4年に一度のサッカーの祭典「FIFAワールドカップ」が6~7月にカナダ、メキシコ、アメリカの3カ国共同で開催される。音楽ナタリーでは2022年のカタール大会に引き続き、同大会に出場する日本代表チームの応援企画として、サッカーを愛するアーティストに理想の代表メンバーを妄想してもらう連載企画を展開中。今回は、4年前にも本企画に登場してくれた堂島孝平に再び“DOJIMA JAPAN”を編成してもらった。
※発言中に登場する選手名は敬称略で表記しています。
取材・文・撮影 / ナカニシキュウ
カタール大会の振り返り
僕、前回けっこう当ててるんですよね(笑)。3バック(※1)のフォーメーションで三笘薫(ブライトン / イングランド)と伊東純也(ヘンク / ベルギー)をウイングバック(※2)に置くっていう、それまでの代表では試していなかった形を本番で急にやったじゃないですか。確か、ドイツ戦の後半からでしたっけ。あのときは本当に鳥肌が立ちました。当時はサンフレッチェ広島のミヒャエル・スキッベ監督が1ボランチ(※3)2トップ(※4)の戦術を採用していた時期で、「それを日本代表チームに当てはめるとしたら」という僕のロマンを話しただけだったんですけど、意外にも予想として的中させてしまったという(笑)。しかも「伊東のポジションに後半から堂安律(フランクフルト / ドイツ)を入れて……」とかって言ってたのが、その後の森保ジャパンの起用法をけっこう言い当てていて。うれしかったっていうか、なんなんですかね。不思議な感覚になりました。この連載企画に登場されるほかのアーティストさんたちには、そういう快感が待っている場合があることをお伝えしたいです(笑)。
あの大会でドイツとスペインという強豪国を破って世界を驚かせたあと、最近ではブラジルやイングランドにも歴史的勝利を挙げましたよね。ひと昔前までは「絶対に勝てるわけがない」と思われていた国々に対して、「こうすれば勝てる」という道筋を森保一監督が示して、選手全員でそれを遂行した。それが結果につながったことが、確実に自信になっていると思います。10年前、20年前の日本代表と一番違うのは、そういった強豪国に相対するときの選手のメンタルなんじゃないかと思っていまして。もちろん気持ちの問題だけじゃなくて、多くの選手が早くから海外移籍をして高いレベルでプレーしていることも大きい。必ずしも海外リーグがJリーグより上だとは言いませんが、欧州のリーグで活躍していても代表に呼ばれない選手が何人もいるという今の状況はすごいことですよね。
※1. サッカーのフォーメーションはDF(ディフェンダー)を3人配置する3バックシステムと、4人配置する4バックシステムに大別される。森保ジャパンでは、カタール大会のアジア最終予選までは4バックシステムを基本陣形として採用していた。
※2. フィールドの左右に大きく開いて位置取り、攻守をサイドから支えるMF(ミッドフィールダー)のこと。試合を通して大きく上下動を繰り返すことになるため、スピードとスタミナ、クロス(※5)精度、守備力の高さなどさまざまな能力が複合的に求められる。
※3. 「ボランチ」はディフェンスラインの前方中央付近に位置取る守備的MFのこと。ポルトガル語で「ハンドル」を意味する語で、攻守のバランスを取りながら試合をコントロールする能力が求められる。これを1枚で担うフォーメーションを「1ボランチ」あるいは「1アンカー(※6)」、2枚の場合を「ダブルボランチ」などと呼ぶ。
※4. 「トップ」はセンターFW(フォワード)、つまりフォーメーションの頂点に位置取る選手を指す語。これが1枚のフォーメーションを「1トップ」、2枚の場合を「2トップ」などと呼ぶ。
※5. 主にピッチのサイドライン沿いの位置からゴール前へ供給されるパスのこと。多くの場合、直接シュートに結びつけることを目的に行われる。フィールドを横切るような弾道を描くことから「クロス」と呼ばれ、中央へボールを送る行為であることから「センタリング」とも呼ばれる。
※6. 「ボランチ」と「アンカー」はほぼ同じ意味。「アンカー」は「錨」を意味する英語で、どちらかと言うと物理的な守備位置そのものを指し、「ボランチ」は役割を示すニュアンスが強い。
オプション戦術としての0トップ
