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歌手の後ろにいるDJって何をしてるの?

キニナル君が行く!
17分前2025年11月26日 9:03

ヤッホーみんな! 僕、キニナル君。音楽愛する大学生♪ 将来の夢は音楽でごはんを食べていくことだよ。でも、正直わからないことばかり。だからこの連載を通して、僕が気になった音楽にまつわるさまざまな疑問を専門家の人たちに聞きに行くよ。

この間、あるグループのライブを観に行ったんだけど、DJの人がカッコよかった! ターンテーブルを使いこなして、MCでお客さんを盛り上げていて。今ではDJってJ-POPのグループでも当たり前の存在だけど、もともとクラブで夜通し音楽をかける人ってイメージがあるんだよね。僕がライブで観たDJとの違いがよくわからなかったので、DJ活動45周年を迎えたレジェンド・DJ KOOさんに話を聞いてきたよ!

取材・文 / キニナル君 イラスト / 柘植文

そもそもDJって何?

──DJってカッコいいなあと思ってるんですけど、よくよく考えてみたらDJの人たちがいったい何をしているのか、ちゃんと理解していなくて。ズバリ聞きます! DJって何をする人なんですか?

音楽をかけて、たくさんの人に踊ってもらうお仕事だよ。

──それはなんとなくわかります! もう少し具体的に教えてください!

DJには、大きく分けて2種類あるんだ。1つは“クラブDJ”と呼ばれるもので、DJが1人でお客さんの前に出て行って、いろんな人の曲を次々にかけて踊ってもらう。もう1つは“バックDJ”といって、DJがバンドの代わりに音楽を流して、ボーカリストやラッパーの伴奏のようなお仕事をするんだよ。

──僕がこないだライブで観たのは“バックDJ”のほうですね。スクラッチをしたりするのはどっち?

人によるかな。クラブDJでもバックDJでもやる人はやるし、やらない人はやらないからね。

──そうなんですね! クラブDJとバックDJは、どちらか専門でやるものなんですか? それとも、どっちもやる人が多いの?

けっこう分かれるんじゃないかなあ。ジャンルでいうと、ヒップホップやレゲエなどではバックDJ的なスタイルの人が多いと思うし、EDMやハウス、トランスといったクラブミュージック寄りのジャンルではクラブDJ専門っていう人が多い印象があるね。

──KOOさんは両方やりますよね?

そうだね。僕はDJを45年間やってきているんだけど……。

──45年! すごい! 45周年おめでとうございます!

ありがとう(笑)。僕がDJを始めた当初は、ずっとクラブDJとして活動していたんだ。そこから1990年代にTRF(※デビュー当初は「trf」表記)の活動を始めたことで、バックDJのスタイルも加わった。そのあたりから、その2つがミックスされたような自分のスタイルができあがっていった感じだね。

──例えばTRFの場合でいうと、KOOさんは具体的にどういう役割を担っているんですか? ステージを見ているだけだと、どの音がDJから出ているのか素人にはよくわからなくて。

TRFの場合は、バックトラックの音が全部DJから出ているわけじゃないんだよ。マニピュレーターという人が別にいて、その人がオケと呼ばれる基本のバックトラックを鳴らしてくれているんだ。僕はそのオケに合わせてスクラッチやエフェクトを入れたり、声を出してお客さんを盛り上げたりする役目をやっています。そういうMCスタイルのDJも最近はすごく増えていて、特に大きな会場ではMCで盛り上げることがすごく大事なんだ。それによって会場がどんどんひとつになっていって、よりライブ感が強くなる。

──なるほど! ベースとなるオケをマニピュレーターさんに任せることで、DJは楽器プレイヤーのように音を重ねたり、MCパフォーマンスに専念したりすることができるんですね。

そうだね。ただそれはあくまでTRFの場合であって、DJがすべてのオケを担うスタイルもある。R&B系のユニットなんかだと、そういうやり方をしている人たちが多いと思うよ。

