3月17日より全国の劇場で公開される映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」の主題歌が、尾野真千子と原作者である末井昭によるデュエットソング「山の音」(やまのね)に決定。また劇中音楽を手がける菊地成孔が写真家・荒木さん役で出演することが発表された。
映画「素敵なダイナマイトスキャンダル」は編集者、作家、サックス奏者の末井昭が1982年に発表した同名エッセイを原作とした作品。実母が隣家の息子とダイナマイトで心中するという幼少期ののち、成人向け雑誌「ウィークエンドスーパー」「写真時代」などの編集長として活躍した末井の半生が描かれ、主人公の末井役を柄本佑が務めるほか、劇中音楽は菊地成孔が手がけている。
本作で“爆発する母”富子役を演じる尾野と、原作者の末井が歌う「山の音」は、映画のエンドロールで使用される楽曲で、歌詞は母が息子を包み込んでいるような内容に。この曲は3月7日に発売される「素敵なダイナマイトスキャンダル」のオリジナルサウンドトラックに収められる。
またYouTubeでは、スキャンダラスな内容ゆえにセリフの一部に「ピー」や、セクシーな声の「ワオ」という自主規制音が入った予告映像が公開された。この予告編では、尾野や柄本佑、前田敦子、三浦透子、峯田和伸(銀杏BOYZ)、松重豊、村上淳らの登場シーンに加え、菊地成孔がアラーキーをモデルにした写真家・荒木さん役で出演したシーンを観ることができる。
柄本佑(末井昭役)コメント
コロコロと転がっていくような曲とちょっとヘンナ歌詞がとっても色っぽく、そこに重なる尾野真千子さんと末井昭さんのめくるめくコラボが聞いていて気持ちいい一曲です。更に映画を観てから聴くと、末井さんと末井さんのお母さんが奇跡のディエットをしている!と、素敵な錯覚を味わえます!
尾野真千子(富子役)コメント
主題歌オファーについて
本当に私で良いの? 嘘でしょ? と思いました。感覚が掴めずとても難しかったですが皆さんの励ましのおかげで、もっともっと歌ってみたい。という感情が湧き、皆さんがおだて上手だなと思いました。まさか原作者の末井昭さんとデュエット出来るなんて、とても貴重な体験をさせてもらいました。
自身の歌について
何も言えません……(笑)。
末井昭(原作者)コメント
ダイナマイト心中した母親がベースになっていますが、色んなイメージが膨らむ歌です。最初に聴いたとき涙ぐみました。
尾野真千子の歌について
歌が上手くて、声が超カワイイです。女優さんってスゴイ!
収録時のエピソードについて
尾野さんは2時間ほどでレコーディングが終わりましたが、僕は2日かかりました。一緒に行った妻が焦って、菊地さんに「スエイは歌えるんです。荒木経惟さんのパーティでよく宗右衛門町ブルースを歌うんです」と言っていました。カラオケじゃないんだから。
菊地成孔 コメント
劇中音楽、主題歌について
音楽監督のオファーを頂いたときに、真っ先に閃いたのは、末井さんに主題歌として女優さんとのデュエットソングを歌って頂く事でした。これは、私が知る限り世界映画史上はじめての事ですし、複雑にねじれたマザコン映画(登場する女性──男性の一部さえも──は全て末井さんの母親の変形した投影です)である本作の本質を突く事になり、本作に音楽からのオーラを与え、映画としての霊力的階級を一段階上げると確信したからです。母親役である尾野さんの素晴らしい歌唱によって、「残された子(本人)と母親(女優が演ずる虚構)」という倒錯的な構造にフォーカスが絞られました。この構造が発想された瞬間から、自然に歌詞も曲も出来ていました。小田朋美さんの中期ビートルズ風の素晴らしい管弦編曲も、無限の虚無と愛へのもがき、その葛藤を更に効果的に押し上げてくれました。素晴らしい主題歌だと思います。
写真家・荒木さん役について
(監督から荒木さん役で出演オファーがあったことについて)演技などできるはずがないので、3年断り続けましたが、とうとう逃げられなくなり、かなり軽い役に落として頂いく事、そして末井さんを主題歌に必ず起用する事、を条件にやらせて頂きました。私は過去、荒木先生に撮影して頂く機会があり、ちょっとした知己がある事、体型や声質や下町弁が似ていることから、冨永くんが勝手に興奮しただけであって、彼の判断は今でも間違っていたと思います。撮影自体は、自分の音楽のMVのそれより遥かに短時間で簡単に済みましたが、他人が考えた台詞とカメラの動かし方を覚えて、そこに体や顔の動きをつけ、他の俳優さんたちとお芝居を会わせるというのは、私にはとてもじゃありませんが無理で、そのことはキャメラが雄弁に記録していると思います。
冨永昌敬(監督・脚本)コメント
「山の音」は、菊地さんと小田さんによって書かれた『素敵なダイナマイトスキャンダル』のエピローグです。これほど「主題」を補完してくれる主題歌はありません。たとえば歌詞の「地下鉄のトンネル」という一節(そんな場面は本編に存在しないし、そんな場面を撮りたかったと監督が思うほど、まさに補完)には、エンドクレジットの黒い背景も相まって無性にイメージを掻き立てられます。そして尾野さんと末井さんの歌唱は、二人のあたたかい声によって音響的な高揚を画面にもたらし、なお、散り散りに消えてゆく母と探し求める息子といったキャラクターさえ感じさせてくれるでしょう。この歌の魅力は、キャスティングの鮮やかさにまったく留まりません。じっくり聴いてほしいと思います。