ゴールデンボンバーの全国ツアー「楽器を弾いたらサヨウナラ」が昨日7月25日の神奈川・ぴあアリーナMM公演をもってファイナルを迎えた。
「楽器を弾いたらサヨウナラ」は昨年春に開幕予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大およびそれに伴い政府に要請された方針などを受けて1年延期に。今年に入ってから有観客公演として展開されたが、会場に足を運べないファンのために最終公演の模様はニコニコ動画、ミクチャ、LINE LIVE-VIEWINGで全編生配信が行われた。
樽美酒研二(Dr)の影アナに続き、スクリーンに映し出されたのは喜矢武豊(G)を主人公にしたオープニングムービー。その中ではエアーバンドのメンバーでありながらも実はギターを弾くことが大好きな彼が、鬼龍院翔(Vo)から生演奏を禁じられ苦悩する日々がフィーチャーされる。DAIGOもゲスト出演した映像の中で喜矢武は「生演奏したい……」とギタリストとして切実な思いを募らせるが、鬼龍院に「おとなしく俺の言うこと聞いていろ」とナイフで脅され、強張った表情でステージに向かう。そんなスリルたっぷりのムービーを経て、1曲目として届けられたのはツアーの主題歌である「THE ガマン」。激しいトラックに乗せて4人はアグレッシブなパフォーマンスを繰り広げ、中でも喜矢武は華麗なエアーギターソロで観客の視線を釘付けに。さらにオーディエンスが抱える日頃の鬱憤を晴らすように「暴れ曲」が叩き込まれ、会場の空気は一気にヒートアップした。
おなじみの自己紹介で喜矢武は「実は僕、ゴールデンボンバーとは別で役者もやってるんです。今年なんて、連ドラのレギュラーをやらせてもらったんです。こんなに喜矢武さんの時代がきていたら、主役級の“大(タイ)役”がきてもおかしくないと思うんです」と期待を膨らませる。樽美酒は「日本人らしく、日本の素敵な文化で皆さんをお出迎えしたいと思います!」「僕、最近腹筋鍛えているんですよ。なんでかというと、腹筋太鼓って知ってます? それをこの前やらせてもらったんですが、めちゃくちゃキツイ! でも最後まで叩き続けたいんです」と腹筋太鼓に挑むことを宣言。鬼龍院はそんなメンバーの成長ぶりに「今までのゴールデンボンバーとは違いますよ」とアピールして、ライブの定番曲である「抱きしめてシュヴァルツ」のトラックをいつも通りiPodから流す。そんな前振りを経てのギターソロではダンボール製の鯛の着ぐるみをまとった喜矢武が“鯛(タイ)役”として堂々と登場。その傍らで、上半身裸になった樽美酒は美しい腹筋を覗かせつつ和太鼓を叩く。樽美酒の腹筋を試すように彼と太鼓を乗せた小さなステージは徐々に角度を付けていくが、樽美酒がズボンのみを残し滑り落ちてしまう事態に。樽美酒はパンツ1枚という姿になりつつ再び腹筋太鼓に挑むも、あまりのハードさに途中で失神と失禁をしてしまい鬼龍院と歌広場淳(B)は「失神太鼓!」「失禁太鼓!」と大慌て。最終的には喜矢武のハリセンで樽美酒が起きるというオチがつき、今までと変わらないおふざけモード全開のゴールデンボンバーが健在であることを証明した。
ひとしきりファンを笑わせたあと、4人は「首が痛い」「毒グモ女(萌え燃え編)」「かまってちょうだい///」というヴィジュアル系好きの生態や心理を歌詞に落とし込んだナンバーを熱演する。「首が痛い」ではサビの「痛いね」のフレーズに引っかけて、「もう一回タイね」として鯛の着ぐるみを着用した喜矢武が再登場。ダンボール工作を再利用してみせ、ファンの笑いを誘った。ローションを使った熾烈な対決映像を挟み、ステージで上演されたのはゲイであることを秘密にしている高校生の鬼龍院と、鬼龍院に思いを寄せながら吸血鬼という正体を隠して生きる喜矢武を中心とした“シークレットスリリングスクールゲイドラマ”。鬼龍院は、お互いに思い合いながらもすれ違っていく2人の姿を、「死 ん だ 妻 に 似 て い る」「男心と秋の空」「さよなら、さよなら、さよなら」といったストーリーとリンクする楽曲を通して表現していく。劇の終盤で喜矢武は鬼龍院に吸血鬼であることをカミングアウトし、人間に生まれ変わるためにと日焼けサロンで灰に。このまま2人が再会できないで終わるかと思われたとき、鬼龍院が「HEN」を歌唱しているところに人間に転生した喜矢武がベビーカーに乗って登場し、温かな余韻を残して演劇パートは大団円を迎えた。
その後、喜矢武がサブステージに現れ、鬼龍院、歌広場、樽美酒にも移動するよう促す。3人の移動中に喜矢武は開幕したばかりのオリンピックについて触れ、「俺もボルダリングでオリンピックに出る!」と豪語して、布石を打った。全員がそろったところで4人は背中合わせになり、ファン1人ひとりに視線を送りながら「咲いて咲いて切り裂いて」「101回目の呪い」を披露。「Dance My Generation」が始まると4人はメインステージへ。メンバーの移動による不在中に影武者たちが踊り、歌うというエアーバンドならではの演出に加え、喜矢武による“ダンボールダリング”が始まりカオスな状態に。なお、喜矢武が「GOAL」と書かれた頂上に触れた瞬間、ダンボールが縦に裂け、喜矢武が落下してしまい“ダンボールダリング”は失敗。呆然とする喜矢武に向かって鬼龍院は「ダンボールだもん!」と容赦のないツッコミを入れた。
