サザンオールスターズの全国ツアー「LIVE TOUR 2025『THANK YOU SO MUCH!!』」が5月29日に東京・東京ドームでファイナルを迎えた。
6年ぶりツアーの総動員数は約75万人
今年3月に約10年ぶり、通算16作目のオリジナル・アルバム「THANK YOU SO MUCH」をリリースしたサザンオールスターズ。ファンを含むバンドに関わるすべての人々への深い愛と感謝の思いを込めた本作は、各音楽チャートを圧巻し、サザンがデビューから47年目を迎えた現在も日本の音楽シーンのトップを走り続けていることを証明した。
サザンにとって約6年ぶりのツアーとなった「LIVE TOUR 2025『THANK YOU SO MUCH!!』」は今年1月に開幕。1992年から93年に開催された「歌う日本シリーズ1992~1993」以来最多の公演数となる、アリーナ8会場、ドーム5会場、計13箇所26公演という大規模な形で展開されたが、チケットは全公演すぐさまソールドアウトした。動員数は5月28、29日の東京ドーム公演2日間で約10万人、ツアー全体で合わせると約75万人。ファイナル公演では全国47都道府県272館589スクリーンの映画館でライブ・ビューイングも実施され、大勢のファンがサザンの珠玉のポップスとライブステージを堪能した。
ライブの幕開けを飾った楽曲は
開演時刻を過ぎて場内が暗転したのち、関口和之(B)、松田弘(Dr)、原由子(Key)、野沢秀行(Per)が次々にステージへ。桑田佳祐(Vo, G)の姿がスクリーンに捉えられるとひと際大きな歓声が沸き起こった。そして大きな期待感が渦巻く中、ライブの幕開けを飾った楽曲は「逢いたさ見たさ 病める My Mind」。この曲は1982年発売の5thアルバム「NUDE MAN」に収録されている、恋のもどかしさを描いたバラードナンバーだ。電話に出ない相手に対する溜息のような声で歌が始まると、ステージから広がる音世界に観客は瞬く間に夢中になった。続いてはアルバム「THANK YOU SO MUCH」より、高揚感と衝動に満ちたロックンロールナンバー「ジャンヌ・ダルクによろしく」が雄大に鳴り響く。カウベルが刻むビートを経て硬質なギターサウンドとともにステージ上の真紅の幕が開き、客前にお目見えしたスクリーンには巨大なSOUTHERN ALL STARSの文字が。さらにライブの開幕を宣言するファンファーレのように銀テープが勢いよく放たれ、会場中のテンションが一気に引き上げられた。
2曲を歌い終えると桑田は「こんばんはー!」と陽気な声色で挨拶。このライブがツアーの千秋楽であることに触れると、「延長したーい」と無邪気な言葉を口にして笑いを誘った。その後は「せつない胸に風が吹いてた」や「ラチエン通りのシスター」など、往年のファンの心を奪うようなセットリストでライブが進行。琉球の空気感を言葉と音に宿した「神の島遥か国」では、風がそよぐように客席で観客の手が一斉にゆらめいた。またイントロが鳴った瞬間に大きな歓声が起こった「愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~」では、サイケデリックな映像演出をバックに濃密な演奏が繰り広げられ、会場全体が熱気の立ち込める音の渦に巻き込まれていった。
10年ぶりアルバムの新曲をたっぷりと披露
観客が1曲1曲をじっくりと堪能する中、サザンは過去の名曲のみならず、「THANK YOU SO MUCH」収録の新曲もたっぷりと披露。無情に襲いくる天災への畏怖と哀悼、そして新しい生命への希望を、はかなくも美しい“桜”に重ねて表現したポップナンバー「桜、ひらり」、先達が築き上げてきたエンタテインメントへの敬愛を込めた「神様からの贈り物」、爽快なサウンドの上を原の優しいボーカルがドライブする「風のタイムマシンにのって」など多彩な楽曲が並び、大ベテランでありながら今もなお貪欲に音楽に向き合い続けるサザンの姿勢が改めてステージ上に表出した。
