Awich、OZworld、唾奇、CHICO CARLITOが出演するライブイベント「RASEN OKINAWA TOUR」の東京公演が7月13日にZepp DiverCity(TOKYO)で開催された。
「東京に沖縄を持ってきました」とAwichが紹介する通り、ステージには椰子の木のようなモニュメントが飾られ、左右にシーサー像が鎮座する。神殿のようにも見えるセットや、デイゴの花を模した飾り。中央に光るネオンサインは「螺旋」の文字を映し出す。Awich、唾奇、OZworld、そしてCHICO CARLITOが参加し、衝撃的なマイクリレーをパッケージした楽曲「RASEN in OKINAWA」がリリースされたのは2023年。それから2年を経て、アーティストとしてさらに成長した4人が再結集し、同曲をテーマにして開催したのが今回のツアーだ。東京公演のチケットは早々にソールドアウト。暑い夏をもっと“アツく”する4人のMCが、いよいよステージに降り立つ。
Awich
まずトップバッターを務めたのはAwich。アメリカ・ニューヨークのラッパー・ファーグを迎えて全英語詞でラップする「Butcher Shop」でライブの口火を切り、ヒット曲「Remember」で会場全体を盛り上げる。ドラムが鳴り響く中、彼女は「Come Down Remix」、RITTOの楽曲に客演参加した「NINGEN State Of Mind II Remix」などのナンバーで徐々にエモーショナルな空気を醸成。「歌って踊って、泣いて笑って、飲んで踊りましょう」と呼びかけ、島国に根付くソウルを体現するように噛み締めながらラップした。
「Link Up」ののち、YENTOWN名義で発表した「不幸中の幸い」で再びガラッと雰囲気を変えたAwich。「この会場にバッドビッチはどれだけいんだよ!?」と叫ぶと「Bad Bitch 美学」「GILA GILA」を続け、息もつかせぬほどに客席を煽る。「もうすぐ新曲を出すんだよね」と切り出した彼女は、レザのプロデュースでファーグ、ルーペ・フィアスコと共演した新曲「Wax Off Wax On」について解説すると、この曲をそのまま披露。楽曲のタイトルを連呼するフックではオーディエンスもしっかり応え、映画「ベスト・キッド」にインスパイアされたハードなレザのビートでスピットするAwichの姿はMr.ミヤギ、もといMs.ミヤギといったところだ。
OZworld
一気に火がついたオーディエンスの歓声の中、2組目として登場したのはOZworld。神秘的な雰囲気をまといながら「畳-Tatami-」「Peter Son」と定番曲を届けていく。「UTAGE 3.0」のあとにはKUJAを迎えて「KARASU Remix」を披露し、続けて「GEAR 5」など勢いのある楽曲を次々と繰り出してオーディエンスを盛り上げた。
「今日は新曲も持ってきたから」と伝えたOZworldは、「中学校のときからずっと着けていたおばーの時計がなくなってしまった。その後、興味もなかったロレックスを買ったんだけど、去るときは去る、という何かの予兆なんだ」と語り、新曲「おばーの時計」へ。さらにオーディエンスを引き込むように「龍-RAW-」を披露し、心地よい一体感を演出すると、最後に「MIKOTO ~SUN NO KUNI~」を歌い上げた。
CHICO CARLITO
客席の熱量がさらに上がっていく中、CHICO CARLITOは未発表曲「南一局」をラップしながら舞台へ登場する。重厚なラップをどっしりと聴かせる彼のマイク捌きはステージ映えもばっちりだ。オーディエンスに「イーヤーサッサー」のコール&レスポンスをレクチャーして「Ryukyu Style」へとつなげたCHICO CARLITOは、「The Best Kid」を挟み、「めちゃくちゃ地元の歌なんですけど聴いてもらっていいですか?」のひと言とともに未発表曲「HOOD HUMOR」へ突入。パワフルかつトリッキーなラップで観客を圧倒する。
故郷への思いや歴史を汲んだ「Orion's belt」を歌ったCHICO CARLITOは、客演参加したELIONEの新曲「国産」をパフォーマンス。ELIONE本人も登場し、別の熱気を客席へと送り込む。間髪をいれずに披露された「画面の中」ではYellow Patoがステージへ。サプライズゲストの登場に沸く客席に対して、畳みかけるようにアカペラを披露する。さらにCHICO CARLITOは「Let Go」「ティンサグヌ花」を披露し、幅広い魅力を惜しむことなく出し切った。
