hideの命日にあたる昨日5月2日に神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールでトリビュートライブ「hide Memorial Day 2022 Sing along Live "Hi-Ho!"」が開催された。
「hide Memorial Day 2022 Sing along Live "Hi-Ho!"」は、約2年半ぶりに行われたhideのトリビュートライブイベント。1998年5月にhideがこの世を去って24年、今年のイベントにはhideと縁の深いアーティストが多数登場し、生演奏に乗せてhideの名曲をパフォーマンスした。イベント開催前日に盟友・YOSHIKI(X JAPAN)の参加が緊急発表され話題になったほか、SNSには著名人やファンによるhideを偲ぶメッセージが多数書き込まれた。このうち布袋寅泰は自身のSNSアカウントにhide愛用ギターであるFernandes製MGを改造した“GUITARHYTHM”ペイントギターの写真をアップし、「Hello Hide can you hear me? It’s me」と書き込んだ。会場では開演前にDJとして桃知みなみが出演し、hideやX JAPANの楽曲を流して会場を温めた。開演時間になると、まず「hide Memorial Day HISTORY 1999-2022」と題した映像がスクリーンに投影された。hideがこの世を去った翌年以降に行われたさまざまなメモリアルイベントや、2000年から2005年までhideが生まれ育った神奈川・横須賀に存在した記念館・hide MUSEUMの映像などが流された。
過去を振り返る映像が2022年になったところで、会場内にhideが1994年2月に発表した1stソロアルバム「HIDE YOUR FACE」のオープニングナンバー「PSYCHOMMUNITY」が流れ始める。そしてステージに立つdefspiralの生演奏に切り替わり、迫力のある壮大なギターインストが爆音で観客に届けられた。
この日のライブではdefspiralのMASATO(G)、RYO(B)、サポートメンバー・和樹(Dr)による演奏をバックに、多数のスペシャルゲストが次々に登場した。まず「Beauty & Stupid」が始まると、木村世治(ZEPPET STORE)、TAKA(defspiral)、CUTT(SPEED OF LIGHTS、shame)がステージへ。この3人はhideに見いだされ、hide主宰のレーベル・LEMONedに在籍していた経験を持つメンバーだ。3人が挨拶をしていく中、TAKAは「実際に声に出してシンガロングすることは叶いませんが、ハートで歌って、響かせていきましょう。最後まで楽しんで帰ってください!」とオーディエンスに呼びかけた。
転換映像をはさみ、ステージに緊急スペシャルゲスト・YOSHIKIが登場。YOSHIKIはスマートフォンのカメラで自撮りをしながらステージに現れ、「元気? そっか、(観客は)声出しちゃいけないのか。ひさしぶりだねえ。急遽、駆けつけることができて本当にうれしいです。みんな、拍手はしていいんだね? じゃあ思いっきりしよう!」とリラックスした様子で話し始める。そして「24年前の今日、hideが旅立っちゃってね……ああ、いきなりジーンときちゃった。でもこの24年間、みんながこうやって応援してくれるから、hideを忘れずにいてくれるから、hideも喜んでいる気がします。不思議だよね。24年も経つのにさ、hideのことをしゃべると涙が出てきちゃう。今日はすごく短い時間だけど、僕らの思いをhideに届けようか」と述べ、ピアノの前へ。「叫べないコンサートって初めてだな。みんなの声は心の中で聞くか。hideの曲をやるんだけど、ちょっと違う曲でもやってみようかな」と、X JAPAN「紅」のメロディを少し奏で、一旦演奏を止めてさらに話を続けた。「携帯電話、持ってる? ライト点けようか! 携帯禁止でも今は出していいよ」と観客に呼びかけてから、YOSHIKIはhideが亡くなって24年であることを噛みしめるように話していく。そして「ここに駆けつけていろんな話をしようと思ったんだけど、(胸がいっぱいで)できなくなっちゃった。言葉でしゃべるよりもメロディで届けてみようか」と話してから、真っ赤な光を浴びてX JAPAN「紅」をピアノで演奏した。その後、YOSHIKIが優しく軽やかなタッチで「HURRY GO ROUND」を演奏すると、そこにhideのボーカル音源が重なり、それと同時にスクリーンに在りし日のhideとYOSHIKIの姿、さらに歌詞のタイポグラフィが表示され、hideの歌う「また春に会いましょう」というメッセージが観客の感動を誘った。演奏後にYOSHIKIは「hideの分まで一生懸命生きて、また会おうね」と涙ながらに話し、深々と頭を下げてステージをあとにした。転換中にはhideの実弟でhide事務所のヘッドワックスオーガナイゼーションの代表である松本裕士氏が姿を見せ、「サプライズでYOSHIKIさんに来ていただいて、ありがとうございました。私が今しゃべる予定じゃなかったけど、無音だったので(笑)。スタッフの方々には段取りをしていただいて感謝です。皆さん、声は出せないですけど、盛り上がって、楽しんで帰ってください」と挨拶した。
