阿部真央のアコースティックツアー「On Your Way Home」が12月19日に東京・草月ホールでファイナルを迎えた。
アットホームな空気の中で
本ツアーでは阿部がミトカツユキ(Key)、和田建一郎(G)を迎えたアコースティック編成にて全国各地でライブを披露。ファイナルの草月ホール公演は、彼女にとってワンマンとしては年内最後のライブとなった。
全国のライブ制作会社から届いた花の数々が飾られたステージへ、阿部は「こんばんはー」と挨拶しながら登場。「うれしいね。こんなに距離の近いホール初めてかも!」と会場を見渡してから「今日はゆっくり楽しんでいってください。暑いとか寒いとかあったら言ってくださいね」と語りかけ、人気曲「ロンリー」でライブを開始した。サウンドの基盤となるのは、アコースティックギターと、ピアノの音色を基調としたキーボード。楽曲によって、阿部が大橋卓弥(スキマスイッチ)から影響を受けて取り入れたというストンプを踏み鳴らしたり、和田がウインドチャイムを揺らしたりと、ミニマルながらも趣向を凝らした演奏がファンを楽しませた。
阿部のライブは飾らない人柄や親密な空気感も魅力だが、この日はとりわけリラックスしたムードが漂い、演奏の合間では観客を巻き込む軽妙なやり取りが笑いを誘った。そんなアットホームな空気の中で、阿部は「17歳の唄」を焦燥感に駆られるように、「貴方の恋人になりたいのです」を切なさ全開で歌う。「Everyday」では優しく祈り、「母である為に」では深い愛を紡ぐ。楽曲の世界観にぴったりと沿う情感豊かな歌声で、聴衆の心を揺さぶり、魅了した。
“パワーのかけら”になってくれたら
今年結婚し第1子が誕生した和田へ贈られた「いつの日も」、恒例の合唱パートがきらめいた「Somebody Else Now」と見どころあふれるライブが続く。新曲「Ding-dong」に続いては、山下達郎「クリスマス・イブ」と、マライア・キャリー「All I Want For Christmas Is You」というこの時期にぴったりのカバーがメドレーで披露され、会場が喝采に包まれた。
初期の人気ナンバー「I wanna see you」「モットー。」で観客とひとつになったのち、阿部は「ストンプが本当にうまくなった!」とツアーを通して得た自身の成長を喜ぶ。さらに「このライブが“パワーのかけら”になってくれたらうれしいです。みんなの人生がキラキラと輝くことが私の願いなので、ぜひ余裕があるときにまた会いに来てください」といつもの約束を交わした。そして3人編成のラストナンバーとして切なくも温かな「それぞれ歩き出そう」を演奏し、ミトと和田を笑顔で送り出した。
なくしたと思っていた“心の形”
ステージに1人になった阿部は、観客からリクエストを募集。客席からさまざまな曲名が飛び交う中、「伝えたいコトバ!」という実在しない曲名をキャッチし「『伝えたいこと』『コトバ』どっち? 面白いんだけど!」と即興で2曲をミックスして歌って見せた。そして、改めて「伝えたいこと」が披露され、彼女のやけにクオリティの高い“口ギター”も熱狂を誘ったライブ終盤。阿部が語ったのは、“心の形”を変えながら生きていたという過去の自分と、そんな心の欠けた部分を、これまでのアーティスト活動やこのツアーを通して取り戻してきたという実感だ。さらに「今日はその集大成をお見せできたと思います。本当にありがとうございました。私は、みんながありのままの姿で笑っていてほしい。それを確認できるように、ライブを続けていけたらと思います」と大切なメッセージが届けられた。
最後に阿部は、ライブのみで歌い続けている「母の唄」を歌唱。「よいお年を!」と会場のすみずみへ手を振りアコースティックツアーに幕を下ろした。
セットリスト
「阿部真央アコースティックツアー2025 - On Your Way Home -」2025年12月19日 草月ホール
01. ロンリー
02. Believe in yourself
03. 天使はいたんだ
04. 17歳の唄
05. 貴方の恋人になりたいのです
06. Everyday
07. 母である為に
08. いつの日も
09. Somebody Else Now
10. 嫌われてないかな
11. Ding-dong
12. クリスマス・イブ(オリジナル:山下達郎)
13. All I Want For Christmas Is You(オリジナル:マライア・キャリー)
14. I wanna see you
15. モットー。
16. それぞれ歩き出そう
17. 伝えたいこと
18. ストーカーの唄~3丁目、貴方の家~
19. 母の唄