観客が美しいハンドクラップを響かせた「キスミー」、メンバーもファンも拳を振り上げて暴れた「#CDが売れないこんな世の中じゃ」で本編は終了。メンバーが退場すると「アンコール」の音声がスピーカーから流れ、それに合わせて大きな手拍子が沸き起こった。しかし、メンバーの再登場を待つファンの前に映像スタッフのミスにより映し出されてしまったのは、ステージ裏で鬼龍院に殴られた喜矢武が倒れ込む衝撃映像。鬼龍院は意気揚々とステージに戻るが、殴られた喜矢武当人はもちろん、樽美酒と歌広場も神妙な面持ち。鬼龍院だけがご機嫌という、なんとも不穏な状況の中でアンコールがスタートした。
ぎこちない雰囲気を漂わせつつも喜矢武は「次はシンクロナイズドスイミングでオリンピック目指します!」と“ダンボールダリング”の失敗を物ともせず元気よく宣言。これを受けて、鬼龍院曰く喜矢武のオリンピック出場を記念して作ったという「ホテルラブ」がアンコールの1曲目を飾った。ギターソロに突入すると、シンクロを行うには小さすぎる水槽が運び込まれ、水着姿の喜矢武が人形を抱えてダイブ。序盤こそシンクロっぽい動きを見せていたが、次第にその動きはプロレスの様相に。さらに歌広場が実況を始め、場内も配信のチャット欄もカオスな状況に陥った。
いよいよライブもクライマックスというとき、喜矢武は「もう駄目だ。我慢できない。俺は弾くぞ!」と「女々しくて」の途中で舞台袖へ。ギターの生演奏への憧れを止められない彼は生演奏用のケーブルをつかみ、ステージに戻るとそれを勢いよくギターにつなげる。鬼龍院が「やめろー!」と制止するも、喜矢武はそれを無視して弦に触れてしまい、爆ぜる音とともに場内は真っ暗に。スクリーンには濡れた体のままでギターを弾いたことで感電し、そのため意識不明になってしまった喜矢武の姿が。号泣する歌広場と樽美酒の横で、鬼龍院はかつて雨の中での生演奏による感電が原因でバンドメンバーを失った過去を告白する。鬼龍院は「生演奏とは本当に恐ろしいものなんだ」「もう誰も失いたくなかったんだ!」と叫び、喜矢武の顔に涙を落とした。すると喜矢武がゆっくりと意識を取り戻し、自身の首から伸びる1本の毛がアース線の役割を果たしていたことが明らかに。鬼龍院は「これからはたくさんたくさん弾いてくれよ」と喜矢武の生演奏禁止を解除。喜びのあまり感涙する4人の姿に続いてスクリーンにはスタッフクレジットが流れ始め、その映像を背に鬼龍院が歌詞の言葉1つひとつを噛み締めるように「さらば」を歌い上げる。アウトロでは、なぜかステージ上に雨が降りびしょ濡れになりながらも首の毛のアースのおかげで感電することなくギターを爪弾く喜矢武の姿とツアータイトルの「楽器を弾いたらサヨウナラ」の文字が大きく映し出された。
ダブルアンコールでは「皆さんに観てもらうことができて本当によかった」と万感の表情で目の前のファンと配信視聴者に感謝の思いを伝えた4人。鬼龍院はこれまでのツアーファイナル以上に感慨深いとしみじみと語り、「(コロナ禍で)つらかった分、ライブのありがたみを僕らも感じましたので。生活が破綻しない程度にライブ、楽しもうな」とファンに呼びかけた。続けてメンバーは、鬼龍院がダイビング中に浮かんだという新曲「おさかな地獄」を初披露。4人は耽美なサウンドに乗せて魚の悲哀を歌った1曲を全力でパフォーマンス。さらに、先ほどは喜矢武の感電により中断されてしまった「女々しくて」のトラックが流れ出し、ギターソロパートでは喜矢武がお立ち台の上で見事な生演奏を披露。アリーナ中に喜矢武が奏でる爆音が響きわたった。終演後、スクリーンには「告知なし!」の文字が踊ったが、12月23日にクリスマスライブが行われることや、「THEガマン」「おさかな地獄」が配信リリースされることが発表され、ゴールデンボンバーらしい遊び心とサービス精神を感じさせる形で2年ぶりのツアーは締めくくられた。
なお、ぴあアリーナMM公演の模様は、7月31日23:59までアーカイブを配信中。
ゴールデンボンバー「楽器を弾いたらサヨウナラ」2021年7月25日 ぴあアリーナMM セットリスト
01. THE ガマン
02. 暴れ曲
03. 抱きしめてシュヴァルツ
04. 首が痛い
05. 毒グモ女(萌え燃え編)
06. かまってちょうだい///
07. 死 ん だ 妻 に 似 て い る
08. 男心と秋の空
09. さよなら、さよなら、さよなら
10. HEN
11. 咲いて咲いて切り裂いて
12. 101回目の呪い
13. Dance My Generation
14. キスミー
15. #CDが売れないこんな世の中じゃ
<アンコール>
16. ホテルラブ
17. 女々しくて
18. さらば
<ダブルアンコール>
19. おさかな地獄
20. やり残した女々しくて