次なるゲストアーティスト・GRANRODEOは、defspiralとともに「TELL ME」「BACTERIA」の2曲をパフォーマンス。「TELL ME」のギターソロではe-ZUKA(飯塚昌明 / G)がdefspiralのMASATOとメロディアスなツインリードを奏で、hide楽曲の持つポップさを伝えた。「BACTERIA」ではKISHOW(谷山紀章 / Vo)がhideの得意としていたがなるような力強い歌声を聞かせたほか、hideのようにマイクをヘアブラシに見立てて髪を整える仕草を見せるなど、hideへのリスペクトを感じさせるパフォーマンスで観客を魅了した。
続いてはSPEED OF LIGHTSのCUTTが「50% & 50%」を熱唱。ステージを自由に動き回りながら手を掲げ、ライブを盛り上げた。次にdefspiralのTAKAが登場して「嘘つき」と言い放ち、インダストリアルナンバー「DOUBT」へ。「DOUBT」はhideが「50% & 50%」をレコーディングしている期間中、怒りの感情から「曲が降りてきた」という感覚であっという間に作り上げたというエピソードを持つ1曲だ。TAKAは自身のバンドであるdefspiralが奏でる重厚なバンドサウンドに乗せて、強烈なシャウトを響かせた。その後、ZEPPET STOREの木村世治は「FLAME」を披露。木村は、一介のインディーズバンドだったZEPPET STOREのデモテープをhideが偶然聴いたことをきっかけに、hideとの関わりを持つようになった。そしてhideはZEPPET STOREの楽曲である「FLAKE」にインスパイアされ、この「FLAME」を作ったという。木村はそんな自身と縁のある楽曲をエモーショナルに歌い上げ、大きな拍手を浴びた。
ライブ中盤、SOPHIAのフロントマン・松岡充は、ピンク色に染め上げた髪にhideが着用していたものと同じパーカーを着こなしたスタイルで登場し、「オハヨーゴザイマス!」とhideのように観客に呼びかけ、「ROCKET DIVE」を歌唱。途中からはマスクを着けてステージを降りてパフォーマンスし、オーディエンスを盛り上げた。続いてステージに現れたのは4月にデビューしたばかりの、Ryujiこと俳優・佐藤流司とPENICILLINのHAKUEIからなるロックバンド・The Brow Beat。2人は着物のような艶やかな衣装を身にまとい、「DICE」「ピンク スパイダー」の2曲をクセのある強烈な歌声で表現した。
休憩タイムにはhideが、難病と闘っていたhideファンの貴志真由子氏との交流を持つきっかけとなったボランティア団体である、メイク・ア・ウィッシュ オブ ジャパンの職員によるプレゼンと、CUTT、西崎ゴウシ伝説(Calmera)、ゲッターズ飯田、チャンス大城によるトークショーが行われた。ゲッターズ飯田はhideやX JAPANの事前情報なしに「YOSHIKIさんとToshlさんは騙されやすい」などと、自身の得意とする占いを披露。センシティブな話題である生前のhideについては「肩と首の周辺が悪かった。首の牽引を整体でしていたそうで、少しおっちょこちょいな部分があった」などと占いに基づいた独自の見解を示した。またチャンス大城は生粋のX JAPAN、hideの大ファンで、CUTTとゴウシというX JAPAN、hideについて博識な2人を相手にマニアックなトークを展開。チャンス大城は繰り返し「hideさんに会いたかったな」とhide愛を吐露していた。
ライブ後半にはまず木村、TAKA、CUTTの3人が登場。木村のアコースティックギターを伴奏にして「LEMONed I Scream」を披露した。続く柩(NIGHTMARE)はピンクヘアに迷彩パーカーというhideスタイルで「BACTERIA」をパフォーマンス。額にはhideが愛用していたインドのビンディシールを貼り付けるという徹底したhideをリスペクトした格好で、hideファンとの時間を共有した。
続いてのスペシャルゲストは、7月8日に公開されるhideを題材にした映画「TELL ME ~hideと見た景色~」で、hide役を務めたJUON(FUZZY CONTROL)。JUONはギターを抱えてロックの持つ華やかさと力強さを体現するかのような熱のこもったパフォーマンスを展開し、観客を多いに盛り上げた。熱い余韻が残る中、綾小路翔(氣志團)はパンキッシュなスタイルでステージに上がる。彼は2008年のhideトリビュートライブでDJ OZMAが披露したのと同じ楽曲である「ever free」を歌い上げ、投げキッスを飛ばした。パフォーマンス後に綾小路は、「こんばんは。アクアラインを超えて、ハマ(横浜)にやってまいりました。木更津の綾小路翔です、よろしく! あ、スマホのライト出して? 今は俺がいるから大丈夫」と先ほどのYOSHIKI発言を模倣し、「これがYOSHIKIが見てた景色、YOSHIKIの景色!」と喜んだ。さらに「hideさんのお話させていただければなと。俺とhideさんは会ったことがないです。会ったことがないんです。会えなかったんです。間に合わなかった。俺とhideさんの共通点には千葉の伝説、ジャガーの知り合いというつながりがあります。