2026年の幕開けに合わせ、音楽ナタリーではさまざまなアーティストに「2025年に最も愛聴した3曲」を聞くアンケート企画を実施。回答者のジャンルごとに分けた全8本の記事を公開していく。今回は「バンド編」として、石野理子(Aooo)、井上真(水いらず)、大塚真太朗(生活の設計)、鈴木迅(Laura day romance)、たかはしほのか(リーガルリリー)、別府純(離婚伝説)が選んだ2025年の3曲を紹介する。
構成 / 石井佑来
石野理子(Aooo)
マルコム・トッド「Roommates」
ある日Instagramでおすすめとして表示されて気になって色々聴いて、一気に引き込まれたアーティストでした。日常的にはインディーポップやベッドルームポップを聴くことが増えてきていたので、嬉しい邂逅でした。特にこの曲は、ノスタルジックな気持ちにしてくれ、かつ曲の世界観に染めてくれるので、すべてを忘れて脱力したい時によく聴きました。気怠さが魅力の曲です。
リーガルリリー「星とそばかすとダイヤモンド」
リーガルリリーさんの楽曲に息づく、詞の世界観が好きです。
特にこの曲は、コンプレックスだった「そばかす」を星やダイヤモンドに見立てる、その温かくて美しい視点に驚かされました。
メロディが放つ儚さに惹きつけられ、繰り返し聴きました。
柔らかい言葉選びでありながら、その奥に潜む鋭い感性、その共存にいつもハッとさせられます。
ペク・イェリン「Another season with you」
もう何年も彼女の虜になっています。久しぶりにリリースされたアルバムでは、これまで根底にあったR&Bの枠を超えて、さらに音楽スペクトラムを拡張させていました。
その中でも特にお気に入りなのが、アルバムで唯一アップテンポで明るい印象を持つこの曲です。聴いていると心も足取りも軽くなるので、移動中によく聴いていました。
また、同じアルバムに収録されている「save me」も、音数やリズムの複雑さゆえに、曲の始まりと終わりで印象がガラリと変わる不思議な魅力があり、大好きな一曲です。
プロフィール
石野理子(イシノリコ)
2000年生まれ、広島県出身。赤い公園のボーカルとしての活動を経て、現在は石野、すりぃ(G)、やまもとひかる(B)、ツミキ(Dr)からなるバンド・Aoooのボーカルを担当。Aoooとして2026年5月より全国ツアー「Aooo Live Tour "RINGRING"」を行い、6月に2ndアルバムをリリースする。
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井上真(水いらず)
ジャースキン・フェンドリックス「Beth's Farm」
2025年に一番聴いた曲はどれかと問われれば、間違いなくこの曲を挙げます。
映画監督ヨルゴス・ランティモスの「哀れなるものたち」の劇伴を担当したことでも知られる、ロンドンのインディーシーンのニューヒーロー、ジャースキン・フェンドリックスの2ndアルバム「Once Upon a Time... in Shropshire」からの1曲です。
まず何より印象に残るのが、女性の声のサンプリングによるハーモニー。機械的なループでありながら、おそらく意図的にピッチを下げることで、かろうじて人間的な質感を残し、それが弦楽と相まって美しい響きをつくり出しています。
さらに、ボーカルが非常に個性的。知り合いのおじさんが場末のカラオケで歌っているみたいな、なんとも頼りないが、なんとも人間臭いボーカル。それによって、この曲は単なる美しさにとどまらず、ユーモアと哀愁と美しさが同時に立ち上がる、不思議な雰囲気になっています。
ヨルゴス・ランティモス監督、本人とエマ・ストーン出演のMVもおすすめ。
岡田拓郎「Mahidere Birhan」
創作はパッチワークだよ、なんて使い古されたクリシェを言ってくるドヤ顔に疲れたらこのアルバムを聴こう。このアルバムは、リファレンスの寄せ集めとしてのパッチワーク的創作法を越えた、深いテーマを持ったアルバムだと思います。
元・森は生きているの岡田拓郎さんのニューアルバム「Konoma」から1曲。アフロ民藝から着想を得て、アフロアメリカンの音楽に、日本人の自分がどう向き合っていくのかを考えたアルバム。曲名の「Mahidere Birhan」はエチオピアの政治家で作家のヘルイ・ウォルデ・セラシエの著作名から取っているらしい。
冒頭から入ってくるエチオピア風のサックスは異国性を感じさせつつ、ギターのスケールなど、全体としては演歌のような日本人に馴染みぶかい邦楽の印象も与えます。