というわけで今回の“堂島ジャパン”の選出なんですが……まず大前提として、僕は今の森保ジャパンにそんなに文句がなくて。基本線となる3-4-2-1(※7)のシステムも人選も、現状でバッチリだろうとは思っているんですよ。それくらい付け入る隙のない盤石のチーム作りがされている中で、「もし何か変化をつけるなら」という発想と、“ロマン枠”で選んだメンバーがいる、という感じでしょうか。FIFAランキング的にも、日本はかつてよりも研究される立場になっていると思うんですよ。その研究に対して戦術をずらさなきゃいけない、騙さなきゃいけない場面が出てくるはずなので、そのためのオプションを僕なりに考えてみた感じですかね。
前回の成功体験を踏まえまして(笑)、「まだ現実の日本代表がやっていないけど、もしかしたらあり得るんじゃないか」という戦術を考えてきました。それは“0トップ(※8)日本代表”ですね。日本の代表選手にはそもそもウイングタイプ(※9)のタレントが多いんで、かねてから課題とされている“前線でどうやって相手の守備を崩して攻撃していくか”というところの1つの解答として、0トップはあり得るんじゃないかと。2010年の南アフリカ大会のとき、岡田武史監督が本田圭佑の1トップ起用をやったじゃないですか。あんな感じで久保建英(レアル・ソシエダ / スペイン)をトップにして、彼が中盤へ降りてきて空いたスペースに三笘や伊東が飛び出していくようなイメージです。
もちろん、3バックのフォーメーションでは上田綺世(フェイエノールト / オランダ)の1トップを絶対にやってほしいんですよ。彼の1トップは本当に素晴らしいと思いつつ、そのセカンドトップ(※10)を担ってほしい南野拓実(モナコ / フランス)の出場がケガで難しそうということもあって、それならば0トップはどうだろう?という発想ですね。ちなみに南野はケガが大丈夫そうなら絶対に呼びたい選手なので、サブメンバーのところにカッコで書かせていただきました。
※7. DFが3人、守備的MFが4人、攻撃的MFが2人、FWが1人のフォーメーションで、近年の森保ジャパンの基本陣形として採用されている。なお、サッカーのフォーメーションは守備→攻撃の順番で人数を表記するのが一般的で、日本においてはGK(ゴールキーパー)の「1」は“言うまでもないもの”として省略するのが通例。
※8. 形の上ではセンターFWの位置にいる選手が、FWではなくトップ下(※11)のような役割を担う戦術を俗に「0トップ」と呼ぶ。
※9. センターFWの両サイドに翼のように開いて位置取る攻撃の選手を一般的に「ウイング」と呼ぶ。得点能力はもちろん、ドリブルスピードやパス精度に長けた選手が担うことが多い。
※10. 明確な定義はないが、センターFWと組んで攻撃の仕上げを担う役割の総称として使われる語。2トップの一角を指すこともあれば、シャドーストライカー(※12)やトップ下、まれにウイングを指すケースもある。ここでは「シャドー」とほぼ同じ意味で使われている。
※11. 主に4-2-3-1システムなどで、センターFWの背後に位置取る攻撃的MFのこと。主に得点が期待されるシャドーとは異なり、トップ下は攻撃陣全体のコントロールが主に求められる。そのことから「司令塔」などとも呼ばれる。
※12. 主に3-4-2-1システムなどで、センターFWのややうしろに影のように位置取る攻撃的MFのこと。その名の通りストライカーとして得点を挙げることが求められるポジションで、MFというよりほぼFWと考えていい。短く「シャドー」と呼ばれることが多い。
中盤~前線は有機的に機能してほしい
4-3-3(※13)のフォーメーションは、森保監督もカタール大会の予選でやったことがありますよね。だからあり得なくはないと思うんです。その場合にポイントになるのがアンカーの選手なんですけど、本来ここに入るであろう遠藤航(リヴァプール / イングランド)はケガの状態が微妙であると。そうなると佐野海舟(マインツ / ドイツ)ですね。最近の代表戦でのパフォーマンスも素晴らしいですし、アジリティが1人だけ違うっていうか。体の強さや危機察知能力もそうなんですけど、相手がトラップ(※14)したときの“もう1歩踏み出す足”に違いを感じます。エンゴロ・カンテ(フランス代表MF)みたいな感じですよね。彼はインサイドハーフ(※15)でやるのもいいかなと思ってるんですけど、ここではアンカーにしました。