技術が進歩しても根本は変わらない

──素朴な疑問なんですけど、DJって基本的にはレコードをかける仕事じゃないですか。ラッパーやボーカリストのバックでDJをする場合、普通にレコードをかけたら歌が重なっちゃいそうな気がするんですけど……。

いい質問だね(笑)。初期のヒップホップでは、ジャズやR&Bなどのレコードの歌のない部分だけをDJが2台のターンテーブルを使ってつないで繰り返していたんだ。“ブレイクビーツ”と呼ばれる手法だね。そのブレイクビーツに乗せてラップをする、というスタイルが1970年代にアメリカで生まれた。その後はシングルレコードに歌のないインストトラックを収録してリリースすることが一般的になったので、それを使ったりするようにもなっていったんだよ。

──確かに、今でもシングルCDにはほぼ「(Instrumental)」っていうトラックが入ってますよね!

なので、すごく即興性の高いやり方なんだ。その場で思いついたビートの組み合わせを急に試したり、途中にスクラッチだけでつなぐ展開を作ったり、DJの発想次第で大胆な音の演出を作っていくことができる。それによって、いろんなジャンルの音楽を組み合わせる面白さも新しく出てきたんだよ。例えばジャズのビートにロックのギターリフを乗っけてみたりとか、それまでには作り得なかったような音楽を自由に生み出していけるようになったんだよね。リミックス的な発想と言えばいいのかな。

──それがどんどん進化して、今はデジタルが主流だと思うので、さらに自由になっている?

そうだね。90年代ぐらいからサンプラーという機材を使うDJが一般化し始めて、それまでアナログだったものがデジタルに移り変わっていったんだ。さらに2000年代以降はPCと連動するシステムもどんどん出てきて、いちいちレコードやCDを用意しなくてもPCに入っているデジタル音源を呼び出せば済むようになったから、それまでの“2枚のレコードの組み合わせ”という制約もなくなった。DJのシステムが進化することによって、どんどんDJの自由度は上がっていったんだよ。

──「DJ」という言葉は「ディスク・ジョッキー」の略だと聞いたことがあります。でも今は「ディスク」が関係なくなっちゃってるんですね!

もちろん今でもディスク、つまりレコード盤にこだわっているDJもたくさんいるけどね。でも、やり方が変わってきているだけで、DJの根本は何も変わっていないんだ。最初に「DJって何する人?」と聞かれて「踊らせる仕事だよ」と答えたでしょ? その仕事を今はいろんな手法でできるようになった、というだけのことなんだよね。

「DJの醍醐味を3分間で見せる」という挑戦

──そもそもKOOさんがDJを始めたきっかけはなんだったんですか?

もともと僕はずっとロックが好きで、10代の頃はBlack Sabbathとかのコピーバンドをやっていたんだ。ロックミュージシャンになることを夢見ていたんだけど、いろんなコンテストに出てもいい結果が出なくて。「これはちょっとプロのレベルには追いつけそうにないぞ」と思ってロックはあきらめたんだけど、それでも音楽の仕事はしたかったんだよね。そんなときに新宿のディスコへ行って、DJがフロアを盛り上げている姿を見たときに「カッコいい! 自分も絶対DJになろう!」と決意したんです。だから、元をたどれば妥協から始まっているんだよ。

──「妥協」って(笑)。「ロックの世界ではトップになれそうにないけど、DJなら俺でもイケる」と思えたってことですか?

いや、まずは「カッコいいな、これをやりたいな」という衝動だけだったね。すぐにDJの人のところに行って、「自分もDJやりたいんですけど、どうしたらいいですか?」と聞きに行きました。今思うと、よく行けたなって(笑)。まあ、その向こう見ずなところがよかったんだろうね。そういう気持ちの強さ、一歩目を踏み出せる行動力というのは、どんな世界においても大切なことだと思うよ。

──勉強になります……! そこからクラブDJとしての活動が始まって、TRFに参加することになった段階でバックDJもやることになったんですよね。その移行はスムーズにできたんですか?