そして、とにかくリズムが気持ちいい。ループでありながらセッション的でもあり、それが乗りやすくも飽きさせない、絶妙なリズムになっています。
日本とアフロアメリカンの要素を単純に組み合わせたのではなく、自身の死生観や日本の歴史観といった深い主題がこのアルバムには感じられます。
西欧・ブラックミュージックとの距離感に悩んでいる僕を勇気づけてくれる作品であったことは間違いない。もちろんリリースパーティーはいきます。
Pat's Soundhouse「Foothill March」
フィリピン人の作曲家・マルチインストゥルメンタリストのアルバム「Pat」から1曲。前作がラオスの伝統的な竹製口琴であるケーンを全面的に出した作品だっただけに、今回もその路線で行くのかと思いきや、まさかのインディロックからガムラン、ビーチボーイズまで(しかも45曲!)。
音楽的な引き出しの多さをとても感じるし、DTM的なギミックの使い方もうまい。何よりも伝統楽器を現代の音楽に自由に接続していく姿勢がめっちゃかっこいい。これが新しいニューエイジの形なのかもしれないですね。
ちなみに自己紹介文によると、ベーグルとタピオカミルクティーが好きで少し風変わりな人物らしい。日本に来たらぜひ一緒にタピオカ屋さんに行きたい。
プロフィール
井上真(イノウエシン)
2016年に結成された4人組インディロックバンド・水いらずのボーカル、ギター担当。「思想や概念から作曲を始める」「アジアの民族音楽の再解釈」「スタンドアローン・コンプレックス」といったスタンスを意識しながら、独自の音楽を生み出している。2025年8月に約5年ぶり2枚目のフルアルバム「水を捨てよ、内へ還ろう」をリリースし、話題を呼んだ。
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大塚真太朗(生活の設計)
スカート「スペシャル」
清涼感と諦観を、2分余りのロックンロールで描いて駆け抜ける。ラストにこの曲が待っているアルバムを去年はよく聴きました。個人的に毎日バスに乗るので「ああ今日もまた乗れてしまった」と思いながら揺られていたことを思い出します。PVも最高。
2025年は優勝もしたそうで、この場を借りてお祝いの言葉を。澤部さんCDデビュー15周年おめでとうございます!
ロン・セクスミス「Don't Lose Sight」
大好きなレコード屋さんのひとつ、武蔵小山はPET SOUNDS RECORDの森陽馬さんから教えていただくおすすめソングのリストにあった1曲。ロン・セクスミスは「Long Player Late Bloomer」という2011年のアルバムがフェイバリットなのですが、最新作でもそのメロディメイカーぶりが衰えていなくて素晴らしいです。
Labor Of Love「Theodore Shapiro(from "Severance")」
この記事は2025年発表の曲が望ましいとされているのですが、ごめんなさい! どうしても入れたくて2022年リリースの楽曲になってしまいました。Apple TV+オリジナルシリーズの「セヴェランス」というドラマ作品で冒頭にかかるインストゥルメンタル作品。これがなんというか、イージーリスニングやエレベータミュージックの感覚で聴ける内容でとっても心地よいんです。ドラマの内容は「仕事の記憶と私生活の記憶を分断された世界で、人間の自由と尊厳が静かに侵食されていく悪夢的オフィス・スリラー」(Chat GPT談)なのですが……。シーズン2が去年発表されたタイミングでシーズン1を観たので2025年の1曲として入れさせてください。サントラのレコード、欲しいなあ。
プロフィール
大塚真太朗(オオツカシンタロウ)
東京を中心に活動する2人組兄弟バンド・生活の設計のボーカル、ギター担当。ソウル、ソフトロック、パワーポップに影響を受けた音楽性が特徴で、これまで「季節のつかまえ方」「長いカーブを曲がるために」の2枚のアルバムをリリースしている。2026年2月に東京・青山 月見ル君想フにて「『長いカーブを曲がるために』リリース記念ワンマンライブ」を行う。
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鈴木迅(Laura day romance)
レックス・オレンジ・カウンティ「Take a Drive」
秋山璃月「ドアを考える人」
マック・デマルコ「Home」