僕ら氣志團は15歳の頃、Xに出会って、憧れて、こんな片田舎で育っても世界の頂点を獲ってやるんだってがんばってきました。ジャガーさんの店でhideさんが働いていたそうで、俺はそこまで中学のときに面接を受けに行きましたけど、断られました」と笑う。さらに「しかし本当にhideが、ジャガーの周辺で働いていたのか。あれから何十年、なんとhideさんがジャガーさんの看板屋で働いていた映像を発見しました! 」と、噂が事実だったことをファンに報告。またステージ裏で圧倒的なオーラを放っていたためYOSHIKIには話しかけられなかったと述べつつ、PATAは「お、木更津のおにーちゃん」と気さくに話しかけてくれたことも明かした。綾小路は最後に「こんな時代をhideさんだったらどんなふうに変えてくれたんだろう。俺たちがhideさんの思いを受け継いで、最高のコンサート会場を作り上げていきたい。このあとも楽しんでいってください」と話し、次なる出演者にバトンを渡した。
続いてはJ(LUNA SEA)がステージに立ち、zilchの「ELECTRIC CUCUMBER」をソリッドなアレンジで披露。MCでは「俺たちLUNA SEAはhide兄にたくさんかわいがってもらいました。本当に今のLUNA SEAがあるのはhide兄がいるからで、感謝しかないです。その当時にhide兄からもらった熱いものは、ここに今もメラメラと燃えています。どんなに時間が経っても変わらないものがあるって証明してやるぜ、いいか!」と叫ぶと、さらに「hide兄は派手なことが大好きだった。今日をとっても喜んでると思うよ。派手にいこうぜ!」と話し、ステージにTAKAを呼び込む。Jは続けて「defspiralのみんなとは11年前にミュージカル(hideを題材にした舞台「ピンク スパイダー」)をやったよね。あのときからなんにも変わってないよね。今日も最高の夜にしてこうぜ! ぶち上げていこうぜ! 行けるかー!」と叫び、「ピンク スパイダー」を投下した。Jと競演したTAKAは「次の曲はhideさんと一緒に、心の中で歌ってください」とオーディエンスに呼びかけ、Jに続いてステージを去っていった。その後、hideのボーカル音源とdefspiralの楽器隊からなる「GOOD BYE」がファンに捧げられた。
イベント終盤に現れたスペシャルゲストは、PATA(X JAPAN、Ra:IN)。PATAはバンドのアンサンブルの中で一際大きなギターサウンドを奏でながら姿を見せ、「CELEBRATION」を演奏した。この曲では助っ人として木村、TAKA、CUTTがボーカルとして参加。お祭り騒ぎの盛り上がりを見せる中、木村は「すごい1日だね、hideさんがいて、YOSHIKIさんがいて、PATAさんも来てくれて。すばらしい1日ですね」と改めて豪華ゲストが続々と登場したイベントを振り返り、TAKAは「2年半ぶりの有観客ということで、待ちわびましたよね」とファンの思いを代弁した。短いトークのあと、先ほどと同じメンツで「MISERY」が届けられ、締めくくりにはステージにこの日のゲストが集結して陽気な曲調の「Hi-Ho」をセッション。ゲストたちがボーカルリレーをしつつ、ギターソロを弾くPATAの周りを綾小路らが囲むという、このイベントならではの豪華な光景が広がった。エンディングでの集合写真の撮影時には、自然と真ん中に誘導されたPATAが「長老みたいに扱うな」と発言しつつも、「ありがとうございましたー!」と話して、ほかの出演者とともにステージを去っていった。
「hide Memorial Day 2022 Sing along Live "Hi-Ho!"」2022年5月2日 パシフィコ横浜 国立大ホール セットリスト
01. PSYCHOMMUNITY / defspiral
02. Beauty & Stupid / 木村世治(ZEPPET STORE)、TAKA(defspiral)、CUTT(SPEED OF LIGHTS / shame)
03. HURRY GO ROUND / YOSHIKI(with hide)
04. TELL ME / GRANRODEO)
05. BACTERIA / GRANRODEO
06. 50% & 50% / CUTT
07. DOUBT / TAKA
08. FLAME / 木村世治
09. ROCKET DIVE / 松岡充(SOPHIA)
10. DICE / The Brow Beat
11. ピンク スパイダー / The Brow Beat
12. LEMONed I Scream(アコースティック ver) / 木村世治、TAKA、CUTT
13. BACTERIA / 柩(NIGHTMARE)
14. ROCKET DIVE / JUON(FUZZY CONTROL)
15. ever free / 綾小路翔(氣志團)
16. ELECTRIC CUCUMBER / J(LUNA SEA)
17. ピンク スパイダー / J、TAKA
18. GOOD BYE / defspiral with hide
19. CELEBRATION / PATA(X JAPAN、Ra:IN)、木村世治、TAKA、CUTT
20. MISERY / PATA、木村世治、TAKA、CUTT
21. Hi-Ho / 全員