それまで自分がやってきたDJとはまったく違うものだったから、戸惑いはあったかな。何より、当時の僕はポピュラー音楽というものに対する偏見がすごかったから(笑)。「あんなものは商業的な音楽にすぎない、本当にカッコいいのは大衆には理解されないような音楽だ」という、アンダーグラウンドな考え方をしていたんだよね。ただ、小室哲哉という人に出会ったことで、その凝り固まった考えが覆された。

──小室さんと何があったんですか?

普通、クラブDJというのは1時間とかの持ち時間を使って自分の選曲でお客さんを踊らせるものなんだけど、師匠……小室さんはそれを十分わかったうえで「そのDJの醍醐味を、3分間で見せることはできないかな?」と言うんだ。師匠は当時まだアンダーグラウンドだったダンスミュージックをオーバーグラウンドに引き上げて世に広めよう、という強い気持ちを持っていたんだよね。その思いがすごく伝わってきたから僕も斜に構えるのをやめて、誰もが楽しめるDJのあり方を追求するようになっていったんだ。クールに機材をいじってるだけじゃなくて、手を挙げたり、オーバーアクションを取ったり、叫んだりね。

──その結果、KOOさんはDJという存在をお茶の間レベルにまで知らしめましたよね!

最初の頃は世間の皆様からもさんざん言われたけどね。「演奏中にヘッドフォンで音楽聴いてるあいつはなんなんだ」とか(笑)。

──あははは。あれは次に鳴らすビートを吟味しているところですよね。

そう。やっぱりテレビ画面の中で見ていただいていたのはDJのほんの一部分だったので、もっといろんな面を見てほしいなという思いはありました。でも、それによってDJという存在が広まっただけでもうれしかったよ。自分の中で「これでいいのかな」という葛藤はあったけれど、小室さんの言葉を信じて続けていきましたね。現場のDJたちからは「DJ KOOは魂を売った」とか言われたりもしたけど……。

──そういうことを言う人はどこにでもいるんですね(笑)。

もう、めちゃめちゃ言われたよ(笑)。でも僕は自分のすることに誇りを持ってやってきた。TRFの楽曲がチャートインしたり、日本武道館や東京ドームでライブをやったりするようになったことで、ダンスフロアだけの存在だったDJというものをたくさんの人に届けられたことはうれしかったね。

DJはお客さんが主役

──DJをやっていて、一番やりがいを感じるのはどんなところですか?

いろいろなジャンルとコラボレーションできる、というのがDJの楽しさかな。もちろんハウスならハウスだけを突き詰めている人とか、ジャンルにこだわってDJをやっている人もたくさんいるよ。でも僕の場合はいろんなジャンルの人たちとやっていきたい思いがあって、特に最近は現場がすごく幅広くなっているんだよね。クラブイベントだけじゃなく、盆踊り会場でDJをやったりとか。さらにコロナが明けてからは、スポーツの現場に呼んでもらう機会が増えたんだよ。プロ野球・福岡ソフトバンクホークスの「鷹祭 SUMMER BOOST」や、Bリーグ・サンロッカーズ渋谷のハーフタイムショー、あとはラグビーのリーグワン・埼玉パナソニックワイルドナイツのホームでスタジアムDJをさせてもらったり。

──「スタジアムDJ」という言葉も普通に聞くようになりましたよね。

そうだね。今は音楽以外の世界でも「DJを呼べば盛り上げてくれる」と認識してもらえている。DJという存在が一般に受け入れられてきているというのは、すごくうれしいことだよ。

──それはやっぱり、「レコードさえかければどんなジャンルのプレイヤーにもなれる」という身軽さがあってこそのものですよね!

