藤原さくらの全国ツアー「Sakura Fujiwara Tour 2024 wood mood」が5月19日に東京・NHKホールでファイナルを迎えた。
会場に広がる「wood mood」の幻想的な世界
4月3日にリリースされた藤原にとって通算5枚目のフルアルバム「wood mood」。このアルバムはワールドミュージックをルーツに持つ藤原が石若駿をトータルのサウンドプロデューサーに迎え、ジャズミュージシャンの仲間たちとともに作り上げた意欲作だ。「Sakura Fujiwara Tour 2024 wood mood」は本作の発売に伴い、4月より全国5都市で開催された。藤原がNHKホールで単独公演を行うのはこれが初めてだったが、チケットは見事ソールドアウト。大勢の観客がステージ上で再現される「wood mood」の幻想的な世界観に存分に浸った。
バンドマスターの石若(Dr)をはじめ、松井泉(Perc)、渡辺翔太(Key)、Meg(Cho)、井上銘(G)、マーティー・ホロベック(B)といったバンドの面々とステージに登場した藤原は、鳥のさえずりが鳴り響く「Intro」を経て、アルバムの幕開けを飾る楽曲「my dear boy」を歌い始める。観客は柔らかな歌声と壮大なサウンドに包まれ、着席したままじっくりと演奏に酔いしれた。続く「巡」ではウッドベースやピアノの音がたおやかに躍動。最新アルバムの収録曲以外にも「コンクール」「Give me a break」などのブルージーなナンバーが披露され、「wood mood」の世界に自然と溶け込んだ。
藤原が語る“生と死”への思い
MCに入ると、藤原は「生と死」が1つのテーマになっているという「wood mood」について紹介しつつ、「初めてのコンセプチュアルなアルバムで、皆さんを森の中にいざなって森林浴してもらうみたいな、そんなツアーとなっております」と挨拶。自身に姪っ子が生まれたこと、石若にも子供が生まれたことに触れると、命の尊さをつづった「sunshine」を披露した。さらに彼女は「Close your eyes」「good night」などの最新アルバムの収録曲を続けて歌唱し、観客を心地よい音世界へと導いた。
公演中盤にはバンドメンバーによる濃密なセッションが繰り広げられ、会場内の空気がより一層熟していく。ライブが後半に入って披露された「daybreak」では「wood mood」のジャケットに描かれている葉やツタの模様が会場の天井と壁に投影され、楽曲の世界感が会場全体に広がった。また、藤原は祖父の死を経験したときの思いを語りながら「まばたきをするのも惜しむくらい、相手のことを見て、そういう時間の過ごし方をしていきたい」と口にし、「まばたき」を優しく歌い上げる。2022年にリリースされた原田知世のデビュー40周年記念カバーアルバム「ToMoYo covers~原田知世オフィシャル・カバー・アルバム」の収録曲で、藤原と石若の出会いのきっかけになった楽曲「早春物語」もセットリストに。ジプシーミュージック風のナンバー「spell on me」ではバンドメンバーたちがソロを順に奏でて大きな拍手を浴び、続く「Thanks again」で一旦ライブは幕引きとなった。
新曲「初恋のにおい」も披露
アンコールでは新進気鋭のアニメーター・高木麻穂の監督デビュー作であるショートアニメーション「初恋のにおい」に向けて書き下ろされた新曲「初恋のにおい」が初披露された。高木と対面での打ち合わせを何度も重ねながら、映像と合わせて楽曲の制作を進めていったという藤原は、歌声に乗せて初恋の甘酸っぱい香りを場内に漂わせる。そして「wood mood」に収録されているニーナ・シモン「I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」のカバーをラストに披露。観客のクラップが鳴り響く中、「Sakura Fujiwara Tour 2024 wood mood」は大団円を迎えた。
新曲「初恋のにおい」は各音楽配信サイトおよびストリーミングサービスにて配信中。藤原のYouTube公式チャンネルでは高木監督によるショートアニメーションが公開されている。
セットリスト
藤原さくら「Sakura Fujiwara Tour 2024 wood mood」2024年5月19日 NHK ホール
SE. Intro
01. my dear boy
02. 巡
03. コンクール
04. Give me a break
05. BITTER RAIN
06. sunshine
07. Close your eyes
08. 星屑のひかり
09. good night
10. daybreak
11. まばたき
12. 早春物語
13. Waver
14. spell on me
16. Thanks again
<アンコール>
17. 初恋のにおい
18. I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free
※高木麻穂の「高」ははしご高が正式表記。