YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10月9日から10月15日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングには、バーバパパが重音テトを使用して制作した「ただ浮かぶ脳裏のモーション」が14位に登場した。バーバパパは、コロナ禍で大流行した「ウ”ィ”エ”」で知られる正体不明の動画クリエイター。MVのコメント欄には「バーバパパ式のテト、顔がキリっとしてて好きだ」「マジでバーバパパの重音テトイケメンすぎる」など、楽曲での起用だけでなく、映像での描き方も含めて、重音テトの魅力を引き出すバーバパパの表現力を称賛する声が数多く寄せられている。
19位にはAぇ! groupの「Mrs.Vampire」ダンスプラクティス映像がランクインした。今月末のハロウィンに合わせ、メンバーが仮装姿でダークかつ妖艶なダンスを繰り広げている。
23位に登場したのはRADWIMPSの「夕星-ゆうづつ-」だ。今作は、凪良ゆうの小説を原作として、横浜流星と広瀬すずのダブル主演、藤井道人監督で実写化した映画「汝、星のごとく」の主題歌。MVでは、静かな海や打ち上がる花火の情景を通して、楽曲が持つ儚さと壮大さが表現されている。
25位にはDRAW♡MEの「勝ち確♡ラヴ」がランクインした。DRAW♡MEはYouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」の企画から誕生した、立野沙紀、二瓶有加、福留光帆、風吹ケイ、みりちゃむ、森脇梨々夏によるアイドルグループ。同曲は彼女たちのメジャーデビュー作で、MVのデイリーランキングでは10月15、16日と連続で1位を獲得した。
バラエティに富んだ楽曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
一条ゆう「多摩川で、恋…したい♡」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場11位
「多摩川で、恋…してみたい♡」。そんなささやかな願いが、今SNSを席巻している。「音楽界のスーパーアイドル」を自称する一条ゆうは、2022年のデビュー以来、広く知られた存在ではなかった。ところが、自ら作詞作曲し、打ち込みまで手がけた「多摩川で、恋…したい♡」がTikTokで話題に。=LOVEの大谷映美里、AKB48の佐藤綺星と八木愛月らもダンス動画を投稿した。往年のカラオケ音源を思わせる素朴な電子音、語尾にハートマークが浮かぶ甘い歌声、恋の舞台にしてはあまりに日常的な河川敷。MVでは多摩川の河原に立ち、飾り気のない風景の中でパフォーマンスを披露する。
洗練を競い合う音楽シーンにあって、その徹底した我が道の歩み方はむしろ鮮烈だ。誰かの正解に寄せることなく、好きなものを好きな形で鳴らす。そんな自由奔放な表現が、世代もジャンルも超えて人々を踊らせている。大河を舞台にした小さな恋の歌が、巨大なタイムラインを泳ぎ始めた。
高畑充希「ベラドンナ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場20位
美しい花には棘があるというが、この花は毒まで持っている。日食なつこが作詞作曲した高畑充希の楽曲「ベラドンナ」は、そんな植物の名を借りて、夢を追うことの代償を問いかける。
歌詞に登場する通勤特急は、足の引っ張り合いや損得勘定がはびこる現代社会を象徴しており、まるで乗客の希望をすり減らしながら走る地獄行きの列車のようだ。しかし、そんな息苦しい世界に身を置きながらも、主人公は憧れを捨てようとはしない。中でも胸を突くのは、覚悟を「買う」と言い切る姿勢であり、夢を追い続けるには、傷つくことさえ引き受けなければならないという厳しい現実が浮かび上がる。高畑充希の凛とした歌声は、決意を大仰に叫ぶことなく、その裏側にある迷いや不安までも丁寧にすくい取っている。
歌劇を思わせるMVのアニメーションも楽曲に潜む毒気を際立たせており、華やかな映像とシビアな歌詞の組み合わせが独特の世界観を生み出す。誰かが用意した正解ではなく、自分の選んだ道で咲く。その美しさには、少しの危うさが必要なのかもしれない。
Travis Japan「EGO」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場22位
愛するほど、これは相手のためなのか自分のためなのかわからなくなる。Travis Japanの「EGO」が描くのは、そんな恋愛の美しくも厄介な矛盾だ。
今作はメンバーの松田元太が主演を務めるテレビ朝日系ドラマ「はだかんぼうたち」の主題歌。艶やかなダンスサウンドに乗せて、愛情と欲望の境界が曖昧になっていく危うさが浮かび上がる。「今日限りの永遠」という一節には、いつまで続くかわからない恋愛の不確かさが凝縮されている。さらに、歌詞に登場する伏せられたスマホやガラス片からは、相手を信じたいのに疑ってしまう心理や、壊れやすい関係が見えてくる。
MVでは広大な砂の大地を舞台に、7人が一糸乱れぬダンスを披露。しなやかな身のこなしや挑発的な視線が、楽曲の妖艶な雰囲気を引き立てる。華やかなパフォーマンスを楽しみながら、愛することの難しさについても考えさせられる1曲だ。


