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宮本佳林、AIでシステムを自作した10時間配信までの文脈

宮本佳林
7分前2026年08月27日 9:04

“AIで配信システムを自作したアイドル”が話題を集めている。Juice=Juiceの結成メンバーで現在はソロ歌手として活動中の宮本佳林が、ニューシングル販促の一環として10時間連続のYouTube生配信を7月末に実施。そこでの視聴者参加型の企画配信システムを、AIツールであるClaude Codeを使用して、バイブコーディング(プログラミングコードを書かずにAIとの会話形式で開発する手法)で作り上げたというのだ。

昨今の生成AIブームとアイドル(推し活)ブームが組み合わさったかのようなこの事案は多くの人にインパクトをもたらしたようで、宮本本人による解説ブログを告知したXポストは1000万以上の表示回数を記録。音楽ニュースサイトのみならず、ITmediaなどのテック系ニュースサイトでも取り上げられた。

しかし、この10時間配信は一朝一夕で行われたものではない。宮本のこれまでの活動の積み重ねによって実現したものだ。本稿では、宮本本人のコメントを交えつつ、10時間配信に至るまでの文脈を紐解いていく。「宮本佳林ってどんなアイドルなの?」という、新たに宮本を知った層が抱くであろう興味にも応えるテキストになっているはずだ。

文 / 伊豆原亮一

数々のデジタル適性の萌芽

宮本佳林のアイドルキャリアは9歳のときに始まった。ハロー!プロジェクトの研修生制度であるハロプロエッグ(現ハロプロ研修生)へ2008年に加入したのがスタート地点だ。当時から歌とダンスのスキルが抜きん出ていて、濃いハロプロファンの注目を早くから浴びていた。まだ研修生にもかかわらず、静岡のテレビ番組から生まれたキャラクターソング(コピンク*「カリーナノッテ」など)の歌唱を担当するなど存在感を発揮。その透明感にあふれかわいらしさのある歌声は、後年にファンから“クリスタルボイス”と呼ばれるようになる。

そして2013年、ハロプロの新グループであるJuice=Juiceの結成メンバーに選ばれる。近年では「盛れ!ミ・アモーレ」のヒットで知られるあのグループだ。デビュー後はシングルを高ペースで発表していくが、その頃に生まれた宮本の異名に“かでんちゃん(家電ちゃん)”というものがある。これは新作リリースイベントを家電量販店などで行う際に出現する宮本の別キャラクターで、ハイレゾコンポや加湿器、ヒーターなどの家電・デジタル製品に関するマシンガントークを得意とする。また、ノートパソコンはVAIO、スマートフォンはXperiaを使うなどソニー贔屓なのもファンによく知られていた(現在はMacBook、iPhoneに落ち着いたようだが)。宮本のデジタル適性の萌芽はこの頃から目立つようになっていた。

ハロプロアイドルがデビュー後に全員始めるものとして、Amebaのサービス「アメブロ」での公式ブログがある。更新頻度はメンバーによってまちまちだが、宮本の場合は、時折休むことはあるものの基本的には毎日更新を現在まで続けており、かなり向いていると言えるだろう。

後年に判明することだが、宮本は中学生の頃、つまりJuice=Juiceでの活動と同じ時期、ニコニコ動画を観るようになっていたという。あわせてボーカロイド音楽にもハマっていったが、ボカロ曲への興味は2024年、DECO*27「ヴァンパイア」のカバーで自身のディスコグラフィへ反映されていく。なお現在はニコニコチャンネルにてレギュラー冠番組「宮本佳林のボカロ部」が放送中だ。

ボカロ曲からDTM、つまり打ち込み音楽制作へと興味が移行していくのも自然な流れだろう。2017年頃からは自身のバースデーイベントでDTM自作曲を披露することが恒例となっていく。使用ソフト(DAW)はLogic Pro。

