藤井フミヤが東阪アリーナライブ「藤井フミヤ ARENA LIVE 2026 360°」の最終公演を、10月18日に東京・日本武道館で開催した。フミヤが武道館でライブを行うのは2024年6月以来約2年4カ月ぶり、ソロとしては60回目。キャリア2度目となる47都道府県ツアー「47都道府県コンサートツアー 2025-2026 FUTATABI」の集大成という位置付けで行われたライブでは、チェッカーズ時代から現在に至るまで、厳選した24曲が披露された。
焦らすような演出から始まった「NANA」
2024年6月に行われた「40th Anniversary FINAL in 日本武道館」同様に、場内に足を踏み入れたオーディエンスの目に飛び込んできたのは円形のステージとそれを円柱のように覆う白い幕。公演タイトル通り、360°から愛のこもった熱視線がステージに注がれていると、BGMが不意に途切れ、場内が暗転する。シルエットが浮かぶ幕の向こうから響いたのは、フミヤの「Three, Four」のカウントと、藤井尚之(Sax, G)が吹く色気をたっぷりまとったイントロ。オープニングナンバーを察した観客の黄色い歓声が場内に沸くが、そこでファンを焦らすように演奏がストップ。次の瞬間に文字通り幕が落ち、全方位に金銀の紙テープが放たれる中、ライブの火蓋は「NANA」で華々しく切られた。
グレーのジャケットとジレ、ゆったりしたボトムスという正装に身を包んだフミヤは、尚之、大島賢治(Dr)、山田“Anthony”サトシ(B)、沢頭たかし(G)、櫻田泰啓(Key)という「FUTATABI」の全行程をともにしたバンドメンバーの演奏に乗せ、40年前の1986年にリリースされた1曲を披露。続けて「I Love you, SAYONARA」「NEXT GENERATION」「Friends and Dream」という青春時代を感じさせるチェッカーズの楽曲で、オーディエンスを“ありし日”へと引き戻していく。「I Love you, SAYONARA」の間奏ではセンターステージに尚之を誘い、サックスソロの見せ場を作るなど、兄弟愛を端々でにじませた。アリーナ公演であっても演出に頼るのではなく、ホール会場同様に歌の力を最大限に引き出すことに注力し続けているフミヤ。この「360°」においても、アリーナ公演の定石であるビジョンや映像を用いるのではなく、照明やレーザーによる“色彩と光”を取り入れた演出を歌とリンクさせ、各曲の世界を描き出していく。
360°から藤井フミヤを楽しんで
「Friends and Dream」が作り出したノスタルジックなムードの中、フミヤは「ようこそ!」とアリーナから2階の天井桟敷まで埋め尽くす観客を歓迎。「で……どっちが前だっけ?」と360°ステージならではの小ボケを放ち、ファンから「こっちー!」と盛大にツッコミを受ける。“おなじみ”のやりとりに頬を緩ませながら彼は、この日がソロとして60回目、チェッカーズ時代を含め113回目の武道館のステージであることを報告。「地道に(公演)数を増やしてますが、皆さんのおかげです」と謝辞を口にし、「360°から藤井フミヤを楽しんでください」とアピールした。
続いてフミヤが誘ったのは、“解散がないユニット”F-BLOODのブロック。ステージの真ん中に足を踏み入れた尚之は、フミヤの横に立つなり、「どうも~、藤井弟です」と挨拶をする。漫才さながらの呑気な調子に兄からは猛然とツッコミが入るが、尚之は照れ笑いを浮かべ、ギターを構え準備を進めた。兄弟ユニットならではの、心地よく厚みのあるハーモニーと、尚之の紡ぐエバーグリーンなメロディが魅力のF-BLOOD。2人はバンドの後押しを受けながら、猿岩石に提供した「白い雲のように」を皮切りに、ほんのりとした切なさを帯びた新曲「天気模様」、F-BLOODのデビュー曲「「I」」をじっくりと届ける。そして、1998年開催の長野オリンピックを盛り上げた「SHOOTING STAR」では、ステージがゲレンデのように白いライトで染まり、フミヤは滑るような足取りで花道を回り、伸びやかな声を全方位に聴かせた。
歌手としての胆力を見せた「DO NOT」
「まあ、座ってください」。そう口にして観客を座らせたフミヤは、ジャケットを脱ぎ、ソロナンバーを披露することを予告した。櫻田のまろやかな鍵盤の音色に導かれ「DO NOT」が始まるが、ここでフミヤの声にわずかな揺らぎが生じる。しかし、彼は自らの声を丹念にコントロールし、「The Show Must Go On」を体現するかのようにすさまじい胆力で歌いきり、そのまま代表曲「TRUE LOVE」へ。さらに、感嘆の声が入り混じる中で「Another Orion」を伸びやかな声で絶唱。ステージの中央がゆっくりとせり上がり、天井に星空が広がるドラマチックな演出にふさわしいパフォーマンスを見せるフミヤに、会場にいる全員が圧倒された様子だった。
