加藤シゲアキ(NEWS)の長編小説「なれのはて」が第170回直木賞の候補作に選出され、これを記念した記者会見が昨日12月13日に東京・講談社にて行われた。
「なれのはて」概要
10月に刊行された「なれのはて」は、1枚の不思議な絵画の謎を追うミステリー作。第二次世界大戦下の終戦前夜、日本で最後の空襲と言われる「土崎空襲」を受けた秋田市を舞台に、大正から令和までのさまざまな時代を力強く生き抜く人々の姿が38万字を超える大長編で描かれている。
2度目の直木賞ノミネート
2020年刊行の前作「オルタネート」が直木賞候補作となり、吉川英治文学新人賞を受賞した加藤。今年10月に行われた「なれのはて」の発売記念会見では、「直木賞を狙っていますか?」という質問に「とんでもない質問ですね!」と目を丸くし、「文学賞のことはなるべく考えないようにしています」と苦笑いしていた。今回の会見冒頭で加藤は「2カ月前にもここで会見をさせてもらったのですが、またここで会見をできることを喜ばしく思っております」と声を弾ませつつ、直木賞ノミネートについて「前作に続いて2作連続で候補にしていただけるのは光栄なことですし、周りの方や家族、編集の方が喜んでくださったので、『さすが直木賞だな』と、直木賞の力を改めて感じました」とコメントした。
勘がいい男・小山慶一郎
12月20、21日に東京・東京ドームで単独公演を開催するNEWS。加藤がノミネートについて聞いたのは本公演のリハーサル中だったという。彼はその際のことについて「本当は発表のタイミングまで人には言わないでくれと言われていたんですけど、リハーサル中に僕が急に抜けたものですから、メンバーたちは『なんかあった?』みたいな感じになって。特に小山慶一郎という男は勘がいいので、『なんか選ばれた?』と。もう見つかった犯人みたいな状態になって(笑)。内々の話ということで、その場でメンバーには伝えました。みんな『おめでとう』とすごく喜んでくれましたね」と振り返った。
土崎空襲を経験した祖母からの太鼓判
さらに加藤は、土崎空襲を実際に経験した自身の祖母とのやりとりについて邂逅。「90歳になる祖母に『3日で読んだ。面白かった』と言ってもらって。祖母の太鼓判があるというのはうれしいなと思います。執筆後の取材という形で秋田にお邪魔させてもらって、土崎空襲の話を聞きました。身内だからこそ余計に戦争の話を聞くのは心苦しかったんですけど、そのときの祖母は10歳で、3、4歳の妹をおぶってあぜ道で空襲を見たと。祖母から実際に戦争体験の話を聞けたことだけでも、この作品を書いた意味はあったなと思いました」と真摯な表情で語った。また加藤は本作の執筆に臨むにあたっての思いを「次書くものは、イチ読者というか、30代半ばの本が好きな男として、自分が読んで楽しめるもの、そして自分が書きたいもの、自分が書かなくてはいけないものがあるんじゃないかっていうのは考えていました」と明かす。
記者から「小学生時代は国語が苦手だったそうですが、そんな昔の自分からすれば今の状況はどう感じると思いますか?」という質問が飛ぶと、「信じられないと思います。本は好きでしたけど、僕より本をたくさん読んでる人はいましたし。そもそも自分がタレント活動をしながら本を書くなんて思っていなかったので。作家としてデビューしてから11年経つんですけど、11年前の自分からしても本当に信じられないことだと」とコメントした。
本を読むのが苦手な人へ
さらに若い世代へ向けてのメッセージを求められ、加藤は「僕は本が大好きですし、本屋さんも大好きです。でも誰しもが必ず本を読まなくてはいけないとは思ってないんですよ。僕にとって本がある生活はとても幸せですけど、本がなくても幸せな人はたくさんいるでしょうし、人それぞれ自分の人生が幸せであることが最も大事だと思うんです。ただ、本でしか救われないこととか、本だから癒されることとか、本だからできることっていうのがたくさんあると思っていて。もしまだ本を読んだことがない人や、本を読むのが苦手だと思っている方がいるとしたら、そういう方にこそ『なれのはて』を読んでほしいですね」と述べた。
アイドルとしても作家としても誠実に
アイドル活動と作家活動の両立の苦労について問われた加藤は苦笑しつつ「これがね、よくわからなくなってきていて。両立してることが普通な感覚というか。もちろん締め切りには追われるんですけど、それで仕事をセーブするということもありませんし。できうる限りは両方続けていきたいなと思います」と宣言。さらに「作家活動をすることでグループに貢献できていると思いますか?」と聞かれ、「結果的にそうなるといいなと思ってはいます。作家として活動するときは執筆業に誠実に向き合うように、多くの作家の方に失礼がないようにしていて。僕は新人賞を獲って文芸界にデビューしたわけじゃないので、そういう意味ではちょっとこう、横入りしたような感覚や後めたさがずっとあったんです。でも『オルタネート』のときも先輩の作家方をはじめ、多くの方が温かく迎えてくれて。皆さんの優しさを受けて、自分の価値を自分で決めつけてたなと反省しました。そして誠実なのはもちろんNEWSというグループでも同じで、歌やダンスに手を抜かない。仕事に対して誠実にというのは共通してますけど、それぞれちゃんとがんばるという感じですね」と自身のスタンスについて説明した。