特に僕の場合は、もともとオールジャンルのDJスタイルだったからね。それが今の自分にすごくつながっている感じはするよ。しかも今の時代はデータで曲を持ち運べるから、USBメモリの中にセットリストを組んでおくだけで、いろんなジャンルに対応できちゃう。例えばアニソンの次にゲームミュージック、そこから90年代サウンドにつなげたりとか、1回のセットでさまざまなジャンルの音楽を楽しんでもらうことがより容易になったんだ。そうやってキッズからシニアの人まで楽しんでもらえるような流れを作っていく、というのはやりがいがあるよ。

──なんだか僕もDJに挑戦してみたくなってきました! どういうところから始めたらいいですか?

まずはやっぱり、いろんな曲をたくさん聴くことだね。それから、実際に現場へ行ってDJがどんな選曲をしているかを聴くのもいいと思う。今はDJ機材がすごく進歩して操作が簡単になっているから、余計に選曲センスが重要になってきているんだ。例えばアナログレコードでテンポやピッチを合わせてつなぐためにはかなりの技術と経験が必要で、僕らはそれを必死に練習して習得してきたんだけど、今はその作業がオートシンクボタン1つ押すだけでできてしまう。だからカッコいい曲、かけたい曲に出会うことと、それを「どんなふうにかけようかな」とワクワクする気持ちを大事にしたらいいと思います。

──ありがとうございます! あと僕、やっぱりスクラッチとかもカッコよく決めてみたいんですけど……。

ターンテーブリスト志望なんだね。僕の後輩でいうとdj hondaくんとか、最近だとCreepy NutsのDJ松永くんとかがその技術で世界に出て行っているよね。日本人が音楽で世界進出することって以前まではなかなか難しいことだったんだけど、ターンテーブルの技で世界と渡り合う道を彼らが開拓してくれた。メジャーリーグの大谷翔平選手じゃないけど、どんどん練習してアイデアを蓄積していけば、海外で成功することもまったく夢じゃないと思うよ。「スクラッチで世界へ行けるぜ!」みたいな、そんな希望を持ってがんばってくれたらうれしいな。世界水準でいこうよ!

──わかりました! ちなみにKOOさんは、どんな人がDJに向いていると思いますか?

我慢強い人。飽きっぽい人がDJをやると、どうしてもうわべだけのものになりやすいんだ。例えば同じ曲でもいろんなバージョンがある場合に「どれをかけたら一番効果的だろう?」とじっくり吟味したり、星の数ほどある曲の中から「この曲のこの部分をこんなふうに使えるかな」と見つけ出したりする作業には、けっこうな忍耐力がいる。だから、粘り強く考えていける人が向いていると思うな。

──そっか、僕らには華やかな表舞台しか見えてないけど、そこに至るまでの準備は膨大なものがあるわけですね。

そうだね。フロアに立つ前にしっかり準備していくことで、いざフロアで回したときに自分に何が足りないのかが初めてわかると思う。それを繰り返して自分の平均点を上げていくことで、やっとお客さんに喜んでもらえるDJになれるんじゃないかな。

──ただ我慢強く技術を磨いていくだけだと、どこかで「お客さんを楽しませる」という根本を忘れちゃいそう(笑)。それを見失わない、強い心も大事そうですね!

僕はいつも言ってるんだけど、DJじゃなくてお客さんが主役なんだよ。粘り強くフロアをロックしていく、それがDJというお仕事だと思います。

──「お客さんが主役」! その名言を肝に銘じたいと思います。今日はありがとうございました!

プロフィール

DJ KOO

1961年8月生まれ、東京都出身。TRFのリーダー、DJ、日本屈指の盛り上げ番長。トータルCDセールスは2200万枚を超え、多くの人に今なお愛され続けている。現在はTRFの活動とともに、「日本を元気に!笑顔に!」をモットーとして、盆踊りとDJを融合させた“進化型お祭りエンタテインメント”を追求している。2025年10月に、DJデビュー45周年記念プロジェクトの第1弾としてBEYOOOOONDSとのコラボ楽曲「最KOO DE DANCE」をリリースした。

DJ KOO (@DJKOO_official) / X
KOOTUBE - YouTube
DJ KOO official website
DJ KOO 45TH ANNIVERSARY SITE - avex

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