「Go the Distance」が作り出した鷹揚な空気を変えたのは、「今年最後のコンサートになります」というひと言。あちこちから寄せられる残念そうな声を受けつつ、フミヤは「ものすごく一緒にいっぱいお酒を飲み、この3年は土日、祭日と一緒にいた」という百戦錬磨のバンドメンバーを紹介していく。その後、フミヤは退場し、入れ替わるようにスポットライトを一身に浴びた尚之がチェッカーズのインストゥルメンタルナンバー「FINAL LAP」を景気よく奏で、後半戦の幕を開けた。ロックバンド時代のチェッカーズの楽曲がセレクトされた前半戦に対して、ここで披露されたのは押しも押されもせぬアイドル時代のチェッカーズのナンバー。ブラックジーンズとブルゾンに着替えたフミヤは「ギザギザハートの子守唄」にはじまり、「あの娘とスキャンダル」「ジュリアに傷心」「星屑のステージ」を連投する。ヤンチャなポップチューンや失恋にどっぷりと酔いしれる哀歌など、昭和の空気をこれでもかと詰め込んだ曲ではあるが、オーディエンスは板に付いた振付をナチュラルに踊り、クライマックスへ向かうライブを盛り上げる。
ラストナンバー「未完成タワー」に重ねた誓い
40年前にタイムスリップしたかのようなムードの中、フミヤは「あの頃の君らはかわいかった……今もかわいいよ」と殺し文句を放ち、「人間には3つ年齢があります」と講釈を始める。戸籍年齢、肉体年齢、精神年齢の3つのうち、フミヤいわく一番大事なのは精神年齢。「(年齢を)止めていこうぜ。なんなら来年から1歳ずつ若くなっていこう」と呼びかけ、「タイムマシーン」につなげるという粋な展開を見せた。
オーディエンスを楽しく踊らせるロックンロールナンバー「I LOVE IT! ドーナッツ!」「WE ARE ミーハー」を経て、ポジティブに愛を伝えるポップチューン「ココロ」で本編はフィナーレへ。晴れやかな顔でフミヤを送り出したオーディエンスだったが、すぐさまアンコールならぬ盛大なフミヤコールを巻き起こす。アンコールらしい晴々しいムードが漂ったのも束の間、まばゆい光が花道を覆う演出とともに「エンジェル」が始まる。フミヤは諦念を帯びた声で武道館を包み込みながら、ステージに向かって歩みを進め、再びバンドに合流。すると、穏やかな歌声とリンクするように、レーザーが放射状に広がり曲のスケールを視覚的に表現していく。最後にフミヤがせり上がるステージの上で両手を広げ、ゆっくりと天を仰ぐと、熱のこもった拍手がさざなみのように響いた。
しかし、しみじみとした空気は「紙飛行機」が始まればたちまち雲散。「期待してるよ」というフミヤの言葉に応えるように、おびただしい量の紙飛行機がステージに向かって飛び交っていく。次々押し寄せる紙飛行機に目を細めたり、大笑いしたりするフミヤを、観客は愛おしそうに見つめた。曲が終われば祭りのあとのようなうら寂しさが漂うが、フミヤは「歌えるだけ歌っていきますんで」と同じ時代を生きるファンに未来を約束する。そんな言葉を裏付けるように、この日彼がラストナンバーとして選んだのは「未完成タワー」だった。「360°」が歌詞に登場するこの曲は、60代を迎えた“歌手・藤井フミヤ”の指針とも言えるナンバー。「これからも歌い続ける」という宣言をラストナンバーに込めた彼は、「また必ずお会いしましょう。また一緒に遊ぼうぜ」とおなじみの挨拶でファンに別れを告げた。
セットリスト
「藤井フミヤ ARENA LIVE 2026 360°」2026年10月18日 日本武道館
01. NANA
02. I Love you, SAYONARA
03. NEXT GENERATION
04. Friends and Dream
05. 白い雲のように
06. 天気模様
07. 「I」
08. SHOOTING STAR
09. DO NOT
10. TRUE LOVE
11. Another Orion
12. Go the Distance
13. FINAL LAP
14. ギザギザハートの子守唄
15. あの娘とスキャンダル
16. ジュリアに傷心
17. 星屑のステージ
18. タイムマシーン
19. I LOVE IT! ドーナッツ!
20. WE ARE ミーハー
21. ココロ
<アンコール>
22. エンジェル
23. 紙飛行機
24. 未完成タワー


