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米津玄師、2年半ぶりツアー「変身」を完走“10万人”と共有した時間に「どれだけ得難いことか」

米津玄師(中央)
1年以上前2022年10月27日 15:04

米津玄師の全国ツアー「米津玄師 2022 TOUR / 変身」のファイナル公演が、昨日10月27日に埼玉・さいたまスーパーアリーナで行われた。

9月23日の東京・東京体育館公演を皮切りに全国5会場で全10公演が行われ、約10万人を動員した本ツアー。米津がツアーを実施するのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響で中断を余儀なくされた、2020年の「米津玄師 2020 TOUR / HYPE」以来約2年半ぶりのこととなる。待ちに待った“再会”に各地の公演が大きな盛り上がりを見せた中で行われたツアーファイナルにはスペシャルなゲストも登場。米津は全21曲を圧倒的なパフォーマンスで届け、集まった満員のファンと熱狂の音楽体験を共有した。

客電が落ち、ステージ両脇のスクリーンに映し出されたのは地下駐車場の風景。車で乗り付けたのは米津のオリジナルキャラクター“NIGI chan”で、彼はトランクから取り出したジョウロを手に、エレベーターへと乗り込んだ。ステージ中央で存在感を放つ縦型の巨大LEDビジョンの中で“エレベーター”の扉が開くと、そこにはジョウロを片手に持った米津の姿が。歓喜の拍手に包まれた彼が1曲目に届けたのは「POP SONG」。「変身」をキーワードの1つとして制作され、ミュージックビデオの中で自身も大きな“変身”を遂げたこの曲でライブの幕を開けた米津は、花道に設置されたベルトコンベアで優雅な移動を見せて観客の驚きを誘う。遊び心あふれる演出で冒頭からファンの心をぐっと掴んだ米津は「埼玉ー!」と声を上げ、さらなる熱狂を作り上げた。

絢爛なホーンのサウンドが2曲目の「感電」の始まりを告げると、米津が立つ大きなステージはきらびやかな電飾の光に包まれる。彼のバックに登場した辻本知彦率いるダンサーチームの軽やかなパフォーマンスも楽曲に華を添え、パワフルな米津の歌声はグルーヴィに聴衆の体を揺らした。花道の先のセンターステージに歩みを進め、リズミカルなステップを刻みながら歌声を響かせた「PLACEBO」を終えると「どーも、米津玄師でーす!」とハイテンションに語りかけた米津。「いやあ、人いっぱいいるね」と満員の客席を見渡すと「2年半ぶりのツアー『変身』、今日が正真正銘最後の日です。思い残すことのないように、ここにすべて吐き出して行こうと思うので、最後までお付き合いよろしくお願いします」と挨拶をした。

華やかなオープニングパートののち、続くセクションでも広大な空間をダイナミックに使う演出を駆使しながら、美しいステージングを披露してゆく米津。彼の圧倒的な歌唱と辻本の雄弁な身体表現が観客の目を奪った「迷える羊」ののち、「カナリヤ」では無数の光の線がステージ上に鳥かごを思わせる造形を作り上げる。その中に1人立ち、カナリヤイエローのスポットライトに静かに照らされた米津は、感情の機微を歌に乗せる豊かなパフォーマンスでオーディエンスを惹き付けた。カナリヤが飛び立った小さな高窓から柔かな光が差し込んだ「Lemon」を経て、「海の幽霊」では深いブルーの光のうねりによってアリーナ空間が広大な海へと姿を変える。「海獣の子供」のアニメーション映像がLEDビジョンに映し出され、ダイナミックな演出と荘厳なサウンドの中心に立つ米津は、スタンドから外したマイクを左手に強く握りしめながら歌に力を込めた。

この日2度目のMCを経て、ステージ上にバンドメンバーの中島宏士(G)、須藤優(B)、堀正輝(Dr)が姿を見せたところで、米津は「次やる曲は、こないだ結婚した友達がいて。そいつに捧げた曲です」と告げて菅田将暉への提供曲「まちがいさがし」をセルフカバーした。米津とバンドメンバーがステージ上に立ち並ぶ形で展開したライブ中盤には「アイネクライネ」「Pale Blue」と珠玉のラブソングが続けて披露され、瑞々しいボーカルとバンドサウンドが観る者の心を揺さぶる。そして、「調子どう、みんな? 楽しんでこうね」という呼びかけと共に始まった「パプリカ」では、ゆっくりと上昇してゆく円形ステージに腰かけ、美しい揺らぎのあるボーカルを響かせた米津。彼の歌声に呼び寄せられるように姿を見せたダンサーたちは無邪気にステージ上を駆け回り、茜色に照らされた空間には無数の紙吹雪がゆったりと宙を舞った。

