アニメーション映画「劇場版シティーハンター 天使の涙(エンジェルダスト)」の大ヒット御礼舞台挨拶が、作品の舞台である新宿の東京・TOHOシネマズ 新宿で本日10月7日に開催され、小室哲哉、総監督のこだま兼嗣、音響監督の長崎行男、制作プロデューサーの若林豪が登壇した。
「『Get Wild』のイントロが流れてるときに、ぜひ会話をしてみてください」
小室はTM NETWORKとしてこの映画のために、オープニングテーマ「Whatever Comes」や挿入曲「DEVOTION」「Angie」といった複数の新曲を制作。エンディングテーマはテレビアニメ第1シリーズのエンディングテーマでありTM NETWORKの代表曲である「Get Wild」が使用されている。「Whatever Comes」は9月18日付のオリコン週間シングルランキングで初登場10位にチャートインしており、「Get Wild」が9位になった1987年を皮切りに、TM NETWORKは1990年代、2000年代、2010年代、2020年代とすべての年代でシングルがトップ10入りしたことになる。この記録について小室は「最初にトップ10入りしたのも『Get Wild』ということですし、『シティーハンター』のおかげです」と感謝した。
続けて「Get Wild」について、こだま監督が「ラストカットでイントロが流れるときに、画面を止めて引くというのをやったら、思った以上にカッコよかったんです。絵が全部止まってるにもかかわらず生きてるような感じがして。それ以来ずっとその手法でやり通そうと決めました」と秘話を明かすと、小室は観客に「あの静かなイントロが流れてるときに、皆さんぜひ会話をしてみてください。友達とでもご夫婦でもお子さんとでもいいです。『帰りにアイス食べていこう』みたいな会話でも、急にドラマチックになるんですよね。あのイントロには不思議なマジックがあるんです。今でいうとエモくなるというか」と呼びかけた。
「極限状態みたいなバトルシーンでも、真剣に闘ってる人にとっては静寂」
また、すでに観た人の間で「オープニングが始まった瞬間から興奮する」という評判になっているという話を聞いた小室は、「劇伴という言葉の通り、音楽を映像に合わせていくものなんですけども、『天使の涙』に関しては特に、音に映像もハマっているんです。どっち側から見てもフィットしてる感じがすごくする。スタッフの方に音楽愛がとてもおありになるんだろうなと思いました」とその理由を推測。若林プロデューサーはオープニングテーマ「Whatever Comes」について「小室さんと、作詞の小室みつ子さんの作品への寄り添いをすごく感じさせてくれる曲」と感想を述べ、歌詞に出てくる「エアプレーン」という言葉などが物語とリンクしていると言及。「シナリオを読んでいただいていろいろ考えてくださったのかが気になります」という若林プロデューサーの問いに、小室は『小室みつ子さんは脚本を読むのが苦手で、『てっちゃんに説明してほしい』という電話がありまして。『今日は遅いんで明日また改めて』とお願いして、翌日お話しました。オープニング曲なんですけど、最後のエンディングまで全部説明しました」と意外な制作エピソードを明かした。
こだま監督はアニメーションと音楽の関係について「僕の場合、アニメ映像は音楽と合わせてやっと完成するという考え方をしている。音楽がないと完成しない」と主張し、「今回はクライマックスでかかる曲があまりにも素晴らしかった。映像に音をつけてみたところ、あまりの感動に声を出して拍手してしまった。感動で声が出たのは50年やってて初めて」と挿入曲「Angie」を絶賛。7音しか使われていないこの曲は小室の作品としては珍しくシンプルであり、バトルシーンで流れる曲としては意外な雰囲気だが、これについて小室は「極限状態みたいなバトルシーンだと、爆音みたいないろんな音が実際は出てるとしても、真剣に闘ってる人にとっては無音で、息遣いも聞こえてくるような静寂なんじゃないかなと思って。映画によっては爆発音に負けずにさらに上を行くような壮大なオーケストラを付けることもありますけど、僕は逆で、そこにいる人にしかわからない音をイメージしました」と解説した。このことに関してはこだま監督も「僕としてはこのシーンには暗くて重くハードな曲が来ると思っていたんです。ところがキャラクターに寄り添ってくれるような曲だったので、とてつもなく驚きました」と振り返っていた。