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Perfumeの新たな挑戦、SFと現実が交錯するアリーナツアーが閉幕「私たちの未来は、きっと明るい」

「Starlight Dreams」をパフォーマンスするPerfume。(撮影:上山陽介)
14分前2025年04月22日 7:02

Perfumeが最新アルバム「ネビュラロマンス 前篇」を携えて全国11都市を巡ったアリーナツアー「Perfume 10th Tour ZOZ5 “ネビュラロマンス” Episode 1」が、4月19日と20日の千葉・LaLa arena TOKYO-BAY公演をもって幕を閉じた。この記事では2DAYS初日の19日公演をレポートする。

前半と後半でまったく異なる2部構成ライブ

このライブは2部構成となっており、前半「SIDE A」はアルバム「ネビュラロマンス 前篇」の全曲を収録順にパフォーマンスし、その世界観を忠実に再現するというコンセプチュアルな内容。回転ステージによりシチュエーションを転換しながらストーリーが進行し、映像を駆使した演出により、観客はライブと同時に1本の映画を観ているかのような感覚に包まれる。

後半「SIDE B」は公演ごとに選曲が異なり、事前に用意されたセットリストのバリエーションは全108通り。何度会場に足を運んでも楽しめるこの仕掛けにより、このツアーはリピーターが続出することになった。また観客には入場時に「NEBULA MEMBER ID」というカードを配布。このカードには座席の位置とリンクした3種類のチーム名(マゼンタ、シアン、イエロー)が記載されており、ライブ後半のコール&レスポンスでこのチーム分けが活用された。

観客をSF世界に誘い、現実と虚構が入り交じる

ライブは壮大なオープニングムービーで幕を開ける。舞台は宇宙空間。“20年戦争”によって要塞化された月がロボットアーミーに占拠され、攻撃により一部が爆撃される。この衝撃で、コールドスリープ状態だったアヤカ、ユカ、アヤノの3人が放り出されて地球の砂漠に落下。その瞬間、ステージ上にPerfumeの3人が姿を現し、ネオンが輝く近未来都市を背に「The Light」を歌い上げる。鮮やかなビジュアルとシンクロしたパフォーマンスで、観客は一気にSFの世界観に引き込まれた。

物語は、地球で3人を保護したキキモという女性の手記によって進行していく。コールドスリープから目覚めたものの過去の記憶を一切持たない3人を、キキモは生活をともにしながら育て上げ、ネビュラの精鋭部隊アーミー・オブ・ザ・ライトに入隊させようとしていた。しかしある日、3人がダンススクールに通いたいと申し出たことで、キキモは彼女たちの秘密を守るために社会に溶け込ませるのもいいかもしれないと考え始める。

ダンススクールに通い始め、「ラヴ・クラウド」を歌い踊る3人。そうするうちに彼女たちは物語の中でPerfumeとして人気者になり、テレビに出演して「Cosmic Treat」を披露することになる。このストーリーと連動してPerfumeは、レトロな歌番組風のセットの中で、現実と虚構が入り交じったようなパフォーマンスを繰り広げた。

地球人としての日常をダンスで表現

「宇宙から舞い降りた3つの奇跡」というキャッチフレーズで、ダンスボーカルグループとしてますます注目されるようになったPerfumeは、地球人から神格化され、皮肉にも「完璧な地球人」と捉えられることに。続く「Starlight Dreams」では、星空を映し出した透過スクリーン越しにPerfumeがダンスを披露。「星が踊る」という歌詞を再現するように、メンバーの手の動きに連動して星がダイナミックに動く。

再び音楽番組のセットで「IMA IMA IMA」「すみっコディスコ」をパフォーマンスしたのち、舞台は帰宅後の3人が暮らす部屋へと転換。バスタブとドレッサーがある部屋で、ふわふわのバスローブを着た彼女たちは、「Morning Cruising」を歌いながら、モーニングコーヒーを飲んだりメイクをしたりと、地球人としての日常をダンスで表現。細かな日常の仕草を振付に取り入れるPerfumeならではのパフォーマンスが光った。

「タイムカプセル」では、回転するセットを横断しながら、バーチャルシャドウを使った「マカロニ」など、過去のライブの印象的な演出を再現。ラストで3人はトレンチコートを羽織り、クールなダンスを繰り広げた。