1stアルバム「熱い胸さわぎ」の収録曲「別れ話は最後に」、社会風刺をちりばめた「ニッポンのヒール」が奏でられたアコースティックコーナーを挟み、ライブ後半も「THANK YOU SO MUCH」の楽曲が続く。デビュー前の最初期に制作されたというサザンの“原点”であり、最新曲でもある「悲しみはブギの彼方に」では桑田によるブルージーなスライドギターをはじめ、シンプルで純度の高いバンドサウンドがきらめきを放った。ロケットの映像と軽快なピアノの音を合図にグラムロックナンバー「夢の宇宙旅行」がスタートすると、入場時に観客に配られたリストバンド型のライトが一斉に点灯。およそ5万もの光が満天の星のように輝いた。さらに昭和から平成初期に流行したディスコサウンドと令和のEDMサウンドを融合させたダンスナンバー「恋のブギウギナイト」では、場内に設置された複数のミラーボールが鮮烈な光を放ち、広いドーム内をまばゆく照らした。
終盤に畳みかけられる鉄板曲の数々
桑田の「今日は新曲もたくさん聴いていただいて本当にありがとうございます! このへんで、長年皆さんにかわいがってもらっている曲をやってもいいですか!?」という呼びかけを合図に、ライブはいよいよラストスパートへ。客席で一体感あふれるクラップが鳴った「LOVE AFFAIR~秘密のデート~」、ステージ上に無数の炎が噴出した「マチルダBABY」、前のめりなビートに観客が体を揺らした「ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)」と、イントロが流れた瞬間に興奮が広がる鉄板中の鉄板の楽曲が畳みかけられていく。ライブ本編のラストを飾った「マンピーのG★SPOT」も説明不要の定番曲。戦隊衣装のセクシーなダンサーがステージ上にずらりと並び、サザンがデビュー時から変わらず持ち続けているエンタテインメントの精神が観客を大いに楽しませた。
アンコールでは「Relay~社の詩」でライブが再開し、強い意志と温もりを含んだ歌声が緑色の照明とともに客席を包み込む。続く「東京VICTORY」でも伸びやかな声を響かせた桑田が「これからも皆さんに楽しんでいただけるようにサザンオールスターズがんばりますので、よろしくお願いします!」と挨拶を述べると、拍手喝采がステージへと送られた。そしてサザンは「希望の轍」「勝手にシンドバッド」という2つの名曲を立て続けに披露。バンドの始まりの曲「勝手にシンドバッド」ではおなじみのコール&レスポンス、金テープの演出、読売ジャイアンツのマスコットであるジャビットやシスタージャビットも交えたダンサーの登場により、東京ドームが巨大なカーニバル会場に様変わりした。サザンを象徴するような盛大なお祭り騒ぎでライブを終えると、桑田は「またサザンオールスターズ、いつかどこかでお会いする日を楽しみにしております!」と客席に笑顔を向け、5カ月近くにおよんだ「LIVE TOUR 2025『THANK YOU SO MUCH!!』」を大団円へと導いた。
セットリスト
「LIVE TOUR 2025『THANK YOU SO MUCH!!』」2025年5月29日 東京ドーム
01. 逢いたさ見たさ 病める My Mind
02. ジャンヌ・ダルクによろしく
03. せつない胸に風が吹いてた
04. 愛する女性(ひと)とのすれ違い
05. 海
06. ラチエン通りのシスター
07. 神の島遥か国
08. 愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~
09. 桜、ひらり
10. 神様からの贈り物
11. 史上最恐のモンスター
12. 暮れゆく街のふたり
13. 風のタイムマシンにのって
14. 別れ話は最後に
15. ニッポンのヒール
16. 悲しみはブギの彼方に
17. ミツコとカンジ
18. 夢の宇宙旅行
19. ごめんね母さん
20. 恋のブギウギナイト
21. LOVE AFFAIR~秘密のデート~
22. マチルダBABY
23. ミス・ブランニュー・デイ(MISS BRAND-NEW DAY)
24. マンピーのG★SPOT
<アンコール>
25. Relay~社の詩
26. 東京VICTORY
27. 希望の轍
28. 勝手にシンドバッド