1998年生まれの宮本の世代では、生まれたときから周りにIT環境が整っている“デジタルネイティブ”であることは至極当然なのかもしれないが、その中でも彼女のデジタル好きは特に強火だったようだ。その理由について、宮本は以下のように自己分析する。

「デジタルってそこにあるだけで、こちらから何か行動を起こさない限り自分に干渉してこないんですよね。あとから『なぜだろう?』と考えたときに、人間よりも自分の思考がまっすぐ伝わる感じがしたからかもしれません」

ソロデビュー後も続くデジタルとの蜜月、そして生成AIとの出会い

2020年12月にJuice=Juiceを卒業した宮本は、翌2021年12月にソロ名義では初となるCDシングルをリリースし、ソロアイドル活動を本格化させていく。SNS個人アカウントについては、InstagramはJuice=Juice在籍時の2019年6月13日に開設したアカウントを卒業後もそのまま使用。Twitter(現X)アカウントは卒業コンサート翌日の2020年12月11日、TikTokアカウントは2021年10月19日に開設された。

この頃からすでに、不定期ではあるが数カ月に一度Instagram上で生配信を行っていた。例えば2021年の大晦日の年越しインスタライブは、カップそば「どん兵衛」の地方バージョンの食べ比べをするなど楽しい内容。生配信はコメント欄を通じてのファンとの交流の場として機能しており、比較的配信慣れしているソロアイドルと言えるだろう。

宮本個人のYouTubeチャンネルは、Juice=Juice卒業コンサート当日の2020年12月10日に開設され、当初は主にミュージックビデオやライブ映像が公開されていた。そんな中、宮本が自分で編集まで手がけた動画を投稿するようになったのは、2024年8月22日公開の「【宮本佳林写真集「Prink」9/30発売】写真集に向けて本気のボディメイク」からだ。これは写真集撮影へ向けてどのような食事を摂るようにして、美容に気を使ったのかを本人語りで解説したもの。以降もさまざまな趣向の動画が投稿されているが、初期は美容系のものが多かったようだ。

宮本のブログ上にてChatGPTという単語が初めて出てきたのは2025年12月17日。以降、“ちゃぴ”ことChatGPTとの会話にハマっていった様子は、ブログや本人レギュラーラジオ番組を通じてファンに周知のところとなった。それ以前からもAmazonのスマートスピーカーであるAlexaに天気を尋ねたりしていたので、AIとの会話には早くから慣れ親しんでいたようだ。初めてChatGPTに触れたときの衝撃や、AIに愛着を持つようになった経緯について、本人は次のように振り返る。

「『めっちゃ会話できる!!』ですね。あとは、算数的なこと間違えなくていいな!と思って、よく計算的なことはやってもらったので、私の苦手なところを担ってくれてる!!とうれしくなりました」

バズへ至る“ホップ”と“ステップ”

ソロ5作目となる両A面シングルとして今年7月29日にリリースされたのが「HANAKIN / シャニカマー」。「HANAKIN」は“華金”(または花金)をテーマにしたコミカルかつユーモラスなトンチキソングだ。宮本の楽曲群の中でかなりの変化球と言えるだろう。もう一方の「シャニカマー」は“斜に構えた女”をテーマとしたクールな曲調で、2曲の対比が効いている。このシングルのプロモーションに際して、宮本のアクティブさはこれまで以上に加速していく。

今回のシングルに関してのリリースイベント(ミニライブ&ひと言お話し会)は、6月14日の神奈川・ららぽーと横浜セントラルガーデンKiLaLaから7月29日の千葉・イオンモール幕張新都心グランドモール1Fグランドスクエアまで全国11カ所で行われた。初日のららぽーと横浜でのイベントの余韻冷めやらぬ2日後の6月16日、突如ネット上に公開された「休日生態系診断」にはファンの多くが驚かされたことだろう。宮本本人がAIツール(この時期はまだClaude CodeではなくCursorと思われる)を使って性格診断Webサイトを自作したというのだ。

