5月16日は松尾芭蕉が奥の細道に旅立ったことから“旅の日”に制定されています。多くの人にとって人生における大切な要素である“旅”。5月16日にスタートしたこの連載では、旅好き / ツアーなどで各地を飛び回るアーティストに、旅先での思い出やとっておきのスポットを教えてもらいます。第2回は、さまざまな街の情景を想起させる2ndフルアルバム「街よ街よ」を4月にリリースしたばかりの橋本絵莉子さんが登場。橋本さんセレクトの“移動中に聴きたい旅プレイリスト”とともにお楽しみください。
構成 / 丸澤嘉明
これまでに旅した場所で、特に印象に残っている場所とその理由
6年くらい前に行った北海道の小平町にある、海沿いのキャンプ場です。
東京や徳島の感覚だとまだまだ猛暑といわれるような時期に行ったのだけど、さすが北海道、長袖じゃないと風が冷たくて、だけど太陽から届く熱はやっぱり夏で、どっちに従えばいいか迷う不思議な気候でした。これまでにも日本海は見たことがあったのに初めて見ているような気持ちになって、この海の向こうはロシアなんやなあと目を凝らして眺めました。
ひたすらオロロンラインを車で走って、たどり着いたお店で食べた海鮮丼の素晴らしさたるや。ホタテが想像の3倍は分厚くてびっくりしました。また行きたいなあ。
旅先で実際にあった忘れられないエピソード
母と北アルプスの涸沢カールまで登ったときのことです。
私は東京から、母は徳島からそれぞれ夜行バスに乗り、上高地の登山口で待ち合わせしました。夜行バスなのでいつも日中はコンタクトだけどメガネで乗車。朝バスを降りて母と合流した後、その場ですぐにコンタクトに変え、登り始めました。
山登り初心者の私には非常にきつく、雨が降って足場も悪くて大変だったけど、その分無事に着いたときの爽快感が半端なくて、涸沢ヒュッテで食べた夕食のコロッケがおいしすぎて疲れが吹き飛びました。
いざ、寝る時間になって。
メガネがない。どこを探してもない。
しょうがないからあきらめて、寝ました。
次の日、下山。足がうそみたいにカクカクしたけれど無事にバス停まで到着。
そして、メガネ発見。
昨日コンタクトに変えたときにバス停の柱にメガネを置いて、そのまま登山してしまったらしい。
日常に帰ってきたんやなとほっとしました。
本当は人に教えたくない、お気に入りのスポットやお店
川崎市にある、川崎水族館(カワスイ)です。
商業施設の中にある珍しい水族館。川崎市ならではの、多摩川に住んでいる魚がたくさん紹介されているし、いろんな展示の仕方があっていつ行っても楽しいです。
特にお気に入りなのは、猛毒蛙のブース。爬虫類は苦手だけど、いつも怖いもの見たさで遠くから見てしまう。ありえないくらい発色のいい黄色に黒い点々の模様がついた蛙。誰かに塗られたわけじゃないのが本当に不思議。わしらえっぐい毒持ってまっせ~(しかも天然でんねん)って感じで、いかに自分が弱い人間かを思い知らされます。
欠かせない旅のお供
前日まで着ていたパジャマです。いや、パジャマという名のTシャツです。
自宅の布団が大好きで、いかに旅先でも同じような雰囲気で寝るかが勝負なので、布団は持ち運べないからせめてもの思いでパジャマ。ここは自宅だ、と思い込めるようにがんばっています。
旅の魅力
「実はこんくらいの荷物でも意外と暮らせるんだよ」と教えてくれる行為です。
旅行やライブツアーのために持ち物をいろいろ準備して大きめの鞄に詰めて運び、旅をつつがなく終えて帰ってきたときにいつも思うのです。実際こんだけの荷物でいけるやん。鞄1つに入るもんで案外いけるやんて。
物であふれた家を見て毎回思います。
移動中に聴きたい旅プレイリスト Selected by 橋本絵莉子
01. The Wire / Haim
02. Get Me Away From Here, I'm Dying / Belle and Sebastian
03. Part Of The Band / The 1975
04. Cool About It / Boygenius
05. Wet Dream / Pacifica
橋本絵莉子
1983年徳島県生まれ。2000年に地元・徳島でチャットモンチーを結成し、ギター&ボーカルを担当。2005年にメジャーデビュー。2018年にその活動を"完結"させた。2019年9月にオフィシャルサイトを開設し、ソロ活動を開始。通販でのデモ音源CDシーリズのリリースを経て、2021年12月に1stソロアルバム「日記を燃やして」、2024年4月に2ndアルバム「街よ街よ」をリリースした。また楽曲提供やCMソングの歌唱などの活動も行っており、2024年6月7日公開の映画「違国日記」では劇中歌の作詞作曲を担当している。
橋本絵莉子公式サイト
橋本絵莉子 (@HashimotoEriko_) / X