2020年以降、目に見えて冷え込んだ音楽ライブシーンが、じわじわと活況を取り戻しています。音楽ナタリーではコロナ禍の無観客ライブ、席の間隔を空けた発声禁止のライブも積極的にレポートしてきましたが、やはり満員の客席に熱狂するオーディエンスがひしめく様子は感慨もひとしお。ライブを体感するのはもちろん、ライブレポートを見て読んで当日の余韻を反芻したり、足を運べなかったライブに思いを馳せたりするのが好きな読者も多いのではないでしょうか。音楽ナタリーにはライブレポートはもちろん、2007年2月以降のさまざまな音楽シーンにまつわる情報がアーカイブされています。最新の記事を楽しむもよし、好きになったアーティストの過去記事をたどるのもよし。この記事では、そんな音楽ナタリーの少し特殊な楽しみ方を紹介します。
取材・文 / 臼杵成晃
「◯◯を含む画像」一覧の不思議な快楽
ナタリーにはサイト内検索の機能があることをご存知でしょうか。PCやiPadのブラウザなら右上に、スマホのブラウザなら左上の三本線に触れると検索窓が出てきます。ここにアーティスト名など随意のキーワードを入れると、それに関連するニュース記事やインタビュー、関連画像などが出てきます。
音楽ナタリーは2007年オープンですから16年分、大量のアーカイブからキーワードに関する諸々がずらりと並ぶのですが、中でも「◯◯を含む画像」一覧はなかなかに壮観で、検索ワードをキャプションに含む画像が最新のものから順に、だんだん過去にさかのぼっていくように立ち現れ、ちょっとしたタイムスリップ感覚を味わうことができます。長年活躍しているアーティストであればあるほどたくさんの画像が出てきますが、ページをめくるたびにどんどん若くなっていく(笑)。ちなみにスマホ用のアプリ「マイナタリー」はスワイプに対応しており、「検索結果→画像→もっと見る」で検索結果の画像をどんどんめくっていくことができます。まずは試しに、自分が好きなアーティスト名を検索窓に打ち込んで確認してみてください。文字情報なくひたすら画像だけを眺めるのは不思議な快楽があり、16年の歴史があるナタリーの隠れた楽しみ方の1つと言えます。
そしてこの検索機能、キーワードを複数用意することで検索結果をさらに細かく絞り込むことができます。例えば「あれっ? 星野源が最初にマーク・ロンソンと共演したのっていつだっけ?」と思ったとき、「星野源 マーク・ロンソン」で検索すれば2018年12月のライブレポートが出てくるし、ついでに両者が別々に「SUMMER SONIC」に出演した2016年のニュースもヒットします。これ、ナタリーの記者もニュースやレポートを書くときに過去の情報と照らし合わせるために頻繁に使っています。
長々と機能説明をしてしまいましたが、ここからが本題。先日、なんの気なしにこの検索窓に「星名美怜 ジャンプ」と入力してみたところ、出てきたのが以下の画面。
ちょっと笑ってしまいました。すんごい飛んでる。私立恵比寿中学の星名美怜さんが2014年のシングル曲「ハイタテキ!」の曲中、1サビの直後にシャウトしながら垂直に飛び上がる場面はエビ中ファミリー(私立恵比寿中学ファンの呼称)の間ではすっかりおなじみ。過去のレポート記事にもたびたび登場します。上の画像一覧のほとんどはその場面(うち1枚はそれをマネている中山莉子さんでしたが)。立ち位置からほぼ垂直に飛び上がり、右腕はまっすぐ頭の上に。左手にはシャウトを拾うマイクを握り、腰を少し反り、足は両膝からほぼ180°、まるで胴体に足を格納する変形ロボのごとく曲げられています。この両足のインパクトについ目を惹かれてしまいますが、手指1本1本のしなやかな形も注目すべきポイントだと思います。
星名美怜、ジャンプのコツは?
アイドル界における象徴的な跳躍パフォーマンスといえば、やはりももいろクローバーZ・百田夏菜子さんの“エビぞりジャンプ”が思い浮かびます。当然「百田夏菜子 ジャンプ」で検索すれば、あの何かに擬態するような特殊なフォルムがずらり。この記事を執筆するにあたり、「ハイタテキ!」のあのジャンプについて星名さんに直接話を伺ったところ、事務所の先輩でもある百田さんのエビぞりジャンプはやはり意識したのだそう。
「最初の頃は夏菜子ちゃんのエビぞりジャンプに憧れて。身近にいる方が特技としてやっているのを見て、自分もジャンプ系のものを特技として持てたらいいなと思っていたんです。そしたら『ハイタテキ!』でジャンプする振りをもらったので『ここだ!』って。それで『この人飛んでる!』と印象に残る、自分なりのジャンプってなんだろう?というのを研究しました」(星名美怜)
激しく体を動かしながらの高音サビパートの直後にシャウトしながらのジャンプ。平然とやっているように見えますが、これはなかなかに大変なのでは。何か特殊なトレーニングを積んでいるのでしょうか。本人なりのこだわり、注意点、コツはあるのかと尋ねてみたところ、返ってきたのは以下の回答でした。
「滞空時間を長くするために、上でグッと力を入れてます。飛ぶ前は力を抜いてるんですけど、一番高いところでなるべく長くいられるように、グッと」(星名美怜)
グッと力を入れる。正直まったくわかりません。天性の運動能力と美しく見せるセンスでやりくりし、9年かけて磨いてきたのでしょう。「“ハイタテキ!ジャンプ”をコピーしたいという人にアドバイスするとしたら?」という質問には以下の答えが。
「とにかく事前の振りで助走をつけること。あとはなんだろう……腰とか、体のすべての点をビリビリとはがす気持ちでやると(笑)、あの角度になると思います。でも無理して体を痛めないように気を付けてください!」(星名美怜)
体のすべての点をビリビリとはがす気持ち。いよいよわかりませんが、これからも「ジャンプする星名美怜。」とキャプションの付いた画像は増え続けていくのでしょう(今夏のライブで「ハイタテキ!」を撮影するチャンスはありませんでしたが、最新の「ジャンプ美怜」写真はこちら)。1つの事例を軸に画像検索の楽しみ方を紹介してみましたが、皆さんそれぞれのお気に入りアーティストを検索して、サイト内をぐるぐると巡ってみてください。何か思わぬ発見があるかもしれません。