YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2026年1月2日から1月8日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングでは、54位にピーナッツくんの「Clione feat. 轟はじめ(Live at PQ)」が登場した。去年11月に開催された、3D技術を駆使したバーチャルライブ「ピーナッツくん Virtual Live『PQ』」内の映像で、ピーナッツくんと轟はじめの息の合った歌とダンスを堪能できる。
57位には雨良 Amalaの「バゥムクゥヘン・エンドロゥル」がランクインした。パッヘルベルの「カノン」やベートーヴェンの「交響曲第9番」など、誰もが知るクラシックの名曲を引用し、ポップな雰囲気に昇華したメロディが印象的だ。
62位に登場したのは、VOLTACTION×3SKMの「Crashing Winners」。VOLTACTIONと3SKMによるスペシャルユニットのオリジナル曲で、高みを目指して刺激し合う2組の“革命前夜”を歌ったダンスナンバーになっている。
72位にはMIMIの「トリックハート」がランクインした。キャッチーかつ軽快なリズムの上で躍動する、手品をモチーフにした独自性の高い歌詞が光っている。
人気のボカロPやVtuberの楽曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
日向坂46「クリフハンガー」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場42位
恋とは、乾いた大地に降る恵みの雨であり、なんてことのない日常の景色が突然輝いて見える魔法のファインダーでもある。しかし、恋に痛みはつきもの。「嫌われたのではないか」と不安になったり、告白をして傷付いたり、悲しい別れをすることだってある。それでも恋を求めてしまうのは、日常では味わえない劇的な変化を欲しているからかもしれない。日向坂46の新曲「クリフハンガー」は、孤独を感じつつ、誰かを好きになることに臆病になっていた主人公が、ハッピーエンドあるいはバッドエンドになったとしても「恋がしたい」と願う楽曲だと思う。
タイトルの「クリフハンガー」は、直訳すると「崖(クリフ)からぶら下がっているモノ(ハンガー)」という意味で、「このあとはどうなってしまうのだろう」と観る側の興味を誘うドラマや映画で用いられる作劇手法の1つ。主人公は「恋を成就させる」その一点に期待を抱いているのではなく、自分が恋をしたその先が知りたいと思っている。もちろん好きな人と結ばれれば、それにこしたことはない。しかし、仮にうまくいかなかったとしても、意中の相手に気に入られようと自分磨きをしたのなら、その努力は自信や自己肯定感につながるだろう。恋とは、自分を高める最も身近で強力な起爆剤でもあるのだ。そんなポジティブなメッセージを、筆者はこの曲から感じた。
今作のセンターを務めるのは、五期生の大野愛実。MVは、これまでの葛藤を描きながらも、新たな未来をつかみ取る日向坂46の“これから”を表現した、力の入った映像に仕上がっている。
福山雅治「木星 feat. 稲葉浩志」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場51位
福山雅治が稲葉浩志(B'z)をフィーチャーリングゲストに迎えた楽曲「木星 feat. 稲葉浩志」のMVが51位に登場した。大晦日の「第76回NHK紅白歌合戦」特別企画で披露されて話題となったこの楽曲は、福山の主演映画「映画ラストマン -FIRST LOVE-」主題歌だ。
2025年12月13日放送のTOKYO FM「福山雅治 福のラジオ」内で、福山は楽曲の制作秘話を披露している。企画プロデュースの東仲恵吾から主題歌のオファーを受けた際、福山は「ラストマン」が“最強のバディ”を謳った作品であることを踏まえ、主題歌も”最強“にふさわしい相手を考えたところ、真っ先に浮かんだのが稲葉だったという。今作は福山が作曲・編曲・プロデュースを担当し、稲葉が作詞を手がけた。過去に愛された記憶を思い返し、未来の光へと変えようとする壮大な歌詞が印象的だ。また、真っ暗な部屋に光が差し込んで、徐々に世界が明るくなるような力強いメロディと2人の歌が、「木星」のドラマチックさを増幅させている。
MVのトータルプロデュースは福山が自ら担当し、監督は本作のジャケットアートワークも手がけた写真家の嶌村吉祥丸が務めた。福山と稲葉はグレーのスーツスタイルでMVに登場し、抽象的な空間に円形の革張りソファが1つだけ置かれたワンシチュエーションで撮影。シンプルな演出だからこそ、2人の放つ緊張感や表現者としてリスペクトし合う親密な距離感が、歌だけでなく映像からも感じられる。
YOASOBI「アドレナ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場58位
YOASOBIの「アドレナ」は、放送中のテレビアニメ「花ざかりの君たちへ」のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲だ。原作の「花ざかりの君たちへ」は、1996年から2004年まで「花とゆめ」で連載された中条比紗也による少女マンガで、シリーズ累計1700万部を突破している。憧れの佐野泉に会うため、性別を偽って男子校へ転入した芦屋瑞稀を描く学園ストーリーは、日本を含むアジア各地でドラマ化されるほど、高い人気を誇っている。
「アドレナ」はまっすぐで不器用な恋心を描いた楽曲で、アップテンポかつコミカルなサウンドと目まぐるしい展開が重なり、恋の高揚感と迷走する様子が表現されている。メンバーのAyaseはこの曲について「主人公・瑞稀のストレートな恋心をアグレッシブに表現したパワフルなラブソングとなっております」とコメント。その言葉の通り、筆者はラストのフレーズ「きっと いや絶対に / 振り向かせて見せるから」について、好きな人に対する恋の決意表明を明快に表現しているように感じた。「花ざかりの君たちへ」に寄り添いつつも、今片想いをしている人の背中を押すエールソングとも言えるだろう。