2025年は人生でも個人的にトップレベルで忙しくさせていただきまして、そんな生活の中でなんとなく選んで聴いていた3曲を選びました。3曲とも自由な創造って感じがして、勇気をもらったり心が安らいだりしました。全てのアーティストの創造力をリスペクトしていい影響を受けて、僕もまた頑張ろうと思ってます。
プロフィール
鈴木迅(スズキジン)
3人組バンドLaura day romanceのギター担当。2018年2月に1st EP「her favorite seasons」で音源デビューを果たした。2025年2月に2部作のアルバムの前編にあたる作品「合歓る - walls」、12月に後編にあたる作品「合歓る - bridges」をリリースして話題を呼んだ。2026年3月から初の全国ホールツアー「Laura day romance hall tour 2026 "Fixing a hall"」を行う。
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たかはしほのか(リーガルリリー)
アレックス・G 「Louisiana」
特にお気に入りのポイントは、イントロから続くドラムの音です。ドラムが大きくて泣ける曲。
歌とコーラスのボリューム感も絶妙で、すごく遠くの景色を見ている気持ちになります。そして、歌詞もとても切ない。
音楽で絵を描くってこういうことなのかな?と思いました。
エセル・ケイン「Dust Bowl」
音楽を聴いて、ホラー映画を見ているときのように寒くなった経験をしたのはこの曲がはじめてだった。ゆっくりゆっくり、目に見えない、誰にも動かせないような重いものが優しく迫ってくる感覚になる。
Panchiko「Ginkgo」
秋、イチョウの葉っぱがくるくる回って落ちていく様子の中に、自分が飛び込んでいく感覚になる。秋のちょっと悲しくて寂しくて、記憶が過去に戻ったりするときに一緒に聴きながら散歩したい。
プロフィール
たかはしほのか
リーガルリリーのボーカルギター、作詞作曲を担当。2014年7月にリーガルリリーを結成。高校在学時より注目され、国内大型ロックフェスにも多数出演する。アメリカで開催された世界最大級の音楽フェスティバル「SXSW」への出演や、中国ツアーなど海外進出も果たすなど、精力的にライブとリリースを重ねている。2026年7月には、大阪・⼤阪城⾳楽堂にてワンマンライブを実施する。
リーガルリリー オフィシャルWebサイト
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たかはしほのか (@AveMaria_10)・X
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別府純(離婚伝説)
オリヴィア・ディーン「So Easy (To Fall In Love)」
「The Art of Loving」というアルバムに収録されている一曲。強さと柔らかさ、そういった二極にあるものが混在しているように感じます。語ることが野暮に思えるほど素晴らしい曲です。2025年何度も聴きました。
眞名子新「諦めな、お嬢さん」
この曲は「野原では海の話を」というアルバムに収録されていて、特に好きな一曲です。どこか遠くに行ったときによくこのアルバムを聞いていました。遠くに来たんだなと何故か実感できます。自分にとってそれはとても大事なことです。歌詞という表現の中でこんなにも優しく「諦めな、」と歌う曲に初めて出会いました。
ボン・イヴェール「Everything Is Peaceful Love」
「Perth」という曲でBon Iverに出会ってからそれなりの時が経ちました。この曲が収録されている6年ぶりのアルバム「SABLE, fABLE」にも「Perth」に出会った時のような喜びがありました。「Everything Is Peaceful Love」のミュージックビデオにはたくさんの犬猫、たくさんのなんだか笑えてしまう幸せそうな人が登場します。最高です。
プロフィール
別府純(ベップジュン)
埼玉県出身のギタリスト。2022年に松田歩(Vo)とともにバンド・離婚伝説としての活動をスタートさせる。2022年発表の楽曲「愛が一層メロウ」が話題を呼び、ソウルやAORを基調としたスタイリッシュなサウンドとキャッチーなメロディで注目を浴びている。2026年9月に初の東京・日本武道館公演を2DAYSにわたって行う。
離婚伝説
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