グループ魂が1年ぶりのワンマンライブ「羽田で単発のバイト」を、9月10日に東京・Zepp Haneda(TOKYO)で行った。
1995年に結成され、現在は破壊(Vo / 阿部サダヲ)、暴動(G / 宮藤官九郎)、小園(B / 小園竜一)、石鹸(Dr / 三宅弘城)、遅刻(G / 富澤タク)、港カヲル(46歳 / 皆川猿時)の6人で活動中のグループ魂。結成30周年記念公演となる「羽田で単発のバイト」では、ゲストあり、コントあり、トークありと、これまでの変わらぬ情報過多かつ抱腹絶倒の2時間半のステージが展開された。
「美香さん、俺より目立たないでよ!」
約5年ぶりの新曲「来世は叶姉妹」が叶姉妹をモチーフであることにちなんで、会場には観覧ゲストとして叶美香も来場。2階席にゴージャスな姿がお目見えすると、超満員のフロアは早くも熱狂する。これから始まる1年ぶりのワンマンライブへの期待は否が応でも高まり、浮き足立ったムードが会場に漂った。そんな中、いそいそと現れたカヲルが放った第一声は「美香さん、俺より目立たないでよ!」。叶美香の美しさに嫉妬心を燃やしつつ、「夜の第1ターミナル、カヲルです!」「ヘルプを交えた羽田シフトで参ります! 日当8000円だぞ!」と叫び、メンバーを呼び込んだ。
現在のグループ魂は6人編成だが、ステージには7人の姿が。観客がよくよく目を凝らすと、学生服にヘルメット姿のじろう(シソンヌ)扮する中学生・野村正弘が不安げにたたずんでいた。いきなりのゲスト登場に沸き立つフロアに向けて、グループ魂が放ったのは「モテる努力をしないでモテたい節」。じろうは目を少し泳がせながらも、破壊、カヲルとともに懸命に踊り、続く「ウィリアム・カウパー」ではリードボーカルも担当したり、「チャーのフェンダー」ではエアギターもかき鳴らしたりと面目躍如の活躍ぶり。
しかし、カヲルが「中高年に混じって中学生がいる! 正しくは中学生気分のヤツがいる! 中学生はバイト禁止でしょ!」と指摘すると逆ギレ気味に。一瞬不穏な空気になるが、野村くん(じろう)は破壊の姿をみとめるや、カバンから色紙を出し「阿部サダヲだ、サインください!」と傍若無人な行動に出たうえ、履歴書を持ち出し“単発バイト”への応募資格があることをアピール。しかし、野村くんのグループ魂への加入は叶わず、彼は「こんなのいらねえよ!」とメンバーのサイン入り色紙をフロアに向かって投げつけ、あっさり退場していった。
還暦のあっちゃん&宍戸美和公、履歴書を持って登場
叶美香が見守る中、破壊がポツリと「緊張してきた……」とつぶやき始まったのは「来世は叶姉妹」。破壊が「叶姉妹に加入したい」と連呼する横で、遅番(Sax / 少路勇介)が吹くサックスが華麗に鳴り響き、カヲルは全身に汗をべったりとまとわせながら「背脂のにおい」と絶唱するというカオスな景色が広がる。歌い終えると破壊は、2階席の叶美香に恭しく手を差し出した。
The Clashがカバーしたことでも知られる「I Fought the Law」へのオマージュを込めた、痛快なパンクチューン「介護ME!」、際どい時事ネタをたっぷり盛り込んだMC、女子高生姿のカヲルの登場と「High School」、TOKIOに提供した「ラブラブ♡マンハッタン」のセルフカバーと目まぐるしい展開を挟み、2人目のゲストであるあっちゃんことATSUSHI(ニューロティカ)が勢いよくステージへ。カヲルに「(バイトの)応募は59歳以下でしょ! ピエロはお帰りください!」と袖にされかけるATSUSHIだが、「耳が遠いんですけど~」とすかさず持参した履歴書を提出。プライベートなエピソードを暴露され大慌てするひと幕もありつつ、「ホントは募集は59歳以下だけど、いいじゃない!」という鶴のひと声ならぬカヲルのひと声で「I was PUNK!!~グループ魂にあっちゃん(NEW ROTE'KA)は?~」「DRINKIN' BOYS」の2曲を高らかに歌い上げた。
