RAYが9月23日、東京・Veats Shibuyaにて、琴山しずくの卒業公演「RAY ONE-MAN LIVE #MOD_moment」を開催した。
琴山は2021年7月3日にデビュー。歌って踊るアイドルとしての活動だけでなく、毎朝SNSでシュールな投稿をする「#ライヴコット」を続けたり、アート作品の個展を2度も開催したりと、彼女ならではの個性、表現を磨き続けてきた。そうして5年超にもわたる活動をRAYに捧げてきた琴山が卒業を決断した理由は「一番大切にしているRAYのライブで100%の力を出せる間に卒業したい」から。その言葉を体現するように、琴山はこの日すべての力を出し切るパフォーマンスを繰り広げた。
早くも頬を濡らすメンバー
定刻過ぎ、ステージ袖からメンバーによる「おー! RAY!」という気合い入れの声がフロアまで響き渡る。その掛け声を合図に「Overture」が流れ、メンバーが現体制最後のステージに姿を現した。琴山が歌い出しを務める壮大なシューゲイズナンバー「尊しあなたのすべてを」でライブの幕が開けると、続いて歪んだギターと嵐のようなドラムが交錯する激情ハードコア「星に願いを」で場内のギアが一段階引き上げられる。曲中のポエトリーリーディングのパートで、琴山はまっすぐ前を見つめながら「結んではほどけ / それでも続く / 物語の中で」と、静けさの中に強い意志を込めた言葉を紡いだ。さらに5人は「Bloom」「おとぎ」「しづかの海」「わたし夜に泳ぐの」を立て続けに披露。ステージ上には早くも頬を濡らすメンバーの姿が見えた。
最初のMCで、紬実詩から「コット(琴山)の卒業ライブということで、この日が来ちゃいましたね」と振られた琴山は「はい。来ましたー」と、いつも通りの自然体なトーンで返し、場を和ませる。続けて今の心境を尋ねられると「こんなにたくさんの人が入ってくれてうれしいな。ありがとう。まだまだ始まったばかりだから。まだまだですよ? 泣いてもいいんだからね?」と、慈愛に満ちた表情でフロアへ優しく語りかけた。
あの日掲げた「moment」を改造・再構築する
疾走感あふれるシューゲイザーポップ「世界の終わりは君とふたりで」でパフォーマンスが再開すると、きらびやかなギターサウンドに呼応するようにフロアから全身全霊のMIXが巻き起こる。続く「オールニードイズラブ」では、琴山がステージ前方ギリギリまで身を乗り出して熱唱。また「天体」では琴山と月海まおが背中合わせになり、絆を確かめ合うようなシーンを見せるなど、琴山の多彩な魅力が次々と観客の心をつかんでいく。「ATMOSPHERE」「Bittersweet」を経て突入した「starburst」のイントロでは、フロアからメンバー1人ひとりのコールが飛ぶ中、琴山は自身の名が呼ばれると「みんな大好きー!」と、飾らない言葉で愛を叫んだ。
続いて披露されたのは、本公演のタイトルにも掲げられた「moment」。そもそも「moment」とは、琴山が新メンバーとしてお披露目された2021年のデビュー2周年記念ワンマンライブのタイトルであり、同公演のアンコールで初披露されたメモリアルな楽曲だ。当時「moment」の言葉には「歴史的分岐点」という意味が込められ、momentすなわち今この瞬間が、将来から見ていい選択、分岐点だったと思えるようにと願って2周年記念ワンマンが開催された。つまり、RAYの5年前の歩みについて答え合わせをするべく、あの日掲げた「moment」を「MOD」=「改造・再構築」して見せるステージこそが「#MOD_moment」。二度とは戻らない“今この瞬間”を噛み締めるように、5人はこの楽曲が生むセンチメンタルな情景を感情豊かな歌声で描いた。
琴山の旅立ちを祝うアンセム
「moment」を終えたあとのMCでは、琴山が春音友希へ唐突に「私との印象に残っている思い出はある?」と問いかける。春音は「一番衝撃を受けたのは、CLUB CITTA'でライブしたときのこと。楽屋からステージまで移動するときに、しずくちゃんが先陣を切って階段を降りながら『ハッピー、ラッキー、なんたら……』(アンミカが寝る前に唱えるというおまじないの言葉)って、1段ずつ呟いていた」と明かす。すかさず紬から「9カ月くらいいて、コットとの思い出がそれ?」と鋭いツッコミが入ると、場内は温かな笑いに包まれた。
