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スチャダラパーがこの世界にいる喜び 「今日この瞬間が本当に最高」

スチャダラパー(撮影:三浦憲治)
約1か月前2025年05月15日 9:04

スチャダラパーが5月6日に大阪・なんばHatch、5月8日に東京・LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)でデビュー35周年記念ライブ「スチャダラパースペクティブ ~ここから彼方へ~」を開催した。この記事では東京公演の模様をレポートする。

スチャダラパーの現在

東京・渋谷のデザイン専門学校・桑沢デザイン研究所で知り合ったANIとBoseが、ANIの実弟・SHINCOをDJに加えて1988年に結成したヒップホップグループ・スチャダラパー。1990年5月5日にデビューアルバム「スチャダラ大作戦」をリリースした彼らは、日本語ラップシーンのパイオニアとして、現在まで活動を続けてきた。

そんな彼らのデビュー35周年を記念したライブは、盟友・ロボ宙、トークボックス奏者のLUVRAWのサポートメンバーに加え、笹沼位吉(B)、松田浩二(Key)、三星章紘(Dr, Per)、KASHIF(G)からなるバックバンド、ザ・コストパフォーマンスを迎えた大所帯でド派手に幕を開けた。会場が華やかなパーティムードに包まれる中、彼らは「リンネリンネリンネ」「CHECK THE WORD」「ライツカメラアクション」「ヒマの過ごし方」「ザ・ベスト」と新旧の楽曲を織り交ぜ、ファンキーにパフォーマンス。デビューから35年経っても衰えないどころか、ますますエネルギッシュな姿を示し、Boseは「今日この瞬間、本当に最高だと思っています」と語った。

スチャダラパーが刻んだ歴史

スクリーンに「1989年3月 DJアンダーグラウンドコンテスト」というテロップが映し出されると、ドラマ「太陽にほえろ!」のテーマソングが流れ、結成当時を彷彿とさせる出立ちのBose、SHINCOが「スチャダラパーのテーマ」をパフォーマンス。彼らは1989年3月にメジャーフォースが主催した「第2回DJアンダーグラウンドコンテスト」にて、この曲を披露し、世に出るきっかけをつかんだのだった。

歴史を一気にさかのぼったスチャダラパーは、そこから「1990年5月 メジャーフォースからCDデビュー」「1992年 ブレイク前夜、または実家の6畳 万年床期、三菱ミニカ、シビックシャトル時代」「1994年3月 『今夜はブギー・バック』の大ヒットにより繁忙期到来、からの異常な盛り上がり(©︎デッツ松田)」と時を進め、当時の代表的な楽曲を次々に披露。雑談的かけ合いを繰り広げるユニークな楽曲の数々によって歴史を振り返っていく。

スチャダラパーとサプライズゲスト

ヒット曲「サマージャム'95」披露後、再びザ・コストパフォーマンスを迎えたスチャダラパーは、1998年発売の「Fun-Key LP」から「4ch FUNK」「FUN-KEY-WORD」「MORE FUN-KEY WORD」「FUN-KEY PERSONALITY」を連発。グルーヴィな演奏で会場の熱気はみるみる上昇していく。

バンドと入れ替わる形で呼び込まれたのは、スチャダラパーとここ数年で急速に距離を縮めたSTUTSだ。スチャダラパーが切り拓いた日本のヒップホップシーンのトップランナーであるSTUTSは、「B-BOYブンガク」「Pointless 5」の2曲でMPCを力強く叩いてライブを盛り上げ、Boseは「うちに置いておきたい子です」と後輩のかわいさを表現した。

「かわいさは劣るけど、30数年かわいがってる」と紹介してロボ宙を呼び込んだスチャダラパーは、このライブの直前にリリースした新曲「ビート道」を披露。さらにライブも終盤に差しかかる中、アコースティックギターの音色とともに、観客の多くが予想していなかったサプライズゲストが現れる。小沢健二だ。

スチャダラパーがいない世界

悲鳴に近い歓声が上がる中、「想像してみよう」と呼びかけた小沢が語り始めたのは、“スチャダラパーがいない世界”の物語だ。Boseは桑沢を受験せず、ANIは桑沢を不合格となり、SHINCOは青山大学に現役合格。その世界では、3人ともまた違った道で成功しているかもしれない。しかしスチャダラパーはいない。

小沢は日本語ラップシーンへの影響を例に挙げたが、“スチャダラパーがいない”という局地的な変化は、ブラジルの蝶の羽ばたきがテキサスで竜巻を引き起こすように、世界全体に大きな影響をもたらす。スチャダラパーがいない世界では、あれもないし、これもない。そうした変化の積み重ねが、想像もつかないほど遠く離れた場所の風景も塗り替えてしまう。ましてスチャダラパーを聴いて育ってきた人々は、スチャダラパーがいなかったら、まったく別の人生を歩んでいたのではないか。

スチャダラパーがいる喜び

でも今夜あなたはここにたどり着いた。なぜならANIとBoseは桑沢で確かに出会い、浪人して青山大学に入学したSHINCOとスチャダラパーを結成したからだ。1990年5月にCDデビューを果たした彼らが、それから35年間、マイペースながらも楽曲を生み出し続けてきたからだ。あらゆる偶然の結果として、今この瞬間が奇跡的に存在する。

小沢の巧みなストーリーテリングから、スチャダラパーの3人がステージに姿を見せる。そうだ、この世界には彼らがいて「今夜はブギー・バック」も「彼方からの手紙」もある。会場に集まった人々はその幸せを分かち合い、喜びや感謝の思いを大きな歓声で伝えた。

スチャダラパーがいる未来

アンコールでは、スチャダラパーが大大大好きなラッパーだという田我流を迎え、新曲「Bメン」で言葉巧みなマイクリレーを展開。ユーモアあふれる田我流のラップスタイルもスチャダラパーがいなければ、また違うものになっていたかもしれない。

そして「帰ろうChant」でライブを締めくくったスチャダラパーは、代表作である「5th WHEEL 2 the COACH」の発売30周年を記念したライブをこの会場で行うことを発表した。スチャダラパーがいる世界はこれからも続いていくのだ。

セットリスト

「スチャダラパースペクティブ ~ここから彼方へ~」2025年5月8日 LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)

01. リンネリンネリンネ
02. CHECK THE WORD
03. ライツカメラアクション
04. ヒマの過ごし方
05. ザ・ベスト
06. スチャダラパーのテーマ
07. スチャダラパーのテーマ Pt.2
08. スチャダラカウント10
09. ゲームボーイズ
10. スチャダランゲージ ~質問:アレは何だ?~
11. Trio The Caps
12. 後者 - THE LATTER -
13. ついてる男
14. 5th WHEEL 2 the COACH
15. ドゥビドゥWhat?
16. From 喜怒哀楽
17. The Late Show
18. サマージャム'95
19. 4ch FUNK
20. FUN-KEY-WORD
21. MORE FUN-KEY WORD
22. FUN-KEY PERSONALITY
23. B-BOYブンガク
24. Pointless 5
25. ビート道
26. よさGなスキャット
27. FUN-KEY4-1
28. Shadows Of The Enpire
29. ジャカジャ~ン
30. ぶぎ・ばく・べいびー
31. 今夜はブギー・バック
32. 彼方からの手紙
<アンコール>
33. Bメン feat. 田我流
34. 帰ろうChant

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