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須田景凪、春の日比谷野音で届けた音楽への情熱「あなたのおかげでまだまだ生きていける」

須田景凪(撮影:藤井拓)
17分前2025年04月22日 9:02

須田景凪が4月19日に東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)にてワンマンライブ「須田景凪 LIVE 2025 "花霞"」を開催した。

“花霞”を思わせる薄曇りの中で開幕

2013年4月にボカロP・バルーンとして音楽活動を開始し、2017年10月からはシンガーソングライターとしての活動もスタートさせた須田。4月16日にはバルーン名義で発表した楽曲を須田がリスペクトするさまざまなアーティストが再構築した企画アルバム「Fall Apart」もリリースされ、話題を呼んでいる。今回の日比谷野音ライブは須田にとって初の野外ワンマンライブ。バルーン名義の楽曲のセルフカバーを含めた代表曲の数々や最新曲、さらに未発表の新曲も披露し、これまでのキャリアを総括するような多彩なパフォーマンスで集まったファンを楽しませた。

この日の東京の最高気温は27.8℃を記録。日中は夏を思わせる気候だったが開演時刻の18:00頃には涼し気な風が吹き渡り、空は文字どおり“花霞”を思わせる薄曇りに包まれた。ステージにしつらえられた植栽が野外ライブの雰囲気をもり立てる中、須田はバンドメンバーとともに登場。チケットがソールドアウトした満員の観客が大歓声を送る中、ギターを下げて客席に深々と頭を下げた。

イントロで早くもオーディエンスの息の合ったハンドクラップが響き始めた1曲目は「パメラ」。クラップの軽やかな音と須田のボーカルが響き合い、野音の熱気がひとつに渦巻いていく。熱狂のあと、須田は美しくも切ない情景を描いた「鳥曇り」「落花流水」で艷やかな歌声を届け、夕闇が迫る野音にぴったりな空気へと導いた。

夕暮れの中でアコースティックパフォーマンスも

「とりあえず、晴れてよかったですね」と笑顔を見せた須田は、自身に大きな影響を与えたアーティストたちのライブを観てきたこの野音のステージに自身が立っていることを「誇りに思っています」と感慨深げに語る。そして野音は改修工事のためまもなく使用休止に入ることに触れ「このステージに恥じないように、悔いが残らないように。あなたの一部になれるように」と強い眼差しでライブに懸ける意気込みを明かした。

ミュージックビデオの映像とともに披露され、温かみのあるリズムで野音を心地よく揺らした「レディーレ」に続き、「街灯劇」ではステージ上の球体の照明に明かりが灯り、須田のエモーショナルなボーカルを柔らかな光が彩る。さらに「エイプリル」「雲を恋う」と、春の夕暮れにぴったりの楽曲が次々と披露されていき、オーディエンスは須田が作り出す幻想的な空間に酔いしれた。MCで須田はアコースティックギターを手に「野音にはロックなミュージシャンを観に来たことが多かったんですが、みんな途中でアコースティックな曲をやっていたイメージがあって。せっかくなので1曲、弾き語りをやっていいですか」と、アコースティックスタイルでのパフォーマンスを予告した。

「ある種の転換期にもなった、『あのときしんどかったよな』といういろいろな思いが渦巻いている曲です。特別な今日の日にやりたいと思って持ってきました」と言葉を添え、須田がアコギの弾き語りで歌ったのは「はるどなり」。力強いギターストロークに乗せて届けられるときに激しく、ときにはかない歌声に、観客は息を呑んで聴き入る。さらに須田は「夕暮れから今ぐらいのグラデーションの中でやりたい曲」と紹介し、バンドメンバーとともに「夕染」を披露。ジャジーなテイストを加えたアレンジで、楽曲の持つ魅力を新たな角度からファンに届けた。

「特別な存在」v flowerとのデュエットも

ライブ中盤では「Fall Apart」にも収録されたバルーン名義の楽曲「メーベル」「雨とペトラ」が披露されるが、ここで須田は「自分の人生を変えた特別な存在」という“スペシャルゲスト”を呼び込んだ。ゲストとしてステージ上ではなく、後方のスクリーンに登場したのはボーカロイドのv flower。オリジナル版を歌唱したv flowerと作者であるバルーンこと須田のデュエットというこの日限りの貴重なパフォーマンスに、野音は大興奮に包まれる。さらに須田は「もう1曲、とても大切な人に向けて書いた曲です」と紹介し「WOLF」を熱唱。観客とその思いを1つにした。

3月26日にリリースされたばかりのdアニメストア CMタイアップソング「ミラージュ」では、壮大なアレンジに乗せて須田が観客に語りかけるように歌う。須田は日比谷の空を見上げながら「空が晴れたこと そんなどうでもいいこと いつからどうでもいいことになったでしょう」と歌い、改めてこの日の晴天を喜んでいるかのような表情を見せた。オーディエンスの大合唱で始まった「メロウ」からライブはラストスパートへ。「veil」「ユートピア」「ユーエンミー」とキラーチューンが連投され、野音はこの日一番の熱気に包まれた。

最後に須田は、インターネットを通じて音楽を発表してきた自身の活動を振り返りつつ「誰かと一緒に音楽やったり、誰かの前で音楽をやるのは向いていないと思っていたけど、気付けば仲間みたいな人が増えて、憧れの人が立っていた場所で皆さんと一緒に音楽ができて、とても幸せなことだと思います。“皆さん”ではなく、あなたのおかげで俺はまだまだ生きていける。これから先、あなたともっと素晴らしい景色を見たいです」と感謝の思いを語る。そしてラストナンバー「ダーリン」を“あなた”に語りかけるように熱っぽく歌い上げ、ライブを締めくくった。

「これからもいろんな景色をあなたと観たい」

アンコールで須田は今回のライブのために制作されたという未発表の新曲「ミーム」を初披露し、オーディエンスを驚かせた。この曲では流行り廃りのサイクルが加速している現在の世の中に対し、須田の「リスナーとしてはたくさんの音楽に会えるけど、1人の音楽家としては寂しい」という思いを表現したという。2分半の短い尺にシニカルな歌詞、抑揚の効いたメロディ、ピアノとベースが印象的なドラマチックなアレンジを詰め込んだナンバーで、須田のクリエイターとしての情熱を改めてファンに印象付けた。

「本当に幸せな時間でした。マジでありがとね。これからもいろんな景色をあなたと観たいと思っています」と須田が挨拶し、アンコールの最後に歌った曲は「シャルル」。客席からも大きな合唱が起こり、ライブのエンディングを盛大に飾った。全20曲のパフォーマンスを終えた須田は「また必ずどこかで生きて会いましょう」と挨拶し、軽やかな足取りでステージをあとにした。

ライブで披露された須田による歌唱の「WOLF」は明日4月23日に配信リリースされることが決定。またアンコールでは7月に横浜と神戸で公式アプリ「yawn」の会員限定イベント「Corridor」が行われることも発表された。プレミアム会員を対象にしたチケットの抽選予約は4月27日まで受付中。

セットリスト

「須田景凪 LIVE 2025 "花霞"」2025年4月19日 日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)

01. パメラ
02. 鳥曇り
03. 落花流水
04. レディーレ
05. 街灯劇
06. エイプリル
07. 雲を恋う
08. はるどなり
09. 夕染
10. メーベル feat. flower
11. 雨とペトラ feat. flower
12. WOLF
13. ミラージュ
14. メロウ
15. veil
16. ユートピア
17. ユーエンミー
18. ダーリン
<アンコール>
19. ミーム
20. シャルル

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