そしていよいよ物語はクライマックスへ

その後、天井からキラキラした金紙吹雪とともに大きな花がゆっくりと降りてきて「時空花」がスタート。花と同じ素材のピンクの衣装を身にまとった3人は、センターステージに立ち込められたスモークの上で、まるで雲の上にいるかのように神々しく、そして厳かに歌い上げた。

そしていよいよ物語はクライマックスへ。初めてのドローン討伐のためにPerfumeは、銃器を手にして夜の市街地に向かう。ステージではPerfumeが「メビウス」をパフォーマンスし、客席やステージの上を撮影用ドローンが飛び交う中、スクリーンではPerfumeとロボットアーミーがガンアクションを繰り広げる迫力ある映像が流れ続ける。そしてラストシーンでロボットアーミーの顔の一部が割れ、中から人間の顔が覗くという衝撃の展開に。もしかするとロボットアーミーはかつての地球人の末裔なのか? キキモの狙いはなんなのか? さまざまな謎を残したまま、「TO BE CONTINUED」の文字がスクリーンに流れて「SIDE A」は終了した。

「25年間やってきて、こんなにしゃべらないってないよ?」

SIDE Aが終わるのと同時に、「Music by Yasutaka Nakata -CAPSULE-」という文字とともに壮大な音楽が流れてSIDE Bがスタート。大歓声の中、「Cling Cling」のアルバムバージョンが1曲目として披露されると、会場は一気に熱狂の渦に包まれた。縦横無尽に飛び交うレーザーが視覚を刺激し、さらなる高揚感へと導かれるフロア。ここまで物語の世界に浸っていた観客も、思わず腕を振り上げてジャンプする。さらにPerfumeは「レーザービーム」「だいじょばない」とキラーチューンを連発。メンバーが「最高の夜にしましょう!」と呼びかけ、曲が進むたびに会場の興奮はピークを更新し続ける。

ここまで13曲ノンストップでパフォーマンスを続けてきたPerfumeだったが、ここでようやく最初のMCへ。あ~ちゃんは「こんなに大きな箱で、みんなが山盛りてんこ盛りいてくれてビックリした。ホントにうれしいです」と感極まった様子で話した。かしゆかは「アルバム全曲を頭から順にパフォーマンスするなんて初めてなんです。コンセプトが強いアルバムの世界をみんなにより感じてもらいたくて、SIDE AではPerfumeさん一切しゃべっておりません。私たち25年間やってきて、こんなにしゃべらないってないよ?(笑)」と笑いを誘う。

のっちは「『しゃべらないと心の距離は縮まらない』って、私たちの中で結論が出てることなんです。海外のフェスに出たときに、クラブみたいに曲をつないでノンストップでライブをやったら、初めてしゃべったときにすごく気持ちの距離が縮まった感じがしたんですよ。そんな自分たちが大事だなと思っていることを、結成25周年・メジャーデビュー20周年の大事なツアーで試してみているという(笑)」と、今回の挑戦の背景を明かした。

「新宝島」で会場中が大盛りあがり

続いては、会場の一体感を高めるために、リズムに合わせてみんなで踊って声を出す「P.T.A.コーナー」。今回のツアーではこれまで各地を代表するアーティストの曲をテーマにしてきたが、この日はその中でもメンバーが一番だと思ったものをオリジナルの振付でダンスするという。選ばれた曲は、Perfumeが2021年2月にTikTokに投稿して話題になったサカナクション「新宝島」のダンス。3人はスクールメイツのようにポンポンを持って踊り、思わぬ展開に会場中が大盛りあがりとなった。

その後も、Perfume屈指のフロアバンガー「Party Maker」や、初期のライブアンセム「エレクトロ・ワールド」でオーディエンスが沸騰。「チョコレイト・ディスコ」では、SIDE Aで登場した3人の個室セットを再利用したステージで、アリーナをダンスフロアに変貌させた。セットリストに入るのはかなりひさびさである「微かなカオリ」が始まると、客席から驚きの声が。こういったレア曲が楽しめるのも、日替わりのセトリが組まれたSIDE Bならではだろう。3人は互いに投げキスを飛ばしながら楽しそうに歌い、メンバー同士の仲のよさが垣間見える和やかな時間となった。