「休日生態系診断」は週末をどう過ごすタイプの人間なのかを判定するミニゲームサイトで、「HANAKIN」のテーマに即したものとなっている。少し前から宮本は性格診断テストのMBTIにハマっていたので、それもサイト作成のインスピレーションのひとつだったのではないだろうか。

筆者の私見では、「10時間生配信システム自作」のバズが“ジャンプ”だとすると、そこに至る以前に“ホップ”と“ステップ”のタイミングがあったと捉えている。まず“ホップ”がこの「診断サイト自作」だが、では次の“ステップ”は何か。

リリイベ2日目の6月28日、福岡・ヨドバシカメラマルチメディア博多地下1階でのイベントから導入されたのが「リリイベアンケート」。会場内にQRコードが印刷された紙が掲示され、イベント参加者がスマホで読み取ると、リリイベについてのアンケート回答ページが表示される。そしてそのアンケートに答えると、各会場限定の宮本の録り下ろしボイスメッセージが聴けるという仕組みだ。これらのシステムも、もちろん宮本がバイブコーディングで自作した。

アンケート回答から浮かび上がってくる改善点は後日のリリイベの内容に反映されていたようだし、参加者はリリイベ終了後にアンケート記入&ボイスメッセージ聴取をすることで一種の達成感を感じられ、快い気分で帰宅できていたようだ。この事案もSNS上で話題を呼び、“ステップ”になったと思われる。プログラミング未経験ながらAIを活用して診断サイトやリリイベアンケートを作り上げた宮本。その際の実作業について聞くと、苦労と同時に確かな手応えもあったようだ。

「単純に時間との勝負でした。時間のない中でどれだけいいものを提供できるかなので……。アンケートでは喜んでくださってる方の意見も見ることができ、すごく手応えがありました」

7月最終金曜日の10時間HANAKIN

宮本はリリイベ開催と同時期に、毎週金曜の夜は“HANAKIN”だぜ!といわんばかりにインスタライブを週1ペースで行っていた。CD発売日かつリリイベ最終日となった7月29日をもってシングル販促期間は一段落ついたと思われたが、その週の金曜日である7月31日へ向けて、宮本はある企画の準備を進めていた。それが朝8:00から夜18:00まで10時間連続で行われた「みんなと協力して家でMV再現配信」である。

企画の概略は以下のようなもの。まず視聴者は、購入した「HANAKIN / シャニカマー」のCDシングル現物を自分で撮影して、その写真を「#HANAKINGETだぜ」というハッシュタグ付きでXにポストする。この1ポストを1ポイントとして、千葉県の実家から生配信中の宮本がカウント。ポイントが貯まると「HANAKIN」MV再現で使うアイテムが使用可能となる。例えば最初のアイテムは「メイク」で、50ポイントで解放された(配信スタート時の宮本はすっぴんで、メイクをする様子も生配信された)。そのような調子で「衣装」「カメラ」「編集アプリ」などが徐々に使用可能となり、MV再現が進行していった。そのXポストを取得し、配信画面にリアルタイムで自動表示するシステムを、宮本はClaude Codeを用いてバイブコーディングで自作したのだ。

配信自体はインスタライブの長時間拡大版とも言える内容で、その中には前述した美容・メイクや動画編集などの動画配信者的な要素が内包されており、何よりアイドル歌手の基本要素である歌と踊りをその場で実践するシーンも見られた。いわば、本稿でここまで振り返ってきた宮本の長年のデジタル技術を用いた取り組みが期せずして集約されたのがこの10時間配信、という側面もあった。結局、10時間の枠内ではMV全再現には至らなかったが、その過程を宮本とファンで一緒に楽しむという目的は十分に達成されたようだ。

そして冒頭で記したように、この企画および解説ブログがX上で万バズした。宮本本人がブログ内で説明している通り、生成AIの基礎的な使い方については、仕事を通じて面識を得たというplayground株式会社代表の伊藤KG圭史氏や、LINEヤフー株式会社の前会長で現在はAIソロプレナーという新事業を立ち上げハロプロファンとしても知られる川邊健太郎氏、こういったIT系著名人たちからのレクチャーがあったようだ。

