YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで4月17日から4月23日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングでは、21位にアメリカ・ロサンゼルスのシンガーソングライター、オリヴィア・ロドリゴの「drop dead」が登場した。MVはオリヴィアが豪華絢爛なフランスのベルサイユ宮殿内を駆け巡る姿を通して、新たな恋に落ちたばかりの高揚感と狂気的なエネルギーを描き出している。
23位には、はろける feat. 初音ミク, 重音テトの「だ・し・て」がランクインした。アクションRPG「ゼンレスゾーンゼロ」のキャラクター・シーシィアをイメージして制作された楽曲で、ゲーム本編では治安局の捜査官である彼女が“囚人になる”という意外な設定が話題だ。
37位に登場したのは、Hoshimatic Projectの「BEEP BEEP」だ。Hoshimatic Projectは星街すいせいがプロデュースするアイドルプロジェクトで、メンバーは星街すいせい、ときのそら、夏色まつり、アキ・ローゼンタール、桃鈴ねね、博衣こより、大空スバル、常闇トワ、風真いろはの9人。ポップで疾走感あふれるサウンドに乗せて、恋のもどかしさを描いた楽曲になっている。
珍しく洋楽アーティストが上位に初登場した今週は、下記の3曲をピックアップする。
Official髭男dism「スターダスト」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場14位
Official髭男dismの「スターダスト」は、堤真一が主演を務めるTBS系日曜劇場「GIFT」の主題歌として書き下ろされた楽曲だ。このドラマは孤独な天才宇宙物理学者が車いすラグビーの弱小チームと出会い、心と体をぶつけ合いながら仲間や家族との絆を築いていく“再生の物語”である。
歌詞にある「余り物」という感覚は、自分の居場所や価値を見失った状態を象徴しているが、“あなた”との出会いによって火花が生まれ、それがやがて“スターダスト=光”へと変わっていく。この構造は、バラバラだった人々が関わり合う中で絆を育んでいくドラマ「GIFT」の物語と重なる。車いすラグビーを通じて再生していく登場人物たちのように、この楽曲もまた「欠けたままの自分でも、誰かと関わることで意味を持てる」という希望を提示するのだ。「スターダスト」は名もなき存在の生き様に光を当てるドラマのテーマを、丁寧に昇華した楽曲と言えるだろう。
キタニタツヤ「火種」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場26位
現在放送中のテレビアニメ「日本三國」は、核大戦、天災、悪政などから革命が起こり、文明が崩壊して3つに分裂した近未来の日本を舞台に、主人公の三角青輝が国の再統一を目指すというストーリー。そのオープニングテーマとしてキタニタツヤが書き下ろしたのが「火種」だ。
この曲は胸の奥にくすぶる衝動や意志を“火”として捉え、それを絶やさず燃やし続けようとする覚悟を描いているように思う。誰もが「はじめの火」を忘れてしまう現実が示される一方で、その原点に立ち返り、自らの内側にある熱を信じることの重要性が浮かび上がる。嵐や向かい風、摩擦といったモチーフは、進むほどに困難が増していく人生の比喩であり、その中でも消えずに残る火種は意志や情熱の象徴なのではないかと感じる。
また「黒く炭化した感情の内側で燻っている」という描写からは、一度冷めた思いさえ完全には消えず残り続けることが示唆される。その小さな火に再び息を吹き込み、最後まで燃やし尽くそうとする姿勢は、結果ではなく“燃え続ける過程”そのものに価値を見出していると読み取ることができる。逆境すら力へと変える意志が核にある点も印象的だ。つまり今作は不確実な未来や困難の中でも、自分の内にある衝動を信じて進み続けることを肯定する“意志の賛歌”なのだ。
AKASAKI「シャケナベイベー」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場40位
「シャケナベイベー」はカンテレ・フジテレビ系で放送されているテレビアニメ「マリッジトキシン」のエンディング主題歌。AKASAKIが地上波アニメの主題歌を担当するのはこれが初めてとなった。
この曲の主人公は自らを「子供みたい」と認識しながらも相手に強く惹かれ、理性より感情が先行してしまう。「ダウト」「アウト」や「恋が渋滞」といった表現からは、関係の不安定さや停滞もにじむ。それでも「大好き」と繰り返す姿には、危うさと純粋さが同居している。
また、「残念賞」から「1等賞」へと変化する流れは、不完全な関係でも2人なりの幸福を見出そうとする意志の表れだろう。歪んだ標識に従う描写は、正しさではなく“自分たちの選択”を貫く覚悟とも読める。未熟で不器用だからこそ強く燃え上がる、恋のエネルギーとその危うい輝きを捉えた1曲だと感じる。
今回ランクインしたのは「マリッジトキシン」のさまざまなシーンが使用されたコラボMV。この映像では、「シャケナベイベー」がキャラクターや物語と重なり合い、この“間違いだらけでも突き進む恋”というテーマがより鮮明に立ち上がっている。