唾奇
ソロパートの最後を飾るのは、唾奇。「PAGEONE」のイントロが流れると、どよめきのような大きな歓声が上がる。ステージの中央から登場した唾奇は、クールにリリックをキックしていく。スポットライトに照らされる中、「東京、調子はどう?」と呼びかけて「雨傘」を披露した彼は、「知らない曲でも乗れよ」とひと言放つとシニカルな表現を交えた新曲「GHOST」へ。往年の人気曲「Just thing」から「Thanks」へとつなぎ、パーソナルな思い出も交えながら「Kikuzato」をエモーショナルに歌った。
MCでは「自分のやるべきことから背を向けて、自堕落な生活を送っていたけど、思いっきり立ち上がった方がいいな、動いていた方がいいんだなって思うようになった。たくさん待たせてごめんなさい」と語り、「タイトル、“Camellia”。アルバムが出ます。8月4日」と、新作のリリースをサプライズ告知した唾奇。アルバムに収録されると思われる新曲「未完の石材」を1ヴァースだけキックし、客席をその世界観へと引き込んでいく。「道 -TAO-」を披露したのち、唾奇は「愛のままに行きませんか?」と切り出して「愛のままに」へ。喝采を浴びながら語りかけるようにラップした。
4人+サプライズゲストが集結
今回のツアーは、観客のスマホでの撮影は禁止されており、オーディエンスはいつもより熱量のこもった拍手やピュアな反応をステージに返していた。しかし、唾奇は去り際に「吉報なんですけど、今からは撮影アリにしましょう」と告げ、最後のパートとなる4名そろってのステージからは、客席がスマホのライトで埋まる。ステージがブルーのライトに照らされ、まずはAwichとOZworldが再び壇上に上がり、スリリングな「369」で宴の最終章がスタート。「弥栄LIT」ではCHICO CARLITOが加わり、唾奇も再度現れる。Awichプロデュースのハブ酒「HABUSH」を注いだショットグラスで乾杯する場面もありつつ、4人はまるでそれぞれのストーリーをつなげていくようにマイクをパスし、螺旋のような熱狂の渦に観客を巻き込んでいく。「LONGINESS REMIX」や「NINOKUNI」といったアンセムが披露される中、オーディエンスも負けじと合唱しながらピースフルなムードを作り上げた。
かつて琉球王国と呼ばれた沖縄。日本とアメリカの間で翻弄された過去を持ちながら、戦場にもなり、多くの命が失われた過去を持つ土地だ。「戦争とか生きるとか命とか、いつも考えさせられている。沖縄がどんな存在なのか、それについて考える時間を作ってほしい」と語りかけたAwichは、「先輩たちがつないでくれた素晴らしい歌がある。しーじゃー(先輩)たちがいるから、私たちがいる」と続けると、MONGOL800の楽曲をリミックスした「琉球愛歌 Remix」へ。すると中盤で音が止み、舞台の上手から登場したのはMONGOL800のボーカル、キヨサクだ。
まさかの本家登場に、客先からは大歓声が上がる。「でーじびっくりします」と笑いながら、キヨサクと4人は「カリー!(沖縄で使われる乾杯時のかけ声)」の発声とともに再度ショットグラスで乾杯。改めて「琉球愛歌」を歌い、客席を温かい感動で包み込んだ。そして、4人は最後に本ツアーのテーマソングでもある「RASEN in OKINAWA」を披露。脂がノリまくった4人は、抜群の相性のよさを見せつけ、家族にも似た安心感をもたらすマイクリレーで沖縄のパワーを存分にぶつけ合った。
「RASEN OKINAWA TOUR」は今後も続く。7月26日に控える福岡公演では唾奇に代わって柊人が出演し、8月2日の愛知公演についてはAwich、OZworld、CHICO CARLITOに加えて、さらなる出演者が発表される予定。贅沢な布陣とともに沖縄の“アイランドヒート”を存分に楽しむ絶好のチャンスだ。
「RASEN OKINAWA TOUR」追加公演
2025年7月26日(土)福岡県 Zepp Fukuoka
<出演者>
Awich / OZworld / CHICO CARLITO / 柊人
2025年8月2日(土)愛知県 Zepp Nagoya
<出演者>
Awich / OZworld / CHICO CARLITO / and more
