YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで5月8日から5月14日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングでは、当連載の4月4週目でリバイバルヒット中であることを取り上げたサカナクションの14年前の楽曲、「夜の踊り子」がさらに順位を上げて、今週ついに1位にランクインした。
5位にはVACHSSの「Replace to be」が登場した。VACHSSはにじさんじに所属する、葛葉、叶、加賀美ハヤト、不破湊、剣持刀也、夢追翔による6人組ユニット。今作は夢追が作詞作曲を手がけた自己紹介ラップで、メンバーそれぞれの魅力を的確に捉えたリリックが話題に。MVのコメント欄には、「夢追翔はたぶんメンバーのことを顕微鏡で見たことがある。解像度が桁違い」「VACHSSの全オタク『夢追が一番推しのこと分かってる』」など、彼の詞を称賛する声が多く上がっている。
47位にはAzariの「Scapegoat(feat. ロス)」がランクインした。これはアクションRPG「ゼンレスゾーンゼロ」に登場する“氷の処刑人”の異名を持つキャラクター、プロメイアをイメージして作られた楽曲。MVはそのダークで危うい魅力をより際立たせる映像となっている。
76位に登場したのは、2015年7月に20歳という若さで亡くなった、椎名もたの「少女A」だ。2013年10月に発表されたこの曲は、2020年代に入ってTikTokでミーム化したことをきっかけに海外でも人気が拡大。今年5月11日には、ボカロオリジナル曲として史上初となるYouTubeでの2億回再生を達成し、これが話題になって今回初のチャートインに至った。
新旧入り交じるネット発のヒットソングが存在感を放った今週は、下記の3曲をピックアップする。
超特急「ガチ夢中!」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場22位
超特急の「ガチ夢中!」は、5月13日にリリースされた23rdシングルの表題曲だ。楽曲制作には、超特急の音楽プロデューサーを務める新井弘毅に加え、GAKUとキャサリンが参加。振付は、akaneとkazuki(s**t kingz)が手がけた。
今作のMVは“夢中になること”の楽しさと熱量を表現した、前向きなエネルギーに満ちた映像に仕上がっている。応援団に扮したメンバーが“小人サイズ”となって、何かに打ち込む人々のそばで全力のエールを送るというユニークな設定で、“超特急が超特急を応援する”というメタ的な構図もユーモラスだ。コミカルな演出と勢いのあるダンスシーンが交互に展開し、楽曲の“トンチキ感”と本気の熱さを鮮やかに両立。見ているうちに自然と背中を押されるような、幸福感あふれるMVとなっている。
aespa「WDA(Whole Different Animal)(Feat. G-DRAGON)」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場37位
aespaの「WDA(Whole Different Animal)(Feat. G-DRAGON)」は、5月29日にリリースされる2ndフルアルバム「LEMONADE」からの先行配信曲。壮大なシンセベースと重厚なフックが印象的なヒップホップダンスナンバーで、フィーチャリングゲストとして参加したG-DRAGON(BIGBANG)のラップが加わることによって、aespaとの強烈なシナジーを生み出している。
今作のMVは、現実の自分とアバターという“もうひとりの自分”が共存するaespaの世界観を、さらに深化させた映像だ。暗く無機質な空間で繰り広げられるパフォーマンスを軸に、47秒付近では鏡像のように現れる “もうひとりの自分”が本人の動きと重なり、オリジナルとコピーの境界を曖昧にしていく。さらに2分31秒以降には歪んだ道路や標識のカットが差し込まれ、2分39秒付近では人影が不自然に落下することで、現実そのものが崩れていくような不穏さを強調。重厚な映像美と緊張感のある演出によって、Whole Different Animal=別の存在へと変貌していく感覚を鮮烈に描き出している。
Ado「春に舞う」「今日、好きになりました。」バージョン
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場45位
5月12日に配信リリースされたAdoの「春に舞う」は、5月4日に最終回を迎えたABEMAの恋愛リアリティ番組「今日、好きになりました。クライストチャーチ編」の主題歌として書き下ろされた楽曲。今回ランクインした映像は、「今日好き」の本編映像を用いて構成されたスペシャルバージョンだ。
「今日好き」の名シーンと重なることで、「春に舞う」が持つ“恋のきらめき”と“切なさ”がより鮮やかに浮かび上がるこの映像。制服姿の男女10人が教室で出会い、それぞれが少しずつ心の距離を縮め、最後にはニュージーランドの美しい海をバックに結ばれていくまでが描かれており、わずか3分17秒の映像ながら、まるで1本の青春映画を観たような満足感を味わえる。
印象的なのは、ドラマチックな展開だけでなく、視線が交わる一瞬や、すれ違う距離感といった“恋が始まる前の空気”を丁寧に切り取っている点だ。Adoの力強くも繊細な歌声が、その曖昧で尊い感情をより鮮明に映し出し、恋のはかなさと希望が同居している。