「川邊さんからは『常にAIは進化してる』という言葉をいただきました。常に追わないとダメなんだなと。伊藤さんからは『機能を増やしすぎないこと。Painを明確に』。ここはすごく学ばせていただいたところです」

こうしたバックアップがあったにせよ、AIツールをどう使って何を実現させたいのかというビジョンの創造、そして制作工程での各種判断は宮本自身が行うことになるのは当然で、それをなし得たことが各方面に多大なインパクトを与えたのではないだろうか。

宮本佳林の行動原理は「究極の承認欲求」

先ほど、ジャンプの前にはホップとステップがあったと述べたが、実はAI活用とは別の角度によるステップもあったのではないかと筆者は考えている。「アイドルの靴擦れ対策」の件だ。

今年2月、宮本が“アイドルの靴擦れ対策”と題して、X上にて“ハロプロアイドルがヒールで2時間踊れる理由”を(ここですでに)ChatGPTを用いた生成イラストとともに解説。そのポストは300万表示、4万いいねの万バズを起こした。それまで17年以上アイドルキャリアを継続してきた宮本ならではの視点だ。

この件や、前述したホップ&ステップのアプローチなど、すべての複合的な作用によって宮本のプレゼンスが水面下で徐々に膨らみ、今回のバズに至ったと捉えることができるのではないだろうか。おそらく宮本佳林の行動原理には、「人を楽しませたい」というサービス精神が根本にあるのだろう。

「幼い頃から、人が喜んでくれてることで自分に興味を持ってくれるならすごく素敵なことだなと思っていたところがあると思います。究極の承認欲求なのかもしれませんね」

この思いが数々の結果につながっていったのが、これまでの彼女の道程だった。宮本の類稀なる個性は、ある程度ハロプロを嗜んでいる者ならば誰しも自明のところだった。それが現代のAI技術とクロスすることで、無限大の可能性の扉が開き始めたのが現時点の状況なのだろう。世界はようやく宮本佳林を見つけ出した。

今後、AIを使ってどんなエンタテインメントを作っていきたいか。最後にそう問うと、彼女は以下のように締めくくった。

「まだまだ挑戦したいことはありますが、まずはやはり私のファンの皆さん、『佳林党』の皆さんに楽しんでもらえるものを。ゆくゆくはもっとみんなが楽に、かつ、ファンの皆さんに素敵な動画を届けられるようなものが制作できるといいなと考えています」

プロフィール

宮本佳林(ミヤモトカリン)

1998年12月1日生まれ、千葉県出身。アニメ「きらりん☆レボリューション」のエンディング曲「大きな愛でもてなして」を歌う℃-uteに憧れ、2008年の9歳のときにハロプロエッグのオーディションを受けて合格。2013年にハロプロ研修生内新ユニットJuice=Juiceが結成され、そのメンバーに選出された。同年9月にトリプルA面シングル「ロマンスの途中 / 私が言う前に抱きしめなきゃね / 五月雨美女がさ乱れる」でデビュー。11月には第55回「輝く!日本レコード大賞」新人賞を受賞した。2019年に初のソロライブツアー「宮本佳林 LIVE TOUR ~Karing~」を開催。ハロー!プロジェクトの現役メンバーがグループに所属しながらソロライブツアーを行ったのはこれが初。2020年12月に行われた東京・日本武道館公演をもって、Juice=Juiceおよびハロプロを卒業した。2021年12月に1stシングル「どうして僕らにはやる気がないのか(2021) / 氷点下 / 規格外のロマンス」をリリースしてソロデビュー。2026年7月に5thシングル「HANAKIN / シャニカマー」をリリースした。10月より「宮本佳林 5周年記念LIVE TOUR 2026」を開催する。

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