年前には誰も想像できなかったワンマンのソールドアウトに感謝を述べた。
ライブ後半、「渋川」の演奏中にゆきなりが叫んだ。「今年卒業した人、おめでとう! わしの青春はドブ色で濁ってたけど、すげえ好きだったんだ」と本音を吐露。MCではコンプレックスについての話題になり、ゆきなりが母譲りの吊り目に劣等感を感じていたことを明かしつつ、ライブハウスで初めて「その目がカッコいいのに」と言われたエピソードを語った。その言葉をくれたのは所属レーベルの渡辺旭(THE NINTH APOLLO)で、それ以来、人の目を見て歌えるようになったという。そんな話に続けて、「今も怖いけど、あんたたちの目を見て生まれた曲がある」と述べ、新曲「あのめ、」を披露した。その後、ゆきなりはギターを鳴らしながら、「あんたの目を見て気付いた。優しい顔してんなって。全員敵だと思って地面とマイクしか見てなかったけど、前を見たらわかった」と語り、メロディに乗せて「役立たずなわしの歌であの子が泣いている。くだらない愛の歌がわしらを救うのだ」と歌う。さらに「あの日のライブハウスの偉い人、ダメ出ししてきたバンドマン、ありがとう! おかげでパンクロックが好きになった! 愛を込めて……ざまあみろ!」と叫び、「ライブハウス」を熱唱。「出来損ないのブルースが今夜も鳴っている ガラガラのライブハウス僕たちの秘密基地」というフレーズをフロアいっぱいのオーディエンスが歌う光景が広がった。
鳴り止まないアンコール「ここがわしらのホームです」
ライブの終盤に「ルナ」を情感豊かに披露している最中、ゆきなりの言葉が響きわたる。「自分って変なのかなと思ったら、『そんなことないよ、大丈夫だよ』って言ってくれる、教師とかあんまり仲のよくない友達とかいたでしょ。あんたは弱虫で泣き虫で、どうしようもなくって。炙りなタウンなんてバンドが好きなちょっと変なやつだし、うまくできないし、普通にできないし、周りからはみ出していくし。そのままでいいなんて言わねえよ。目を逸らすなよ。だからお前みたいな弱虫泣き虫一人ぼっちが、わしは好きなんだ」と熱く話し、孤独や悩みを抱える人に寄り添う姿勢を見せた。炙りなタウンは、最後に新曲(タイトル未定)を「ラブソングではなくここに集まった200人に向けた手紙」として来場者に捧げ、ステージをあとにした。
アンコールでゆきなりは「ここがわしらのホームです。またガチでパンパンのライブハウスでも会いたいし、ガラガラのライブハウスでも会いましょう」と話し、「生誕祭」「ZOKKO'N ROLL!」を披露した。ダブルアンコールを求める声が止まず、3人は「ハッピーエンドロール」を最後のラストに演奏し、最初で最後の初ワンマンライブを終えた。
地元で熱狂を生み出した初ワンマンを終えた炙りなタウンは、4月6日に東京・Spotify O-Crestでも単独公演「かかあ天下」を開催する。
セットリスト
炙りなタウン「かかあ天下」2025年3月9日 CRAZYMAMA 2nd Room
01. ホームラン
02. 63円
03. プルースター
04. パンクな彼女
05. 橋本■奈
06. 馬鹿
07. 初恋
08. 狼煙をあげろ
09. 反省文
10. 週刊少年ジャンプ
11. ゴキブリ人間
12. 劣等星
13. 木造校舎
14. 渋川
15. あのめ、
16. ライブハウス
17. 1998
18. ろくでなしの唄
19. ルナ
20. 新曲(タイトル未定)
<アンコール1>
21. 生誕祭
22. ZOKKO'N ROLL!
<アンコール2>
23. ハッピーエンドロール
公演情報
かかあ天下
2025年4月6日(日)東京都 Spotify O-Crest
