anoがオフィシャルファンクラブ「CLUB DENTAL MOUSE」の会員限定公演として、自身初となる全編弾き語りライブ「天国未遂 Vol.1」を開催した。7月10日に東京・東京キネマ倶楽部、7月12日に大阪・大阪市中央公会堂で行われたこのライブから、本稿では1日2回行われた東京公演の第2部の模様をレポートする。
これまでのライブでもアコースティックアレンジで演奏を披露することはあったが、アコースティックギター1本のみで、全編をたった1人で届けるライブはanoにとって今回が初めて。新たな挑戦をひと目見ようと、会場は期待に胸を膨らませたファンで満員となった。
幻想的かつ非日常的でありながらプライベートな空間
ステージ中央には白いレース生地が円形に敷かれ、その上には同じくレースで覆われた椅子やフロアランプ、マイクスタンドが配置されている。さらにレースで作られた花のような装飾が椅子を囲むように添えられ、幻想的かつ非日常的でありながらプライベートな雰囲気を感じる空間が作り上げられていた。
開演時刻を迎えると、入場SEもなく無音のまま、真っ白な衣装に身を包んだanoがステージ脇のベランダから登場。さっとステージへ降り立ち、椅子に腰掛けてアコースティックギターを抱えると、「楽しんでってください。よろしゅう」とささやくように挨拶し、おもむろに「涙くん、今日もおはようっ」を弾き始めた。スポットライトを中心としたシンプルな照明の中、緩急を付けながらギターをストロークし、むき出しの歌声を響かせるano。普段は観客も一緒に手を振って盛り上がるこの曲だが、この日は誰もが静かに彼女を見つめ、その歌声に耳を傾けていた。
続く「普変」は、疾走感あふれる原曲から大幅にイメージを変え、切ないバラードへと生まれ変わっていた。弾き語りという音数が削ぎ落とされたスタイルによって、anoのボーカルが持つ感情の機微がダイレクトに伝わる。そしてラストのサビで、彼女はギターを止めてアカペラで絶唱。その張り詰めた緊張感漂うパフォーマンスを、観客は息をのんで見守った。
制作途中の新曲をサプライズで初披露
「僕の曲って本当に激しかったり、打ち込みを使ってたり多様なので、普段のライブに来てくれてる人でも新鮮に聞こえると思いますし、僕も楽しんでいこうと思います」と意欲を示したanoは、ここから「この世界に二人だけ」「ハッピーラッキーチャッピー」と弾き語りアレンジが映える曲を連発。普段の熱狂的なライブとはまったく異なる、静まり返った会場に対し、anoは声の礫をぶつけるように「腐ってるのはお前の方だから うまく笑えない」と歌い上げる。その気迫に圧倒されたのか、曲が終わったあとも観客は一瞬沈黙し、少し遅れて大きな拍手が湧き起こった。
続く「愛してる、なんてね。」は、ギターとピアノによるアコースティックバージョンの音源がすでに存在しているが、この日の演奏はそれともまた異なる仕上がりに。声を震わせながら静かに、しかし強い感情を込めて発された歌は、弾き語りライブならではの空気を作り出していた。さらにanoは、制作途中の新曲をサプライズで初披露。作りかけの熱量をそのまま届けるようなパフォーマンスは、バンドメンバーなしで1人きりでステージに立つ弾き語りライブだからこそ実現できたものだろう。
そしてここから「KILL LOVE」「Past die Future」と、本来は激しいバンドサウンドが特徴の楽曲を連発。anoはギターを激しくかき鳴らしながら、魂を燃やすようなエモーショナルな歌声を響かせる。その激情は「Past die Future」の終盤に向けてどんどん加速し、anoは力を絞り出すように「何処へだって逝けるまだまだ」と絶唱。1人きりでバンド編成にも劣らない熱量を生み出してみせた。
「年月を経て、こうやって1人で歌を届けられてよかった」
ここまで、ひっそりとした静かな空気が流れるステージでありながら、生命力あふれるパフォーマンスで観客の心を揺さぶってきたano。「ホントお試しなんですよね。この『天国未遂』って企画は。だからVol.2はどうしようかなって感じで。手応えやみんなの反応を見て決めようかなと思いますけど……どうでした?」と客席に問いかけた彼女に、大きな拍手が送られる。温かい反応を受け取ったanoは「今日、1部と2部をやって、アコギが好きになってきて。めっちゃ楽しいです。僕はめちゃくちゃ命を燃やしながらステージに立ってるから、1日2公演やるのは本当に大嫌いなんですけど(笑)、思った以上にたくさんの人が来てくれて、チケットが外れちゃった人もいるし、みんなの思いもすごく受け取りました」と充実した表情を見せた。
「5、6年前に、それこそこういう暗い部屋で1人でギターを持って作った曲です」と曲紹介をしたanoは、「まだまだペーペーなんだけど、年月を経て、こうやって1人で歌を届けられてよかったなと思います」と感慨に浸りつつ「SWEETSIDE SUICIDE」を、静かに、そして優しく歌唱する。息遣いまで生々しく伝わるほどの繊細さで「YOU&愛Heaven」を歌ったあとで、ラストナンバー「ミッドナイト全部大丈夫」へ。弦をミュートしながらギターを鳴らして語りかけるように歌い始め、サビでは伸びやかな歌声を響かせた。そして曲終盤のブレイクで、「大丈夫じゃない日ばかりです。でも僕は、こうやってライブをしている時間だけは大丈夫になれてる、そんな気がして」と観客へ優しく語りかけたanoは、「僕がかけられる呪いをかけます。今夜だけは全部、全部大丈夫になるよ」と祈るような言葉を送り、ゆっくりとギターを爪弾きながら何度も「大丈夫」とささやくように繰り返し歌った。
「anoでした! ありがとうございました!」と明るく元気にお辞儀をする彼女へ、フロアからは惜しみない拍手が送られた。これまで自身のライブ空間を、自分とファンにとっての“絶対聖域”と呼び、大切に守り抜いてきたano。この日の公演を成功に収めた彼女は今、弾き語りライブという新たな“絶対聖域”を手に入れたのかもしれない。
セットリスト
anoオフィシャルファンクラブ「CLUB DENTAL MOUSE」会員限定 弾き語りライブ「天国未遂 Vol.1」2026年7月10日 東京キネマ倶楽部
01. 涙くん、今日もおはようっ
02. 普変
03. この世界に二人だけ
04. ハッピーラッキーチャッピー
05. 愛してる、なんてね。
06. 新曲
07. KILL LOVE
08. Past die Future
09. SWEETSIDE SUICIDE
10. YOU&愛Heaven
11. ミッドナイト全部大丈夫


