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フィッシュマンズが未来に向けて音楽奏でた「WIND PARADE」初日 豪華ゲスト迎えたセッションも

フィッシュマンズ、ハナレグミ、高城晶平、マヒトゥ・ザ・ピーポー、Syunko Sekiguchi。(Photo by Kana Tarumi)
約1年前2023年09月16日 9:06

9月9日と10日に埼玉・秩父ミューズパークで野外音楽イベント「WIND PARADE '23」が開催された。この記事では1日目の公演の模様をレポートする。

「WIND PARADE」は「大空の下、風を感じながら楽しむ世代を超えたグッドミュージック」をテーマに昨年初開催されたライブイベント。日程を2日間に拡大して行われた今年は、1日目にcero、ハナレグミ、GEZAN、フィッシュマンズ、2日目にZAZEN BOYS、カネコアヤノ、七尾旅人、サニーデイ・サービスがそれぞれ出演した。台風13号の接近で荒天が予想された「WIND PARADE」初日の天気は曇り。快晴の下で各ライブアクトのパフォーマンスを観ることは叶わなかったものの、会場周辺にはさわやかな秋風が吹き、心地よい気温の中でのイベント開催となった。

cero

初日のトップバッターを務めるceroは、厚海義朗(B)、光永渉(Dr)、角銅真実(Per, Cho)、小田朋美(Key, Cho / CRCK/LCKS)、古川麦(Trumpet, Cho)というお馴染みのサポートメンバーとともに現れると、「Cupola」で力強く「WIND PARADE」の幕開けを飾る。そして「Yellow Magus」で客席に風を吹かせたかと思うと、複雑なリズムの重なりが独自のグルーヴを刻む「魚の骨 鳥の羽根」でオーディエンスの体を揺らし、陶酔を誘う電子音と高城晶平(Vo, Flute, G)の美しい歌声が溶け合う「Nemesis」を続けて会場を独自の世界で包み込んだ。8人はその後、「Fdf」「わたしのすがた」「Tableaux」「Poly Life Multi Soul」といったタイプの異なる楽曲を抜群のコンビネーションで次々と繰り出し、ライブ巧者ぶりをいかんなく発揮。そして高城の「このあとも健康に気をつけて『WIND PARADE』楽しんでください。ありがとうございました!」という挨拶ののち、「Angelus Novus」で会場を壮大かつ神秘的なムードに染め上げてパフォーマンスを終えた。

ハナレグミ

この日唯一の弾き語りアクトであるハナレグミは、ステージ中央に置かれた椅子に腰かけると「一時はどうなることかと思ったけど、台風の気持ちが途中で萎えちゃうことってあるんですね(笑)。今日は思う存分楽しんで」とリラックスした表情で話して「ぼくはぼくでいるのが」でライブの口火を切る。続くスーパーカー「Lucky」のカバーや「ハンキーパンキー」では、センチメンタルなムードの中で届けられる穏やかな歌声とアコースティックギターの温かな音色に、オーディエンスはじっくりと耳を傾けていた。そしてハナレグミが「明日は雨降ったりしないかな? 俺は明日の(七尾)旅人くんが心配だよ(笑)。旅人くんのために歌います!」と宣言して披露した「明日天気になれ」で大合唱を生み出すと、雲の切れ間から差し込んだ光がステージを照らし、野外イベントならではの自然の演出に会場は大いに盛り上がった。ハナレグミはその後も観客とのコミュニケーションを楽しみながらライブを進行。最後は「Smile」を優しく歌い上げ、シンプルながらも充実したステージを締めくくった。

GEZAN

少しずつ日が傾き始めた頃にステージに現れたのはGEZAN。彼らは「Free Refugees」でライブ開始の狼煙を上げると、続く「赤曜日」で会場にカオティックな空間を作り出し、それまで「WIND PARADE」に流れていた穏やかなムードを一変させる。異様な熱気が漂う中、GEZANは「Soul Material」「EXTACY」「八月のメフィストと」「AGEHA」「東京」を立て続けに披露。さまざまなジャンルを飲み込んだオリジナリティあふれるサウンドが爆音で響き渡ると、その鬼気迫るパフォーマンスにあてられた観客は体を激しく揺らして音楽を楽しんだ。マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo, G)は終盤のMCで「鳶とかは明らかに風の軌道が見えていて、その風が見えるってことに憧れる。俺は成長が早いタイプだから『WIND PARADE』にまた来ることがあればもう地上にはいない。俺が早いか、あなたたちが早いかの競争ですよ」と観客との再会を誓って「JUST LOVE」を歌唱。オーディエンスを再び熱狂の渦に巻き込み、約60分のステージを風のように駆け抜けた。