そのインサイドハーフに置いた鎌田大地(クリスタル・パレス / イングランド)は、もう完全にリンクマン(※16)。バランスを見ながら、隙あらば久保を追い越していってもくれるでしょうし……あとはこないだ、堂安のインサイドハーフ起用が所属クラブの試合であったんですよ。「おやおや?」と思って(笑)。サイドのイメージが強いですが、彼は人を使うのも人に使われるのもうまいし、ものすごくチームプレーができる選手。中でも久保との連携がよくて、ふと気付くと2人のポジションが入れ替わってたりするのをよく見ますよね。三笘と伊東とかもそうですけど、そうやって有機的に入れ替わりながら相手を攪乱してチャンスメイクする攻撃を見たいなと思って、堂安をここに入れてみました。もちろんミドルシュートも期待できますし、大舞台への強さも抜群のものがあるので。
本当はここを守田英正(スポルティング / ポルトガル)にしようかとも思ったんですけど、三笘、久保、伊東、堂安あたりが前線にそろうのって、なんか夢があるじゃないですか。考えながら「この並び、めっちゃいいな」ってニヤニヤしちゃいました(笑)。急遽やるにはリスクの高いフォーメーションではありますが、ハマらなければ3バックに移行してもいいのかな、とか。いずれにせよ中盤の3枚はプレス(※17)耐性が高くないとできないと思うんで、ゲームを作りながらワンタッチでさばけて、プレッシャーに強いタイプを選んだ感じです。
※13. DFが4人、MFが3人、FWが3人のフォーメーション。どちらかというと攻撃重視の陣形とされる。
※14. 飛んできたボールを足や胸などで止めるプレーのこと。「罠」を意味する英語で、獲物を罠にかけるような動作であることが由来とされる。
※15. 4-3-3や4-1-4-1システムなどで、中央やや前方に位置取る攻撃的MFのこと。ボランチとともにゲームを作る役割から、FWとともに得点を挙げる役割、相手ボールを奪う守備までが幅広く求められるポジション。
※16. 攻守をつなぐ(リンクする)役割のこと。単にDFから受け取ったボールを前線に送るだけではなく、相手ボールを奪って攻撃につなげたり、攻撃陣の連動性を高める潤滑油のような働きをする選手を指す。
※17. 守備側のチームがボール保持者へ近づいて行動を制限し、あわよくばボールを奪おうとするプレーのこと。「プレッシャー」ともいう。
では、最終ラインは?
ビルドアップ(※18)段階で、久保が降りてきてスペースができたところに飛び込むプレーが描きやすいというところで、DFにはパス出しに優れている伊藤洋輝(バイエルン / ドイツ)と冨安健洋(アヤックス / オランダ)の2枚がいたらいいかなと思いました。守備時の対人の強さはもちろんですけど、攻め手としても。さらに、左サイドバックには鈴木淳之介(コペンハーゲン / デンマーク)を置きます。攻撃時には前の三笘が作るスペースをうまく使ってもらいながら、守備的にもすごく機能してくれると思うし……好き勝手なことを言いますけど、中に入ってボランチ的な役割もやれる気がするんですよ。そこから下がってきて伊藤、冨安との3センターバックみたいになるイメージもあったりして。
で、右のサイドバックには“ロマン枠”として中野就斗(サンフレッチェ広島)を選びました。僕、現状の代表でこの位置にほぼ定着している菅原由勢(ブレーメン / ドイツ)がすごく好きなんですけど、ウイングバックとしてもセンターバックとしても機能することや、大舞台への度胸などを買って中野を推したいなと。彼はフィジカルとスピードを兼ね備えていますし、ロングスロー(※19)も持ってるんですよね。ロングスローって世界のトップクラスではあまり見られない戦術なので、ここぞの奇襲としてあり得るんじゃないかと。関根大輝(スタッド・ランス / フランス)や橋岡大樹(ヘンク / ベルギー)もめっちゃいいんですが、サンフレッチェサポーターとしての夢を託して(笑)、ここは中野で。
GKに関しては、4年前だったらそれこそ大迫敬介(サンフレッチェ広島)を迷わず選んでいましたが、やっぱり今の代表守護神に定着している鈴木彩艶(パルマ / イタリア)が本当に素晴らしくて。もちろん大迫にしても、もう1人選んだ小久保玲央ブライアン(シントトロイデン / ベルギー)にしても活躍する姿は十分見えるんですけど、彩艶の、なんて言うんだろうな……圧っていうんですかね。“名プレーヤーの佇まい”があって、単に背丈が大きいというだけではない、「ゴールが小さく見える」ぐらいの領域にまで達している印象があります。