ひさびさの開催となったツアー、観客が声を出せない状況下で、この日まで9公演を走り抜けてきた感想について「『どんなもんかな?』と不安な思いもあったけど、いざ始まってみればそんなに変わるもんじゃないな、と。要するに、自由に楽しんでくれたらっていう話ですね」とファンに伝えた米津。彼は「神経に触れるような出来事がまったくない人はいないと思う。『イヤだな』っていう瞬間は人生には絶えないけれど、今日くらいはそういうことがまったくない一夜を過ごせたら、なんていいんだろうと思うんです。人生はクソだけれども、今日がそうじゃなければいい。そう思いながらツアーを回ってきて、今夜もそんな思いが叶う一日であればいいと思います」と続け、1つひとつのライブに米津が込める温かな意気込みに、ファンは惜しみない拍手を贈った。

そんなMCののち、バンドが奏でるパワフルなロックサウンドを米津の厚みのあるボーカルがまっすぐに貫いた「ひまわり」が会場の空気感をがらりと塗り変えると、ステージ上のメンバーは「アンビリーバーズ」「ゴーゴー幽霊船」と疾走感あふれるアッパーチューンをドロップ。アグレッシブなボーカルワークと鋭利なバンドサウンドで、オーディエンスを力強く鼓舞してみせる。アリーナの空気を激しく震わせる熱演に応えるように、観客もハイテンションなクラップの波を発生させた。

曲を重ねるごとに高まってゆく熱気をさらに煽った「ピースサイン」を経て、「爱丽丝」では共同アレンジとギターでこの曲に参加した常田大希(King Gnu、millennium parade)が米津の呼び込みでサプライズ登場。曲中に突如として姿を見せた常田が思い切りギターをかき鳴らし、米津と向き合って演奏に没頭する姿に、客席はこの日一番の驚きと興奮に包まれた。曲を終えて短く挨拶を交わしたのち、米津は「彼が出てきたとなれば、みんなわかると思うけど……次が最後の曲です。みんなと一緒にやりたいと思います」と、「KICK BACK」をタイトルコール。テレビアニメ「チェンソーマン」のオープニングテーマとして米津が書き下ろし、常田がアレンジに参加したこのアッパーチューンで、ステージ上の面々は圧倒的な狂騒を作り上げる。思うがままにシャウトする米津、拡声器を通したエッジーなコーラスで煽る常田、それぞれの激情が混ざり合い昇華してゆく熱狂の中で、ライブ本編は締めくくられた。

熱を帯びた万雷の拍手を受けてのアンコールは、靴を脱いだ米津がステージ中央の“高座”に正座し、巧みな語り口で物語を紡いだ「死神」で幕を開けた。続く「ゆめうつつ」で、米津はシャボン玉が舞い上がる幻想的な空間にゆっくりと歩みを進め、柔らかな歌声で楽曲の世界観を表現。そして、最後のMCで中島に今回のツアーの感想を問われた米津は「コロナ禍の2年間、家にずっといた生活は苦じゃないタイプなんだけど、気付いたら体がバッキバキになっていたというか。“非人間的”な状態から人間に戻る旅だったなって感じがします。このツアーのおかげで人間に戻してもらった、それはみんなのおかげだし、ここに来てくれる人がいるっていうことはどれだけ得難いことなのかを痛感したツアーだったと思います」と、実感を込めた感謝をファンへと伝えた。

米津とダンサーチームがセンターステージへと歩みを進めた「馬と鹿」では、ベルトコンベアの上を進む人、立ち止まる人、それぞれの異なる歩幅がステージ上に群像劇を描き出す。ここまでの彩りあふれる20曲を、圧倒的な歌唱力と豊かな感情表現で聴き手に届け続けてきた米津が最後に贈ったのは「M八七」。ベルトコンベアの上を滑り、縦型ビジョンの中に浮かぶきらめきを見つめながら歌う佇まいは気高く、彼の包容力を感じさせる歌唱にオーディエンスはじっと聴き入る。最後に浮かび上がった米津のシルエットの後ろには無数の星がきらめく宇宙空間が。曲を終えると彼はエレベーターに乗り込み、止まない拍手に送られながらステージを去る。下降してゆくエレベーターが地下駐車場にたどり着くと、再び現れた“NIGI chan”は車に乗り込んで夜の街へと姿を消した。

米津玄師「米津玄師 2022 TOUR / 変身」2022年10月27日 さいたまスーパーアリーナ セットリスト

01. POP SONG
02. 感電
03. PLACEBO
04. 迷える羊
05. カナリヤ
06. Lemon
07. 海の幽霊
08. まちがいさがし
09. アイネクライネ
10. Pale Blue
11. パプリカ
12. ひまわり
13. アンビリーバーズ
14. ゴーゴー幽霊船
15. ピースサイン
16. 爱丽丝 w / 常田大希(King Gnu、millennium parade)
17. KICK BACK w / 常田大希(King Gnu、millennium parade)
<アンコール>
18. 死神
19. ゆめうつつ
20. 馬と鹿
21. M八七

撮影:太田好治 / 立脇卓 / 横山マサト / 八尾武志

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