ずっと真夜中でいいのに。が10月10、11日に奈良・平城宮跡歴史公園 中央区朝堂院 特設野外会場でワンマンライブ「LEGACY ZOMBIE LABO 『文禍伝雷』奈良・平城京」を開催した。この記事では10日公演の模様をレポートする。
和楽器を取り入れた特別なアンサンブル
「LEGACY ZOMBIE LABO 『文禍伝雷』奈良・平城京」は今年2月から行われたアリーナツアー「坐・ZOMBIE CRAB LABO」の続編にあたる公演。舞台は今から約1300年前、日本の中枢を担っていた奈良の都・平城京だ。「ZOMBIE CRAB LABO」で“カルキノス(カニ)の化身”こと、“伝説のロリータ船長”のACAねによって失われた知性や記憶を再生したかに見えたゾンビたちは、実は平城京の時代、異国からの帰路で誰の記憶にも帰れなかった遣唐使たちだった。今回のライブでは、このコンセプトをもとに、時代を超えて紡がれる人々の思いや、歴史、文化に焦点が当てられた。
会場にはフリー入場エリア「祭Area」が設けられており、奈良県全面協力のもと、奈良ならではのコラボグッズ、物産、屋台、ワークショップを豊富に用意。ライブの観客だけに限定しない、開かれた形で交流が楽しめる場所になっていた。平城宮跡歴史公園 中央区朝堂院に用意された野外特設ステージには、2日間で合計およそ6万5000人の観客が来場。歴史ある世界遺産を舞台に熱演が繰り広げられた。
ライブ会場には四角い平地を囲むように、平城京にもゆかりのある四神の玄武、青龍、白虎、朱雀が描かれたやぐら型の照明が設置され、中央にひと際目を引く宮を模したステージがある。客席から見ると、奥に本物の平城宮も見える最高のロケーション。一気に1300年前の奈良時代にタイムスリップさせてくれるかのような、悠久の美を感じさせる雅楽隊の演奏に乗って、ACAねやバンドメンバーが登場してライブが始まった。
本公演では雅楽隊以外にも三味線や楽琵琶が用いられ、いつも以上に和を感じる要素が前面に押し出されていた。ACAねは最新アルバムの1曲目「地球存在しない説」でライブの幕を開けると、「秒針を噛む」「TAIDADA」「海馬成長痛」など人気曲を次々と披露。中でも「海馬成長痛」では、三味線ソロで会場が盛り上がり、ACAねがバズーカを発射する場面もあった。会場の四隅に設置された四神を模したライトがメインステージの照明に連動して光ったり、時には平城宮自体がカラフルにライトアップされたりと、この場所そのものを強烈に感じさせる演出も印象的。全編を通して、バンドによる生演奏でのパーティと日本古来の祭りの祝祭感とをミックスするような、今回の公演ならではの高揚感が生み出された。
せんとくんとのコラボレーション
中盤ではACAねがセグウェイに乗ってセンターステージに移動。観客もしゃもじを手にして踊った「機械油」の「盆踊りremix」では演奏後に花火が上がったり、「サターン」は和楽器によるアコースティックセットで演奏されたりとこの日ならではの試みが続いていった。「サターン」のアウトロでACAねが再びセグウェイに乗ってメインステージに戻ると、以降は70、80年代のディスコファンクのようなテイストを全面に押し出したライブのクライマックスへ。キラキラとミラーボールが輝く「MILABO」で平城宮がカラフルにライトアップされ、「猫リセット」では奈良平城京遷都1300年記念マスコットキャラクターのせんとくんが登場した。曲中で演奏がせんとくんの応援ソング「せんとくんなら知っている」に変わり、再び「猫リセット」に戻るユニークな構成に歓声が止まらない。続く短尺のポップチューン「ultra魂」では、演奏を終えて「もう1回!」とリワインドするとせんとくんが再び登場して会場が大盛り上がりとなった。その勢いのままに始まった「ミラーチューン」では途中でモーニング娘。の「LOVEマシーン」を引用。大所帯のバンドメンバーによるディスコファンク風のきらびやかで高揚感いっぱいのサウンドが会場に広がった。
ライブ終盤には「イチジク煙」「夏枯れ」が披露され、徐々にパーティや祭りが終わりに差し掛かった頃特有の、どこか切ない余韻が生み出された。そして「夏の終わり、秋の訪れ」というフレーズでACAねによるナレーションが始まり、言葉やコミュニケーションの難しさやその不思議、だからこそ尊い人々の日常やその集積である歴史へと焦点が当てられる。さらに “槍ゾンビ”が登場した「メディアノーチェ」やACAねが「飛べんのー?」と観客を煽って全員でジャンプした「あいつら全員同窓会」「暗く黒く」「lowmotion algae」を経て、ラストは本公演のために書き下ろされた新曲「あかねさす頃」で大団円。終演後には再び打ち上げられる花火を観客たちは立ち尽くすようにして見つめていた。
「ずっと真夜中でいいのに。とは、来ない夜明けも肯定すること」とこれまでずっと提唱してきたACAね。この言葉通り、ずとまよの活動は常に、人々がもがいたり、何かに挑戦したりするそのこと自体を、尊いものとして肯定してきた。そして今回の「LEGACY ZOMBIE LABO 『文禍伝雷』奈良・平城京」で、いよいよその対象は現代の日本と奈良時代の平城京をつなぐ約1300年間という膨大な期間になり、時代を超えて積み重なっていく人々の挑戦の記録が、ライブの端々から壮大な群像劇のように立ち上る。終盤のMCでACAねが観客に伝えた「我々は誰かの過去の上に立っている」「今日も土の下には誰かの思いが眠っている」という言葉には、まさに今回の公演のテーマが凝縮されていた。人々が紡いできた歴史の陰には無数の失敗や苦悩があり、けれどもそのすべてが物事を前に進めていく。だからこそ、自分たちの日々にも必ず意味はある。そんなずとまよならではのテーマ性を、時代を超えた壮大なスケールで描いた今回の公演は、人々の行動や思いの結果である“今の時代”の魅力も改めて考えさせるものとなった。


