田我流が主演を務めた映画「サウダーヂ」のデジタルリマスター版が、10月23日より東京・K's cinemaで上映されることが決定。以降全国で順次公開される。
2011年に公開された「サウダーヂ」は、監督の富田克也が当時トラック運転手をしながら、相澤虎之助ら仲間とともに映像制作集団「空族」を名乗り、1年半の歳月をかけて自主制作で作り上げた作品で、舞台は山梨県甲府市。ヒップホップグループ・アーミービレッジのクルーである猛は、派遣で土工として働き始め、土工ひとすじに生きてきた精司や、同じく派遣されてきたタイ帰りの保坂と出会うが、タイパブで盛り上がる彼らに違和感を覚えるとともに外国人を敵視するようになり、やがてある行動に出る。
山梨のヒップホップクルーsitllichimiyaのラッパーである田我流が猛役を担当。シャッター街でこの国の現状をフリースタイルでラップする姿は高く評価された。本作は第33回ナント三大陸映画祭でグランプリとなる金の気球賞、第26回高崎映画祭で最優秀作品賞を受賞。第85回キネマ旬報ベスト・テンの日本映画6位となった。なおK's cinemaでの公開期間中は、同じく空族が制作した「国道20号線」「FURUSATO2009」の上映も予定されている。
空族 コメント
土方・移民・ヒップホップ
2011年に公開した「サウダーヂ」は山梨県甲府市を舞台に、北京オリンピック、リーマンショック後の大不況で行き場を失った日系ブラジル人たち、出稼ぎに来たタイ人、そして国籍の選択をせまられているその子供たちとの出会いから着想を得、疲弊しきった地方都市を描くことになった作品である。
そして、、、あれから一体何が変わったのだろうか?
精司がバブル時代を幻視し猛がラップしながら歩いた、あのアーケード街のシャッターは今も閉まったままでいる。ポルトガル語の「サウダーヂ」という言葉には失われたものへの郷愁とともに未来への祈りが込められているという。
「サウダーヂ」を公開したその年、福島で人災としては最悪の核爆発が起こり、わたしたちはもう二度と後戻りできなくなってしまった。
あれから10年─。
“災害と疫病と分断”のこの時代に「サウダーヂ」は新たな意味を持ち始めている。
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