フロアの空気が和らいだところで、ラストブロックに向けて月海がマイクを握り「この5人のことを一瞬たりとも見逃さずにいてください。おい、みんな! 琴山しずくのことが好きか!? あたいも大好きだ!!」とフロアを煽る。こうしてライブは「バタフライエフェクト」から怒涛のフィナーレへと突入。「読書日記」では、琴山がすべてを絞り出すようなロングトーンを響かせ、「アップサイドダウン」では内山結愛が歌詞をアレンジして「忘れちゃうなんて絶対やだー!」と感情を炸裂させる。また「星座の夜空」では琴山のソロパートに合わせて有志のファンによる赤いサイリウムが一斉に点灯し、フロア一面が鮮やかな赤色に染め上げられた。
感動の余韻が広がる中、琴山は「これで最後の曲になります! みんな最後まで感情爆発させようね!」と声を上げ、アイドル人生の最後に「フロンティア」を投下。ステージとフロアの境界線が溶け合うアンセムを通して、メンバーとファンは琴山の新たな旅立ちを祝福した。
メンバーから琴山へのメッセージ
すべての演目を終えたあと、ファン一同からの花束と、紬が代読する形で卒業証書が授与された。これには、常に太陽のような笑顔でグループを照らし続けてきた琴山の瞳にも大粒の涙が浮かぶ。涙でぐちゃぐちゃになりながらの写真撮影を経て、メンバーから琴山へそれぞれメッセージが贈られた。
春音は「正直な気持ちで言うと、もっと一緒にこの5人でやりたかった気持ちがあります。ほぼ毎日のようにみんなに会って、みんなが悲しいと私が悲しいし、みんながうれしいと私もうれしいくらい、みんなが大切な存在になりました。だから、しずくちゃんはこれからも絶対に幸せでいてほしいし、しずくちゃんが幸せだったら私も幸せだから、幸せでいてね」と別れを惜しみつつエールを送る。紬は「コットの卒業が決まってから、瞬間瞬間をさらにさらに大切にしようと思って、コットが幸せで、RAYをやり切れたと思ってくれていたらうれしいなって思いながら、いつもライブをしていました。4年間ずっとありがとう。コットがいてくれたからRAYに入ってよかったな、楽しかったなと思っています。これからもコットの笑顔を絶やさずに、たまには見せてね」とこれまでの感謝を伝えた。
月海まおは「しずくちゃんは、もうこんな人に出会わないだろうってくらい本当にまっすぐで、太陽のような存在。一緒にやってきたこの4年間はめちゃくちゃ大切です。これからも、しずくちゃんがRAYのことが大好きでいられるように、みんなで守りたいです。これが私の決意表明です」とまっすぐに宣言。内山は「しずくちゃんが卒業するという結末がわかっていたとしても、しずくちゃんと出会う未来を何度でも選びたいし、出会えなかった人生を考えたほうが恐ろしいくらい、しずくちゃんと出会えた人生でよかったな、この5人でRAYになれてよかったなって本当に思っています。いつの間にか泣き虫なイメージがついてしまっている内山ですが、ずっと泣いていたらみんなが不安になってしまうので、これからは泣きません……なるべく。しずくちゃんが大好きなRAYを大好きなまま守るために、自分が何ができるか、まおとみこちと友希ちゃんと、力を合わせてたくさん考えて、光り続けたいです」と涙ながらに前を向いた。
「ライブが好きになったのはみんなのおかげ」
最後に、メンバーからの思いを受け取った琴山がこの場を締めくくる。「一番伝えたいのは、私がここまでアイドルを続けてこられたのは、RAYを続けてこられたのは、メンバー、運営さん、家族、そしてみんなのおかげということです。本当にありがとう」と語った彼女は、「私はよく『ライブが大好き』って言っているんだけど、ライブが好きになったのはみんなのおかげ。ライブをしたときにみんなが全力で来てくれるのがうれしくて、私も全力で返したいと思って、その全力同士が会話では生まれない気持ちの掛け合いのようになっていって、ライブがただ歌って踊るだけじゃない大好きなものになりました。私はこの5年間、間違いなくRAYに捧げてきました。なので、悔いなし。やり切りました。本当にありがとう!」と清々しい笑顔でアイドル人生に別れを告げた。
5人は「私たち、RAYでした!」と挨拶し、ステージをあとに。Veats Shibuyaのフロアには、琴山との別れを惜しむ拍手が、いつまでも惜しみなく鳴り響いていた。
セットリスト
「RAY ONE-MAN LIVE #MOD_moment」2026年9月23日 Veats Shibuya
01. 尊しあなたのすべてを
02. 星に願いを
03. Bloom
04. おとぎ
05. しづかの海
06. わたし夜に泳ぐの
07. 世界の終わりは君とふたりで
08. オールニードイズラブ
09. 天体
10. ATMOSPHERE
11. Bittersweet
12. starburst
13. moment
14. バタフライエフェクト
15. 読書日記
16. アップサイドダウン
17. 星座の夜空
18. フロンティア


