堂本剛の単独公演「平安神宮 奉納演奏2026」が、9月19~21日に京都・平安神宮にて開催された。堂本が平安神宮で奉納演奏を行うのは今年で15回目。この記事では節目となった公演のうち、初日9月19日の模様をレポートする。
境内にステージを設けるため、天候の影響を受けざるを得ない奉納演奏だが、この日の京都は晴天とまではいかないまでも、雲間から青空が覗く天気に。開演時刻を迎える頃には、涼やかな風が吹き、秋虫の鳴き声が会場にこだまするなど、野外ライブにはうってつけの“好天”に恵まれた。
弾けるシャボン玉とともに披露された「Heart of Rainbow」
虫の鳴き声とおりんのまろやかな音、波音が入り混じるSEとともに、静かに夜の帳が下り、それを合図に宮司が舞台へ。宮司が大麻を手に修祓を行うと、たちまち一帯の空気がピンと張り詰めていく。奉納演奏への準備が整うと、薄明かりに照らされた大極殿の影がくっきり浮かび上がり、スティーヴ エトウ(Per)の太鼓が穏やかに公演の幕開けを告げた。続けて、オーディエンスが耳にしたのは、ザッザッザッという白砂利を踏み締め移動する足音。下手から上手へと移動していくその音に耳を澄ませていると、スモークで覆われたステージに現れた堂本が、本殿に向かって深く一礼をする。そして、おもむろにマイクスタンドの前についた彼は、最新曲の1つである「空は繋がっているから」を歌い始めた。
原曲はダイナミックさやエモーショナルさを打ち出したサウンドが印象的だが、ここで披露されたのは平安神宮という場所にふさわしい、静謐さを帯びたオリエンタルなアレンジ。紫のスパンコールをたっぷりあしらったトップス、光沢感のある桜色のボトムと羽織りをまとった堂本は、自らがつづった言葉を噛み締めるように歌を紡ぎ、オーディエンスの心に寄り添っていく。クライマックスでは朱色の柱が特徴の大極殿がライトアップされ、雅やかなムードを醸成した。
レインスティックの流麗な音を合図に導かれたのは、244 ENDLI-x名義で2008年にリリースされた「Say Anything」。ステージと大極殿の間から水柱が上がり、紫と青のライトが交差しながら艶やかな空間を作り上げる。「Love is like a river(愛は川のよう)」「Like the way I love you / I want to love everything(私があなたを愛するように、私はすべてを愛したい)」といった、堂本がBONNIE PINKとともにつづった歌詞が、ある種の祈りを伴いながら伸びやかに広がった。懐かしい1曲でファンを驚かせたあとは「Heart of Rainbow」へ。ほのかにオートチューンをかけたボーカルが、コーラスのような厚みを伴い響く中、シャボン玉が舞台の下から空に向かって舞い上がる。歌詞に登場するビー玉のように、堂本の柔らかな歌声に乗せて、虹の色彩を放つ無数のシャボン玉。風向きが不意に変わり、それらが観客の頭上で弾けながら浮遊すると、その美しくもはかない景色に観客は思わずため息を漏らした。
メドレーに刻んだ「平和へと鳴らす鼓動」
誰もが口をつぐみ、沈黙を守る中、巨大なドラムヘッドのみの打楽器を抱えスティーヴ エトウが堂本の横へ。ステージの上手と下手で炎が上がる演出とともに彼が素手で表面を叩くと、重厚なビートが平安神宮一帯を飲み込み、オーディエンスを深淵へと誘う。続いて異様なまでの緊張感を、リバーブがたっぷりかかったChica(Cho)のコーラスがほぐし、ここから始まるメドレーへの呼び水となった。
毎年奉納公演ではテーマを設け、選曲や演出を練っているという堂本。昨今の災害や地球上で起きている戦争を憂う彼が、今年掲げたテーマは「平和へと鳴らす鼓動」だった。シンガーソングライターとして産声を上げた2002年から現在に至るまでに発表してきた楽曲たちを、テーマに基づいてメドレーとしてまとめ上げ、オーディエンスに自身の思いを伝えた。メドレーを構成したのは、「縁を結いて」「いとのとち」「HYBRID FUNK」「勃」「MYND」「これだけの日を跨いで来たのだから」「LOVE VS. LOVE」「ヒ ト ツ」「ソメイヨシノ」「赤い鼓動のHeart」「Machi....」「PINK」「Everybody say love」「カケタ オイカケタ」「きみがいま」「あなたへ生まれ変われる今日を」「Rain of Rainbow」の17曲。書かれた時代も、ジャンルも個々に異なるが、通底するのは「愛(love)」を歌い、「生」を肯定する楽曲であること。また堂本は曲の“おいしいところ”をつなぐのではなく、今伝えたいメッセージを打ち出すべく全曲にアレンジを施し、再構築。そのテーマゆえ、エモーショナルなパフォーマンスが想像されるが、堂本はことさら感情的に歌い上げるのではなく、丁寧に一言一句を噛み締めるように歌い、時折ギターを奏でる。うちに秘めた情熱を自らが発するすべての音に込め、竹内朋康(G)を筆頭に、旧知の仲であるバンドメンバーとともに、高い集中力を保ちながら継ぎ目なく披露した。そこに歌詞やサウンドに合わせてレーザー光線、噴水、照明が加わり、ステージ上のミュージシャンたちが奏でる音に文字通り彩りを添えていく。