フィッシュマンズ

「WIND PARADE」初日のトリを務めるのはフィッシュマンズ。茂木欣一(Dr, Vo)、柏原譲(B)、HAKASE-SUN(Key / LITTLE TEMPO、OKI DUB AINU BAND)、関口“ダーツ”道生(G)、原田郁子(Vo / クラムボン)、木暮晋也(G / ヒックスヴィル)がサウンドチェックで姿を見せると、フィッシュマンズのステージを心待ちにしていたファンから悲鳴にも似た歓声が上がる。メンバーはボーカルを抑えた「土曜日の夜」でそれぞれの感触を確かめるように音を重ね、茂木の「皆さんこんばんは! ザ・フィッシュマンズ!」という言葉を合図に「SEASON」でライブ本編に突入。続く「MAGIC LOVE」では、茂木の表現力豊かなボーカルと原田のみずみずしいコーラス、腕利きのメンバーが紡ぐ浮遊感漂うサウンド、体の芯まで響くような音圧が会場全体を支配し、観客を一気に異次元へと導いた。

「次に演奏する曲は30年前にできた曲です。でも、もはや何年前に作られたとかどうでもいいと思っていて、みんなが生活の中でフィッシュマンズの音楽を口づさんでくれていたら何よりうれしい。僕は信じています。この曲はこれから何十年も何百年も、いろんな人々がふとしたときに口ずさんでくれるんじゃないかって」と茂木が告げて披露したのは「いかれたBaby」。フィッシュマンズのどこかセンチメンタルな演奏と美しいライティングが相まって、夜のミューズパークには神秘的な光景が広がっていた。ライブ終盤、ハナレグミを迎えて「WALKING IN THE RHYTHM」「ナイトクルージング」の2曲を届けたフィッシュマンズは、さらに「Weather Report」で高城とマヒトを呼び込む。原田、ハナレグミ、高城、マヒトの4人はこの豪華セッションの中、海を泳ぐ魚のようにゆらゆらと体を揺らしながら言葉を重ねていく。ここではマヒトが「こちら地球、応答願いします / こちら日本、応答願いします / こちら世界、応答願いします / こちらの現状エアドロップします」とオリジナルの詞を付け足すなど、ただ原曲を回顧するのではなく、現在のフィッシュマンズを感じさせるパフォーマンスが繰り広げられた。

そして茂木は「最後に1曲やりたいんですけど、僕らの未来を手伝ってくれるゲストに入ってもらいます!」と告げて、白いワンピース姿の少女をステージに呼び込む。その少女が関口“ダーツ”道生の娘・Syunko Sekiguchiであることが明かされると、このサプライズに会場は大きなどよめきと歓迎の拍手で包まれた。フィッシュマンズとSyunkoは最後に初期のナンバー「Future」を未来に向けて丁寧に奏で、晴れやかな雰囲気の中で「WIND PARADE」の初日を締めくくった。

このイベントの模様が、12月にWOWOWプラスで独占放送されることが決定。詳しい放送日は追ってアナウンスされる。

「WIND PARADE '22」1日目 2022年9月9日 秩父ミューズパークセットリスト

cero

01. Cupola キューポラ
02. Yellow Magus
03. 魚の骨 鳥の羽根
04. Nemesis ネメシス
05. Hitode no umi 海星の海
06. Fdf エフ・ディー・エフ
07. Waters
08. わたしのすがた
09. Tableaux タブローズ
10. Poly Life Multi Soul
11. Angelus Novus アンゲルス・ノーヴス

ハナレグミ

01. ぼくはぼくでいるのが
02. Lucky
03. ハンキーパンキー
04. 明日天気になれ
05. アクアマリンのままでいて
06. 音タイム
07. 深呼吸
08. 家族の風景
09. Smile

GEZAN

01. Free Refugees
02. 赤曜日
03. Soul Material
04. EXTACY
05. 八月のメフィストと
06. AGEHA
07. 東京
08. 誅犬
09. Shangri-Ra
10. Deep breath
11. DNA
12. JUST LOVE

フィッシュマンズ

01. SEASON
02. MAGIC LOVE
03. バックビートにのっかって
04. 頼りない天使
05. いかれたBaby
06. Smilin' Days, Summer Holiday
07. WALKING IN THE RHYTHM(フィッシュマンズ×ハナレグミ)
08. ナイトクルージング(フィッシュマンズ×ハナレグミ)
09. Weather Report(フィッシュマンズ×ハナレグミ×高城晶平×マヒトゥ・ザ・ピーポー)
10. Future

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