公開中の映画「余命10年」の大ヒット御礼挨拶が本日3月17日に東京・丸の内ピカデリーで行われ、今作の音楽を担当したRADWIMPSの野田洋次郎(Vo, G, Piano)が登壇した。
「余命10年」は小坂流加によるベストセラー小説を実写化した藤井道人監督の恋愛映画。20歳で難病を患い恋はしないと決めた余命10年の茉莉と、生きることに迷い自身の居場所を見失った和人の姿が描かれる。茉莉役を小松菜奈、和人役を坂口健太郎が務め、RADWIMPSは主題歌と劇伴を担当した。
挨拶が始まるとまず小松と坂口が観客の前に姿を見せ、小松は「昨日の地震、皆さん大丈夫でしたか? そんな中お越しくださりありがとうございます」と観客を気遣う。そして「私は『何をすればいいんだ』と冷静さを失ってしまいました。とっさに起きることって、こんなにも頭と体が動かなくなるんだと、夜もあまり寝れずにいたんですけど……何が起こるかわからない日々の中で、自分と大事な人を守り明日を生きること、この作品も、スクリーンの中に閉じ込めています」と語った。小松に続いて、坂口も「何が起こるかわからないこの世の中で、この映画を届けられて。皆さんの心に残ってもらえたのかなと思うと、うれしいです」と感謝を伝える。そして、2人のあとに司会者に紹介されてステージに上がった野田は「いち音楽監督がこういう場に来るのは気が引けたんですが」と恐縮しつつ「今日はおめでとうを伝えに来ました。おめでとうございます」と主演の2人を祝福した。
トークセッションで映画の反響について司会者に問われた野田は「僕自身、家族含め周りの人に『観てよ』とこんなに伝えた映画は初めて」と明かし、「この作品に出会ったほうが何倍も豊かな日々になると、音楽を作りながら感じていたので、大事な人に観てほしかったんです。案の定、心のこもった感想をいただくので、よかったなあと思います」と続ける。RADWIMPSが実写映画の劇伴を担当するのは「余命10年」が初めて。「毎日スタジオに行って、毎日和人と茉莉に会って、毎日涙を流しながら音を付けていた時間でした。ああいう体験は今までになかったですし、この先もないだろうなという貴重な時間でしたね。この中では僕が断トツで観ている回数が多いと思うので、皆さんにもぜひ追いついてほしいですね(笑)」と、笑顔で制作を振り返った。
野田は、撮影に入る前に監督から「和人と茉莉の道標になるような音楽を」とリクエストされ、のちに主題歌「うるうびと」の原型となるデモ音源を提供したという。これについて小松は「聴く前から『1000%いいに違いない』とリアルに頭を抱えたんですが、実際に聴いてもホントに素晴らしく、頭を抱えました。曲が扉を開いてくれたというか、『この音楽を超えるものを作らないと』と目指す場所ができたので、曲に日々助けられていました」と野田に伝え、坂口も「脚本を読んで和人のことを思ったときは、“残されるつらさ”を考えたんです。でも曲を聴いたら、残されるつらさよりも“出会ってくれた幸せさ”に転換された。すごく自分の助けになったし、気が引き締まったような感覚がありました」と語った。
するとここで、司会者に発言を促された野田が「今日はここで歌わせてください」とひと言。客席が驚きに沸く中で、劇伴のピアノ演奏と「うるうびと」の弾き語りを披露した。野田が観客を前に「うるうびと」を歌うのは、これが初めて。丁寧なタッチで音を紡ぎ、優しい歌声を響かせる野田の姿をじっと見つめながら、小松と坂口は演奏に耳を傾ける。野田がサプライズパフォーマンスを終えると、小松は「すごい、すごすぎます」とつぶやき「超贅沢な時間だなと噛み締めちゃいました。感情を優しくえぐってくる感じというか。こんなに素晴らしい曲で映画に命を吹き込んでくれて、ありがとうございます」とコメント。坂口も「胸いっぱいになっちゃうというか……ねえ」と感極まった様子で「これが感想です(笑)」と笑顔を浮かべていた。
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