体型を強調した婦人警官風ボディスーツに身を包んだカヲルが、自身のソロアルバム「俺でいいのかい ~港カヲル、歌いすぎる~」でもカバーしたGLAY「HOWEVER」を熱唱する演目でライブは折り返しに。一旦ステージをはけていたメンバーも勢ぞろいし、「職務質問」が始まるもステージにはメンバー6人と遅番に加えて、肩からポシェットをかけたカジュアルな装いの女性の姿が。破壊らとなめらかなムーンウォークを披露するその女性は、「痛快TV スカッとジャパン」でケチケチ母ちゃん役としてお茶の間に親しまれていた宍戸美和公。カヲルは「また(人が)増えてる、60歳!」と不満げだが「スカッとジャパン終了につき就職先を探している」という切実な応募背景と「あのちゃんと身長体重が同じ」ことからケチケチ母ちゃん(宍戸)を交えてのコラボレーションへとなだれ込んだ。ATSUSHIと同じ還暦の宍戸だが、「さかなクン」では年齢を感じさせないキレのあるアクションとシャウトをさく裂させ、会場はやんややんやの大喝采に。ケチケチ母ちゃんとはまた異なる、強烈なインパクトを残してステージをあとにした。
「もう限界です! お疲れ様でした!」
この日のライブでは、じろうも巻き込み「皆川スポーツ」のコーナーが約3年ぶりに復活。学ラン姿のカヲルがメンバーにクイズを出題し、正解でも不正解でもビンタかキスをするという、メンバーへのダメージが大きいこのコーナーは、当然のことながら阿鼻叫喚の内容に。失笑、爆笑、苦笑とあらゆる笑いが巻き起こる、グループ魂らしい珍妙な時間が流れた。全員が気を取り直して突入した後半戦は、楽器隊のメンバーが大いに躍動。「ケーシー高峰」「本田博太郎~magical mystery UPAAAAAAAAA!!!!!~」「Over 30 do The 魂」といったライブの鉄板曲が会場に強烈な一体感を生み出し、「君にジュースを買ってあげる♡」ではゲストも勢ぞろいしての大合唱が繰り広げられた。
ここまでで約2時間以上が経過していたが、グループ魂のライブはまだ終わらない。中年の本音を煮詰めた「それでも生きなきゃ死んじゃう音頭」「モテる努力をしないとモテないゾーン」の2曲が本編のクライマックスを彩り、観客もおおいに踊り、歌い、ライブを楽しみ尽くす。
アンコールではコント「中村屋」の主役である破壊扮する9代目中村屋華左衛門が登場。以前は歌舞伎俳優らしい衣装で登場していた中村屋華左衛門だったが、この日はアロハシャツにサングラスとネジネジマフラーのみといういでたちで、年々簡素化する衣装に対する愚痴をこぼし始める。彼があちこちから沸く「中村屋!」「中村屋!」というコールに混ざって聞こえる雑音をかき消していると、じろう扮する野村くんが影アナで12月26日の東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)グループ魂ワンマン公演の開催を告知。メンバーではなくゲストに袖から重大発表させるという、なんとも天邪鬼な演出を挟みメンバーが再度ステージに集結した。
近年のグループ魂のテーマ曲とも言える「もうすっかりNO FUTURE!」、結成20周年のタイミングでリリースされた「高田文夫」でライブは終了。アンコール登場時は紅白の紋付袴に兜姿だったカヲルは、いつの間にパンツ1枚に兜を被っているだけの状態。「帰れよ!帰れよ! 1回くらい早く終わらせてみせろ!」と悪態をつき楽器隊を袖にやったあと、遅番や観客とともにワンマンライブ恒例の三三七拍子を繰り返した。筋トレの成果を見せつけるように去っていく遅番の後ろで、「もう限界です! お疲れ様でした!」とヤケクソ気味に叫ぶカヲル。観客が最後に目にしたのは、重い兜を頭に乗せ、臀部の約半分をあらわにしたカヲルの後ろ姿だった。
セットリスト
グループ魂「羽田で単発のバイト」2025年9月10日 Zepp Haneda(TOKYO)
01. モテる努力をしないでモテたい節
02. ウィリアム・カウパー
03. チャーのフェンダー
04. 平成の記憶がない!
05. 来世は叶姉妹
06. 介護ME!
07. High School
08. ラブラブ♡マンハッタン
09. I was PUNK!!~グループ魂にあっちゃん(NEW ROTE'KA)は?~
10. DRINKIN' BOYS
11. 職務質問
12. オクサーヌ
13. さかなクン
14. ケーシー高峰
15. 本田博太郎~magical mystery UPAAAAAAAAA!!!!!~
16. Over 30 do The 魂
17. 君にジュースを買ってあげる♡
18. それでも生きなきゃ死んじゃう音頭
19. モテる努力をしないとモテないゾーン
20. もうすっかりNO FUTURE!
21. 高田文夫
