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ちゃんみなは自分の価値を自分で更新し続ける / 「最初はキュン!」に見る中島健人の自己演出力

再生数急上昇ソング定点観測
6分前2026年04月17日 9:05

YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで4月3日から4月9日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。

文 / 真貝聡

まずはこの週の初登場曲の振り返りから

今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、13位にtimeleszの「4分間だけ時間をください」が登場した。今作は4月29日にリリースされるニューアルバム「MOMENTUM」の収録曲。ここまでストレートな歌詞とメロディは現体制になって初めてだが、それをまっすぐに歌い上げる彼らの姿はこの曲にマッチしている。

15位にはBTSの「Hooligan」がランクインした。オルタナティブヒップホップのビートに乗せて、世界を駆け巡りながら自らの道を切り開いてきた彼らの旅路が描かれている。

18位に登場したのはNiziUの「Too Bad」。受け身の“いい子”だった自分から一歩踏み出し、主体的に未来を切り開いていく姿を表現した楽曲だ。

29位にはアイナ・ジ・エンドの「ルミナス - Luminous」がランクインした。テレビアニメ「『ONE PIECE』エルバフ編」のオープニング主題歌としてアイナ自身が書き下ろした楽曲。「革命道中 - On The Way」と同様にShin Sakiuraとの共作で、確固たる信念と揺るぎない決意をアイナはエネルギッシュに歌い上げている。

多種多様な新曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。

ちゃんみな「FLIP FLAP」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場27位

発売予定のニューアルバム「LEGEND」からの先行シングルとして2月に配信リリースされた「FLIP FLAP」。この楽曲は、ちゃんみなが歩んできたキャリアと重ね合わせることで、より鮮明な輪郭を持つセルフポートレートとして響くように思う。デビュー当初から賛否の激しい評価にさらされてきた彼女にとって、「Flip flap, like pancakes」(パンケーキをひっくり返す)というフレーズは、手のひらを返すように態度を変える他者や業界への痛烈な皮肉であり、実体験に裏打ちされた感情の表出なのだろう。

「She’s a genius / She looks like a goddess」(彼女は天才、彼女は女神のように見える)といった誇張された賛美も、単なる自己肯定ではなく、外部から与えられるイメージへのアイロニーとして機能している。「本当のとこは誰も見てない」「小指の爪くらい」といったラインが示すのは、消費される“ちゃんみな像”と実像との乖離であり、表層だけがひとり歩きする現代的なアーティストの苦悩である。

その一方で、攻撃的な言葉遣いは単なる反発ではなく、自身を守るための防御であると同時に主体的に自分を定義するための手段でもある。否定や偏見を受けてきたからこそ、あえて強い言葉で“CHANMINA”という像を誇張し、評価の主導権を自ら握ろうとしている。つまり本作は、周囲の評価に揺さぶられながらも、そのすべてを飲み込み、自分の価値を自分で更新し続けるという意思を描いた作品であり、ちゃんみなという存在の現在地と覚悟を鋭く映し出している。

中島健人「最初はキュン!」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場59位

中島健人が2月にリリースしたアルバム「IDOL1ST」の収録曲「最初はキュン!」は、恋愛の高揚感を“遊び”のフォーマットに落とし込んだポップでメタ的なラブソングである。作詞・作曲から振付まで本人が手がけている点も重要で、この楽曲における“キュン”という感情そのものが、彼の美学としてトータルに設計されていることがうかがえる。「じゃんけん」や「あっち向いてホイ」といったモチーフは、恋の駆け引きや偶然性を象徴し、関係性が軽やかに転がっていく感覚を生み出している。

一方で「出逢わなければ始まらない この物語」や「君はヒロインで 僕はヒーローなんだ」といったフレーズからは、自分たちの恋を“物語”として捉える視点が際立つ。「フィクションなの?」という問いかけには、その恋が演出されたものではないかという不安と、それでも信じたいという願いが同時に込められているのだろう。

さらに、ストロベリーやチョコレートといった甘いイメージの反復は、恋の初期衝動の純粋さと、どこか作り込まれた理想像の両面を浮かび上がらせる。歌詞・サウンド・振付が一体となることで、“キュン”という感情は単なる言葉ではなく、体験として立ち上がるのだ。楽曲全体として、恋愛のリアルとフィクションの境界を遊びながら、その曖昧さごと楽しもうとする作品であり、中島健人という表現者のセルフプロデュース力が色濃く反映された1曲と言える。

Dannie May「未完成婚姻論」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場95位

Dannie Mayの「未完成婚姻論」は、1月にリリースされたアルバム「MERAKI」のリード曲。3月末頃から、この曲を使ったショートアニメが多数作られてミーム化している。

その背景には、歌詞の“断片的に使える強さ”と“解釈の余白”がある。象徴的な「未完成なままでいい」は、恋愛にとどまらず自己肯定や未熟さの受容としても機能し、短尺動画やテキスト投稿に転用しやすい。また、「正しさなんていらない」といった価値観を揺さぶる言葉も、文脈を離れてなお成立するため、ネタと本音の双方で消費されやすい。さらに、“婚姻”という制度的で重い語と、“未完成”という不安定さの結びつきが強い違和感を生み、このギャップが拡散のフックとなっている。

なお、この曲は国内だけでなく韓国でもバイラルチャートの上位にランクインしている。これは「未完成でもいい」というメッセージが、完璧さを求められがちな社会的空気の中で共感を呼びやすいことに加え、日本語のままでも“雰囲気で理解できる言葉”として機能している点も大きいのではないだろうか。意味を厳密に把握せずとも感覚的に扱えるため、翻訳を介さず広がり、国境を越えて支持を獲得していると考えられる。

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