YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで11月17日から11月23日にかけて集計されたミュージックビデオランキングのトップ100の中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、4位にYOASOBIの「Biri-Biri」が登場した。この曲は、Nintendo Switchソフト「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」の発売1周年を記念して生まれた楽曲。武田綾乃が執筆した同作品を原案とする、オリジナル短編小説「きみと雨上がりを」のインスパイアソングとなっている。歌詞の中に、歴代のポケモンゲームシリーズのタイトルが入っていたり、ロービットな電子音がちりばめられていたりと、随所にポケモン愛が感じられるので、プレイヤーなら誰しも胸が熱くなること間違いなし。
16位には、“全身に毒が広がっても「君」のそばで耐えることを誓う”というストーリーを描いたENHYPENの「Sweet Venom」が初登場。MVではマネキンのようにじっと立っている人物を撮影する「マネキンチャレンジ」を活用。時間が止まった空間に閉じ込められたメンバーの姿を通じて、少年の永続性を隠喩的に表現している。
先週から大幅に順位を上げたのは、71もランクアップした17位の緑黄色社会「Be a flower」と、42もランクアップした30位の&TEAM「War Cry」。ほかにも、15歳のシンガーソングライター・tuki.の「一輪花」が、初登場75位にランクインしている。日本と韓国の音楽シーンを代表するアーティストの楽曲が目立った今回は、下記の3曲をピックアップした。
Hiromitsu Kitayama「乱心-RANSHIN-」
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場25位
今年8月31日付けでKis-My-Ft2を卒業し、ジャニーズ事務所(現SMILE-UP.)も退所した北山宏光。9月にTOBEに合流した彼は、初となるソロシングルを配信リリースした。作詞は北山が自ら担当。MVではサイバーパンクを彷彿とさせる近未来的な映像に、スラップ奏法を駆使したアグレッシブなサウンドが映える。
後半では中国の伝統楽器・二胡のような雰囲気のある旋律にコーラスが加わり、エキゾチックな顔を覗かせるという実験的なアプローチも垣間見ることができる。歌詞に「新時代」というワードが特徴的に使われているように、北山の新たな音楽人生の一歩にふさわしい、勢いと新鮮味にあふれる曲に仕上がっている。
syudou「やっちゃったわ」
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場40位
今年4月に、自身最大規模の会場となる千葉・幕張メッセイベントホールにてワンマンライブ「syudou Live 2023『我武者羅』」を成功させて、6月にはシンガーソングライターとしての1stアルバム「露骨」を発売。8月には初となるツアー「syudou Live Tour 2023『露骨』」を開催したsyudou。「やっちゃったわ」は彼が9月に発表したボーカロイド曲「やっちゃったわね」の対になる楽曲で、早くも「やっちゃったわね」を追い越すほどに再生数を伸ばしている。
全体的に漂う退廃的なムードと、“タバコ”というフレーズが印象に残るこの曲。MVの監督は「インザバックルーム」や「ビターチョコデコレーション」のMVを手がけたヤスタツで、こちらも主人公がタバコを持っているシーンがフィーチャーして使われている。サビの「なんかヤになるわ」はタバコ=ヤニという、言葉遊びなのかもしれない。ミディアムテンポでありながら、曲が進むたびに胸が高ぶる巧みなアレンジは、さすがsyudouである。
JO1「Itty Bitty」「mad in love」
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場60位
※YouTubeミュージックビデオランキング初登場95位
JO1の3rdアルバム「EQUINOX」に収録されている、ユニット曲2曲がランクインした。「Itty Bitty」は川尻蓮、白岩瑠姫、川西拓実、木全翔也、大平祥生、豆原一成が参加している、煮え切らない男性の恋心を代弁したヒップホップソング。MVは歌詞の内容に反して、力強い大きな動きと目まぐるしくフォーメーションが変わるダンスが魅力だ。
一方、「mad in love」には與那城奨、河野純喜、佐藤景瑚、金城碧海、鶴房汐恩が参加。心が張り裂けるほどの愛する人への思いを歌った、ポップス、ロック、エレクトロの要素からなるラブソングとなっている。こちらのMVはドラマ仕立てで、歌詞と呼応するように主人公の恋心が加速していく演技が見どころ。「Itty Bitty」はダンス、「Mad In Love」はボーカルに比重を置いていて、どちらも異なる個性を放っている。
JO1のYouTubeチャンネルでは、メンバーのリアクションを見たり撮影時のエピソードを聞いたりできるので、そちらも合わせてチェックいただきたい。