松下洸平が3月14日に東京・東京ガーデンシアターで全国ツアー「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 ~R&ME~」の最終公演を開催した。
4万人動員のツアー、満員のファイナル
昨年12月にリリースされた2ndフルアルバム「R&ME」を引っ提げ実施されたこのツアーでは、全国12の会場で行われた14公演がすべてソールドアウトとなり、約4万人を動員。松下にとって過去最大規模となったツアーを締めくくる東京ガーデンシアターの客席も満員のファンで埋め尽くされ、会場は開演前からにぎやかな期待感にあふれていた。
ホール内が暗転すると、ステージ奥のビジョンに映し出されたオープニングムービー。コラージュのように都会の風景を切り取ったその映像の中に「R&ME」のロゴをモチーフにしたステッカーやグラフィックがさりげなく浮かび上がる。車に乗り込む松下の姿を捉えたラストシーンを経て、1曲目に鳴り響いたのは「All Day Long」。さっそうとした足取りでファンの前に姿を見せた松下は、バックバンドが鳴らす軽やかなサウンドにさわやかな歌声を乗せ、楽しげなムードの中でライブの幕を開けた。
仲間との楽しいひとときを穏やかに歌い上げる「Magical Hour」では、弾けるようなラップに包容力を感じさせる豊かなボーカルと、巧みな歌い分けで楽曲を鮮やかに表現した松下。そんな彼の呼びかけに応えたオーディエンスのシンガロングが大きな高揚感と一体感を醸成した「MUSIC WONDER」を終えると、松下は観客に挨拶し「ここまで来られたのは、集まってくれた皆さんのおかげです。今日は悔いのないよう、楽しんでいってください!」と語りかけた。
ソファに座って、旅の仲間と振り返ったツアーの思い出
「R&ME」について「大好きなR&Bというジャンルをぎゅっと詰め込んだ1枚」と表現した松下は「せっかくライブなので、スペシャルな感じでアルバムの中の曲をお届けしたいと思います」と、ステージを次のシーンへと進める。ライブならではのバンドアレンジで披露された「This is my love」「You&Me」の2曲は彼の言葉通り、スキルフルな演奏と松下の繊細なボーカルの美しい重なりを堪能する時間に。「You&Me」では、演奏が進むにつれ熱を帯びていくバンドサウンドに松下のソウルフルなロングトーンが響き、ステージから放たれる確かな熱量は聴衆の体をゆったり心地よく揺らしていた。
柔らかな雨音と短い映像を挟んだのち、ライブ中盤にはアコースティックアレンジで楽曲が披露される場面も。バンマスのカンノケンタロウ(G)と一緒に革張りのソファに腰掛けた松下は、ウッドベースを構えるTakayasu Nagai(B)、パーカッションの海老原諒(Dr)との4人編成で「リズム」「BET」「FLY&FLOW」を届ける。会場全体がリラクシンなムードに包まれたこのパートでは各地をともに旅してきた仲間たちの会話にも花が咲き、4人はツアーの思い出を振り返ったり、フリフラ(制御型リストバンドライト)を使って客席と“光のコミュニケーション”を取りながらこのひとときを楽しんだ。アコースティックパート3曲目の「FLY&FLOW」では、松下もキーボードの弾き語りで演奏に参加。客席一面に灯る光を見上げながら、グルーヴィに楽曲を歌い上げた。
「終わりかけのときに気付くから、なかなかやめられないんです」
「まだまだ歌い、踊り足りなくないですか!?」。松下の力強い煽りと海老原による威勢のいいカウントを合図に、「Way You Are」でライブは後半戦へ。心踊るサウンドに乗せて松下が観客のクラップを誘うと、続く「KISS」ではスモークがステージ上を漂う幻想的な演出と、感情の機微を鮮やかに乗せた松下のボーカルワークがオーディエンスの心を奪う。まばゆい光の演出とパワフルなバンドアンサンブルを貫くように力強い歌声が響いた「Wake」で会場の熱をいっそう引き上げた松下は、「FLYFLY」でさらに観客の声を求める。まっすぐなメッセージをメロディアスなフロウに乗せたかと思えば、サビでは突き抜ける歌声を聞かせた松下。音に身を委ねながらもしっかりとオーディエンスと向き合い、場を牽引する彼のショーマンシップは、会場の確かな一体感を作り上げていた。
「終わる頃にやっと『楽しいな』とか『音楽っていいな』とか気付く。いつもそうなんです。終わりかけのときに気付くから、なかなかやめられないんです」。本編ラストの楽曲を前にそう言って笑った松下は「ここからさらに、次のステージへ、航海するような気持ちで進んで行きます。皆さんを乗せて。また一緒に遊びましょう」とファンに思いを伝えた。そんなMCののちに届けられた「君を想う」は、「長く歌い続けられる曲を」という彼の思いから作られた「R&ME」のリード曲。ドラマティックなサウンドの上、1つひとつのフレーズに思いを込めて張り裂けそうなほどの感情を表現する松下。そんな彼の迫真のパフォーマンスを、オーディエンスは息をのむように見つめていた。
“たんぽぽの綿毛”に思いを重ねて
「君を想う」の深い余韻を引きずりつつも、聴衆は本編が終わるなり大きな声でアンコールを求めた。これに応えて再びステージに姿を見せた松下はピアノ伴奏による「たんぽぽ」でライブを再開させ、柔らかなムードで会場を包み込む。そして曲を歌い終えると、彼は「綿毛は咲く場所を選べないけど、誰かの元へ届いて、その人のそばで咲くことができる。僕たちの曲作り、音楽作りに似ているなと思いました。どれもこれも、ふっと綿毛のように飛ばしてみなさんの元に届くように一生懸命作ってますので、これからも応援よろしくお願いします」と、楽曲に自身の思いを重ねた。そして、続く「STEP!」で、会場はこの日一番の一体感に包まれる。コロナ禍にデビューした松下にとって、今回の「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 ~R&ME~」は初めて観客の声出しが叶ったツアー。「いつかみんなで歌えたらと思ってこの曲を作った」という彼の思いに応えるように、オーディエンスは松下と一緒に何度も楽曲を口ずさみながら、ハンドウェーブでひとつになる光景を作り上げた。コロナ禍に抱いていた夢が現実になった瞬間に感慨深げな表情を浮かべながら、松下はラストナンバーとして「ノンフィクション」を届けてツアーを締めくくる。「皆さんのおかげで素晴らしい景色を見られました。ありがとう!」と伝えた彼は「また会いましょう!」と再会を約束し、笑顔でステージをあとにした。
セットリスト
「KOUHEI MATSUSHITA LIVE TOUR 2024 ~R&ME~」2024年3月14日 東京ガーデンシアター
01. All Day Long
02. Magical Hour
03. MUSIC WONDER
04. This is my love
05. You&Me
06. リズム
07. BET
08. FLY&FLOW
09. Way You Are
10. KISS (Sam Ock Remix)
11. 漂流
12. Wake
13. FLYFLY
14. 君を想う
<アンコール>
15. たんぽぽ
16. STEP!
17. ノンフィクション