堂本が故郷・奈良の景色を歌った「縁を結いて」で始まったメドレーは、2021年のリリース以降、ライブでたびたび披露されている「Rain of Rainbow」でクライマックスへ。それまで声を張り上げて歌うことはなかった堂本だが、「すべての差別はもう終わるから 愛が闇を飲み込んでいくからさ」というフレーズが登場するこの曲では、感情をあらわにするような絶唱でオーディエンスの心を激しく揺さぶった。メドレーの余韻を残しつつ、始まったのは堂本と竹内によるギターセッション。そこからバンドメンバー1人ひとりのプレイをフィーチャーするブロックへと連なっていく。これまで堂本および.ENDRECHERI.におけるセッションはファンクが軸となっていたが、今年はロックやワールドミュージックなどの要素を帯びた不可思議なアンサンブルに。次々とつながれていく音のバトンを最後に受け取ったのは主役である堂本。胸がすくようなダイナミズムを作り出したのち、彼は奉納演奏のラストナンバーである「ASTRA BEAT」を届けた。膨大な水柱が大極殿の前に上がり、紫のレーザー光線がゆっくりと行き来する中、大小さまざまなシャボン玉がステージの周りをたゆたう。野外という開放感も相まって、強烈なカタルシスが会場全体を包み込んだ。
たった今を精一杯生きましょう
トーク好きの堂本だが、「平安神宮 奉納演奏」においてMCを行うのは、すべての演目を終えたあと。夢から覚めたような表情でステージを見つめる観客と向き合った彼は、まずは来場したファンを労い、「自分の人生にこれだけの長いご縁をいただけていること、感謝の思いであふれています」と口にする。続けて今年の奉納演奏のテーマが「平和へと鳴らす鼓動」であることを紹介したのち、「今、地球上で天災の影響を受けながら前に向かって進んで生きてらっしゃる方もたくさんいらっしゃいますし、争いもたくさん起きていて、その環境の中でも未来へと力強く進む方々がたくさんいらっしゃいます。自分たちができること、その中に“祈る”ということがあると僕は思っています。自分には何にもできないとか、何をしても意味がないとか、そういうことは決して言わないで、思わないでください。祈る心、思う心というのは、必ず平和へとつながっていくと思っています」と、言葉に詰まりながらも混迷する世界情勢へと思いを馳せた。
ここで恒例の演者と観客による一斉拝礼へ。それぞれが祈りを捧げたのち、堂本はリスペクトを込めてバンドメンバーたちを紹介していく。1人また1人と送り出すと、改めて平安神宮、来場者、スタッフへの感謝の言葉を口にした。「自分の人生の中で奉納演奏の時間というのは、今日まで生きてきたということと、今まで生きてきたこと、これからも生きていくことを強く感じさせていただく時間で、大切な場所だと思っています」と噛み締め、「僕たちはいつか天へと昇ります。それをこの地球の上で理解し合って、愛し合えたらと思っています。何かをあきらめたらそこで終わってもいきます。世の中というのは本当に目まぐるしく変わっていくものですが、皆さんは平和への思いをあきらめずに信じ続けて実行していただきたいなと思っています」「皆さんもご自身の現在地を、たった今を精一杯生きましょう」と丁寧に述べる。今年の奉納演奏のテーマと重なるメッセージを観客が受け止める中、堂本の口から漏れたのは「来年もいらっしゃいますか?」と宮司に問われたエピソード。あまりに早い開催告知にほっこりするオーディエンスを見つめながら、彼は「今日という日をありがとうございました。最高に幸せな1日でした」と花が咲いたような笑みを浮かべ、名残惜しそうに客席に向かっていつまでも手を振り続けた。
なお、「平安神宮 奉納演奏2026」の最終日9月21日公演の様子は「mellow-fan」にてアーカイブ配信中。
セットリスト
「平安神宮 奉納演奏2026」2026年9月19日 平安神宮
01. 空は繋がっているから
02. Say Anything
03. Heart of Rainbow
04. メドレー
・縁を結いて
・いとのとち
・HYBRID FUNK
・勃
・MYND
・これだけの日を跨いで来たのだから
・LOVE VS. LOVE
・ヒ ト ツ
・ソメイヨシノ
・赤い鼓動のHeart
・Machi....
・PINK
・Everybody say love
・カケタ オイカケタ
・きみがいま
・あなたへ生まれ変われる今日を
・Rain of Rainbow
05. セッション
06. ASTRA BEAT


