YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで8月7日から8月13日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、57位にFRUITS ZIPPERの「1,2,3,FOOOOUR」が登場した。今作は作詞・作曲をGRe4N BOYZ、編曲をnishi-kenが手がけた、東武鉄道とのコラボソングだ。MV撮影は東武東上線の新型車両90000系をはじめ、埼玉県の川越駅や東武動物公園などで行われた。映像内でメンバーが実際に貼ったステッカーは、今も川越駅や東武動物公園で見ることができる。
64位には、「強風オールバック」「寝起きヤシの木」などで知られるボカロP、ゆこぴの「将棋一番!(feat.歌愛ユキ)」がランクインした。MVでは、歌愛ユキがプロ棋士における最高段位の九段として登場し、熱戦を繰り広げる。棋譜制作は日本将棋連盟の宮嶋健太が協力しているので、実際の対局さながらの駆け引きにも注目してほしい。
65位に登場したのは宝鐘マリンの「きゃぴ」だ。8月11日のMV公開から5日間で100万再生を突破し、現在も勢いを伸ばしている。
アイドル、ボーカロイド、Vtuberなど、女性ボーカルによる楽曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
TAKARA「Time is money」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場1位
BMSG×ちゃんみなのガールズグループオーディション「No No Girls」に参加し、強烈な存在感を見せたASHAとKOKONAが、約1年半の準備期間を経て結成したユニット・TAKARA。初のオリジナル曲「Time is money」は、ASHAとKOKONAの鋭くタフなラップの掛け合いを軸に、異なる魅力を持つ2人の表現を1つに束ねた力強いヒップホップナンバーだ。
それぞれのラップのキャラクターが際立っており、セルフプロデュースというスタイルも含め、2人の意志によってTAKARAが形作られていることが伝わってくる。ASHAとKOKONAが自ら書いた歌詞からも、「Time is money(=時は金なり)」というタイトルが想起させる効率重視の価値観を覆し、これまでに費やしてきた時間や、ここに至るまでの遠回りこそが自分たちの「宝」であると肯定する強い意志が感じられる。
MVでは忍者と花魁というモチーフを用いて、キュートさとスワッグさを掛け合わせたコンセプトを映像化。鮮やかな髪色やネイルを取り入れたファッションも印象的で、音楽だけでなくビジュアル面からもTAKARAの個性を打ち出している。
Ado「モンストロ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場13位
Adoの「モンストロ」は、公開中の実写映画「ブルーロック」の主題歌として書き下ろされた楽曲で、Giga & TeddyLoidが作編曲を、ryo(supercell)が作詞を担当。Adoの「踊」「唱」に続いてGigaとTeddyLoidがタッグを組んで制作した今作は、ラテン調のリズムを軸に跳ねるビートと攻撃的なサウンドが響く、躍動感あふれる1曲だ。
スペイン語で「怪物」を意味する「モンストロ」のタイトルからも伝わるように、歌詞では自分の奥底に眠る“怪物”を呼び覚ます様子が描かれている。他人の評価や常識にとらわれず、自らの欲望と衝動を信じて前へ進もうとする姿勢は「ブルーロック」のストライカーたちの姿と重なる。そこへAdoの変幻自在なラップと圧倒的な歌唱が加わり、内側から湧き上がる熱量が、体を突き動かす疾走感へと変わっていく。
MVでは近未来都市を舞台に、超高速のカーチェイスや火花が散るクラッシュなど、スリリングなシーンが次々と繰り広げられる。楽曲の激しさと映像のスピード感が呼応し、音だけでなく視覚からもそのエネルギーを体感できる。なお、Adoは7月に神奈川・日産スタジアムで開催された「Ado STADIUM LIVE 2026『Ao』」にて同曲を初披露。そのライブ映像もYouTubeで公開されているので、MVと合わせてチェックしていただきたい。
葛葉「王道」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場38位
葛葉の「王道」は、YOASOBIのAyaseが作詞・作編曲を手がけた楽曲だ。前半はラウドなギターと高速ビートを軸に、勢いのあるリズムに乗せて言葉が畳みかけられ、サビでは開放感のあるメロディが広がっていく。終盤に向けて高揚感を積み重ねていく起伏に富んだ展開が、葛葉の持つ攻撃性と華やかさを際立たせている。
一方、葛葉自身を「王」として描いた歌詞には、現在の立ち位置への自負だけでなく、そこに甘んじることなく前へ進もうとする姿勢も感じられる。「そう 俺が歩く道 これが王道」という最後のリリックが示すように、自らの信じる道を突き進み、未開拓の獣道を王道へと変えていこうという意思を力強く打ち出したこの曲。MVでは、「王者の苦悩」と「これからの意思表明」を、望月けいのイラストとCymoの映像によって描写。表舞台の輝かしい側面だけでなく、その裏側にある葛藤や覚悟まで映し出すことで、葛葉の新たな一面を浮かび上がらせている。