「また忘れられない景色ができたような気がします」

最後のMCでは、かしゆかが「どの公演でも、そこに来た人としか作れない思い出をたくさん作ってきました。今日も、今日来てくれたみんなだからこそできたライブです」とツアーを回想。「やっぱりみんなとライブを作るのが好きだし、一緒に同じ空間で同じものを共有するのが大好きです。だからPerfumeはライブがやめられないし、まだまだ挑戦したい」と、ライブへの熱い思いを語った。いつも理路整然と話すかしゆかだが、このとき途中で言葉を噛んでしまい、客席から「かわいい!」という声が。あ~ちゃんが「ゆかちゃんが噛むなんて珍しいよね。かわいかった」と微笑むと、のっちが「俺のほうがゆかちゃんが好きです!」と観客に向けて対抗意識を燃やし、会場は笑いに包まれた。

のっちは、この日がPerfumeのライブ初参加だという観客がどのようにしてPerfumeと出会ったのかに思いを馳せつつ、SIDE Bのセットリストが日替わりであることに触れ、「Perfumeって面白いなって。いろんな出会いがあるし、いろんな曲があるし、いつの時代もカッコいいなって」とコメント。あ~ちゃんは、Perfumeとして初めて行ったインストアイベントについて、毎日ビラ配りをしたのに観客が2人だけだったことを思い出しつつ「そのときから3人とも、ずっと向上心を忘れずに、魅力的な人でいなきゃ、素敵だと思ってもらえる人になりたいと思ってPerfumeを続けてきました。こんなボンクラでもこんな立派なステージに立たせてもらえている姿を見て、夢を信じてほしい。そんな感じでやっていたら25年経ちました。本当にこれは皆さんのおかげです」と、ファンへの感謝の気持ちを伝えた。

続けてあ~ちゃんは「私たちはこれからも、カッコいいな、こんなふうになったらすごいな、と思うことを実現して、夢をどんどん叶えていきたいと思います」と力強く宣言。「私たちの未来は、きっと明るい」という彼女の言葉を合図に、ラストナンバー「無限未来」がスタートした。そしてライブが終わると、「メビウス」のインストバージョンとともにスクリーンにスタッフロールが流れる中、3人は観客1人ひとりの顔を確認するように客席を眺める。名残惜しそうにステージの端から端まで手を振りながら歩いた彼女たちは、スタッフロールが終わると同時に「また忘れられない景色ができたような気がします! Perfumeでした!」と挨拶。その瞬間、メンバーがステージから消え、そのままライブは幕を閉じた。

なおツアーファイナルとなった翌4月20日公演のSIDE Bは、「Cling Cling」以外のすべての曲が初日と入れ替えに。ラストには大阪・夢洲で開催中の「大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)」のNTTパビリオンにてメインコンテンツとして上演されている、新曲「ネビュラロマンス」が観客の前で初披露されている。

セットリスト

「Perfume 10th Tour ZOZ5 “ネビュラロマンス” Episode 1」2025年4月19日 LaLa arena TOKYO-BAY

SIDE A

01. The Light
02. ラヴ・クラウド
03. Cosmic Treat
04. Starlight Dreams
05. IMA IMA IMA
06. すみっコディスコ
07. Morning Cruising
08. タイムカプセル
09. 時空花
10. メビウス

SIDE B

11. Cling Cling
12. レーザービーム
13. だいじょばない
「P.T.A.」のコーナー
14. Party Maker
15. エレクトロ・ワールド
16. チョコレイト・ディスコ
17. 微かなカオリ
18. 無限未来

「Perfume 10th Tour ZOZ5 “ネビュラロマンス” Episode 1」2025年4月20日 LaLa arena TOKYO-BAY

SIDE A

01. The Light
02. ラヴ・クラウド
03. Cosmic Treat
04. Starlight Dreams
05. IMA IMA IMA
06. すみっコディスコ
07. Morning Cruising
08. タイムカプセル
09. 時空花
10. メビウス

SIDE B

11. Cling Cling
12. NIGHT FLIGHT
13. コンピューターシティ
「P.T.A.」のコーナー
14. FAKE IT
15. ワンルーム・ディスコ
16. ナチュラルに恋して
17. Miracle Worker
18. Flow
19. ネビュラロマンス

公演情報

Perfume ZO/Z5 Anniversary "ネビュラロマンス" Episode TOKYO DOME

2025年9月22日(月)東京都 東京ドーム
2025年9月23日(火・祝)東京都 東京ドーム

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