※18. 攻撃を組み立てる際に、GKやDFから短いパスをつないで前線にボールを運ぶこと。対になる概念としては、ロングボール(長距離のパスで一気に前線の選手にボールを渡す戦術)や、カウンター(相手の攻撃を食い止めたところから一気に攻撃に転じること)などが挙げられる。
※19. スローインの際にゴール前付近にまでボールを投げ入れる長距離スローのこと。フリーキックやコーナーキックに匹敵するチャンスメイクの手法として、近年Jリーグなどでも採用するクラブが増加している。高校サッカーなどにおいては長らくポピュラーな戦術として広く使われてきた。
サブメンバーの選考について
サブメンバーに関しては、まずは遠藤が間に合う前提で、彼にはMFではなくDF枠で活躍してもらうほうがいいのかなと。僕は前回のこの企画でも遠藤を3バックの中央に置いてるんですけど、やっぱり若手時代にセンターバックをやっていたイメージがずっと抜けなくて。決して大きくはない体で対人の強さを見せる姿が、ホントにカッコよかったんですよ。ファビオ・カンナヴァーロ(元イタリア代表DF)的なカッコよさというか……あと、守田は絶対に呼んでほしい選手ですね。彼がいれば中盤は盤石だと思うので。それと、これもずっと言ってますが相馬勇紀(FC町田ゼルビア)。今のJリーグではほとんど無双状態というか、飛び抜けた存在だと思っています。左ウイングが主戦場ですが、右もできるし、ウイングバックやシャドーもやれる。プレースキック(※20)の精度も高いですし、プレーの幅がとても広い選手ですよね。
あとは、松木玖生(サウサンプトン / イングランド)。なんか、かつての本田圭佑のような空気感を感じる選手というか。久保のところに置いて0トップをやってもらってもいいし、堂安のところにも入れるし、なんならアンカーも気合いでやれる(笑)。後藤啓介(シントトロイデン / ベルギー)は、上田綺世以外で1トップの候補を考えたら彼かなあというところですね。やっぱり若い選手にあの大舞台で揉まれてほしい思いもあるし……という意味では、中島洋太朗(サンフレッチェ広島)もそうです。僕は彼を“広島のデ・ブライネ(ケヴィン・デ・ブライネ / ベルギー代表MF)”と呼んでるんですけど、あのパスの技術とセンス、発想は歴代の日本人プレーヤーの中でもトップクラスじゃないかと思うので、どうか選ばれてほしい。これは本当にお願いします、って感じです(笑)。
※20. フリーキックやコーナーキックなど、プレーが止まった状態からキックでリスタートするプレーのこと。基本的に動いているボールを蹴る競技であるサッカーにおいて、止まったボールを蹴るプレーにはまた違った技術が必要となる。
現実の森保ジャパンに期待すること
繰り返しになりますけど、僕は本当に今の森保ジャパンは盤石だと思っているんですよ。北中米大会では「悲願のベスト8を」と言わず、ベスト4まで行ってほしいです。もちろん優勝を狙ったうえで、ですけど。ただ、これまでのサッカー日本代表って、期待と結果が反比例してきたところがあるじゃないですか(笑)。2006年のドイツ大会のときなんて「歴代最強」と言われていて、実際にそろったメンバーもものすごかったわけですけど、結果的には1勝もできなかった。そういう歴史もあるので、今度こそ「強い強いと言われていたら、本当に強かった」パターンを観たいですよね。期待しています。
※カッコ内の所属クラブは2026年5月11日(月)時点
プロフィール
堂島孝平
1976年2月22日大阪府生まれのシンガーソングライター。1995年2月にシングル「俺はどこへ行く」でメジャーデビューを果たす。1997年には7thシングル「葛飾ラプソディー」がアニメ「こちら葛飾区亀有公園前派出所」のテーマソングに起用され全国区で注目を集めた。ソングライターとしての評価も高く、KinKi Kids(現 DOMOTO)、藤井フミヤ、山下智久、Sexy Zone(現 timelesz)、PUFFY、THE COLLECTORS、藤井隆、Negicco、アンジュルムなど数多くのアーティストへの楽曲提供やサウンドプロデュースでも手腕を発揮している。2026年2月に20枚目となるオリジナルアルバム「PIN」をリリースした。


