南波志帆が6月29日に東京・BLUES ALLEY JAPANで初のディナーショー「THE NANBA DINNER SHOW~15th Anniversary~」を開催した。
“音楽の父”矢野博康が明かす衝撃の事実
2008年11月、矢野博康プロデュースによるミニアルバム「はじめまして、私。」でアーティストデビューを果たした南波。デビュー時はまだ地元福岡の学校に通う15歳の中学生だったが、昨年11月にデビュー15周年、今年の6月14日に31歳の誕生日を迎えた。デビューからの15年の間にやったことがないことを、と企画されたのがこのディナーショーだ。ショーはランチタイムとディナータイムの2部制で行われ、ランチタイムには南波が“音楽の父”と慕うプロデューサー矢野がトークゲストとして登場。南波が「今だからこそ聞きたい矢野さんへの15の質問」をぶつける形でトークは進行した。
大きな声で呼ばないと登場しない、というヒーローショースタイルで「矢野さーん!」と呼び込まれた矢野は、南波が用意した質問に次々と答えていく。南波と矢野は2018年のデビュー10周年企画「南波志帆10周年ファン感謝祭!ありが10トークショー」でも対談しているが、今回は一段とディープな話題が飛び出した。「楽曲制作での譲れないこだわりは?」という質問に対し、矢野は「黒歴史にならないようにというか。『こんな時代もあったけど、これはこれでいいよね』と思えるようにはしたかった。10代だと自分に主導権がないし、『こういうことがやりたい』と言っても『それはどうかな』って大人に言われるじゃない。せめて触れられたくない過去にはならないように考えてました」と回答。「一番手応えを感じている曲は?」の問いには、2012年12月発売のアルバム「乙女失格。」に収録されたバラード「カノープス」を挙げた。「カノープス」は作曲が矢野、作詞が土岐麻子というCymbalsコンビによる楽曲だが、矢野と土岐は南波の楽曲に数多く携わるのみならず、南波の高校の卒業式にも福岡の両親の代わりに立ち会っている。矢野が「一番の思い出は?」の質問にこの卒業式のエピソードを挙げ、「女子高に入ったのが初めてだったから……」と当時の心境を明かすと、南波は「そこにテンションが上がるんですか? 私の晴れ姿を見に来たのではなく?」と数年越しに判明した衝撃の事実に目を丸くした。
最後の質問「これからの南波志帆に何を期待しますか?」に、矢野は「哲学的な言い方になるけど、やめないんだったら続けてほしい。寿退社のようにやめる人もいれば、なんとなく嫌になってやめる人もいるじゃない。そういう日が来てもそれはそれだと思うんだけど、本心としては、多少波があっても続けていてほしいなと思いますね」とこれからの活動にエールを送った。矢野を送り出した南波は2人目のゲスト・松江潤を呼び込み、アコースティックミニライブへ。松江の演奏するギターに乗せ、新曲「ねこのうた」を含む4曲を披露した。
南波志帆がディナーショーを開く2の理由。
ディナータイムはアミューズ(小前菜)に2種のサーモンカクテルムース、オードブルに真鯛のカルパッチョ、メインディッシュに黒毛和牛サーロインのグリエというディナーショーならではのコース料理が用意され、観客は前菜に舌鼓を打ちながら南波の登場を待つ。まずはピアニストの半田彬倫が、続いてドレス姿の南波が客席を渡ってステージへ。ライブは土岐×矢野コンビによる2012年発表のバラード「たぶん、青春。」で幕を開けた。「最後まで楽しんでいってください」と挨拶した南波は、続けて「ストーリー」「クラスメイト」と初期のナンバーを歌う。さらに、堀込高樹(KIRINJI)作詞作曲のバラード「プールの青は嘘の青」、秦基博作曲の「髪を切る8の理由。」で澄んだ歌声を響かせた。
「めっちゃ食べてますねー。おいしそー。黒毛和牛の。食事ガチ勢の皆さんありがとうございます」と軽く客席をいじりつつ「今、ディナーショーをやってるんです。……夢じゃないですよね?」と念願のディナーショー開催に上機嫌の南波は、「デビュー15年とか16年となると、一般の企業で考えたら勤続15年……たぶん中堅社員、ベテラン社員になってくるよなあ。ベテランってなんだろう?と考えたときに『そうだ、ディナーショーだ』って思い付きまして。私自身、ディナーショーが気になるお年頃だったんです。というのも私、31歳になりまして。31にもなると節々が痛くて、自分が観に行くライブでもスタンディングだと翌日バッキバキになっちゃうので、日々椅子のありがたみを感じているんです。たぶんだけど、誰しも椅子に座ってライブを観たいんじゃないかなーと思って。あと私は自称美食家? グルメじゃなくて美食家。今後名乗っていこうと思ってるんですけど、美食家としては『おいしいものは正義』ですし、おいしいものを食べながら、ありがたい椅子に座ってライブを観ることができる。それって“たどり着く先”じゃん!って思ったんです」とディナーショーを企画した意図を明かす。そして「ここからは私が思うディナーショーにぴったりな、ムーディな夜の曲を」と「2センチのテレビ塔」「きっとすべては夜のせい」を2曲続けて披露。さらに、ランチタイムにも歌った新曲「ねこのうた」も半田のピアノアレンジによるディナーショーならではの演奏で歌われた。
「どんなことがあってもひたむきに歌い続けたい」
南波がこのライブのために選曲をしたのは、15周年にちなみ15曲。南波の楽曲はコード展開などが難解な楽曲が多く、すべてのアレンジを委ねられた半田は「曲はどれもむちゃくちゃカッコいいんですけど、本当に難しくて……(選曲リストを)1回閉じましたね」と告白する。今回のライブが初対面ながら、お互いのスケジュールの都合でリハーサルも1日しか設けられなかったという2人だが、演奏でもトークでも息はぴったり。後半は「こどなの階段」「少女、ふたたび」「月曜9時のおままごと」「Fille! Fille! Fille!」「ごめんね、私。」「乙女失格。」と新旧のバリエーションに富んだ楽曲がこの日限りのアレンジで次々と披露され、観客はゆっくりと椅子に腰掛けながらもハンドクラップを合わせて盛り上がった。南波は「10周年を迎えた2018年にワンマンライブをやって、ふうとひと息ついたところにコロナ禍がやってきまして。なかなか音楽活動もままならなくて……私、謎のサバイバル精神があって、どんな状況でも生き残りたい気持ちがあるから、生きることに精一杯になってしまって。何が起こるのかわからない世界で、不安定不確実な未来に私たちは進んでいて、将来のことが不安になりますけど、どんなことがあってもひたむきに歌い続けたいと今日改めて実感しました」と締めくくると、「そんな気持ちを込めて、最後に大事な曲を聴いてください」と、矢野も「一番手応えを感じている曲」に挙げた「カノープス」を披露。繊細さと力強さを併せ持つ歌声で会場を包み込んだ。
セットリスト
南波志帆「THE NANBA DINNER SHOW~15th Anniversary~」2024年6月29日 BLUES ALLEY JAPAN
昼公演
01. 髪を切る8の理由。
02. ねこのうた
03. にじいろの街で
04. 昨日の君のひとりごと
夜公演
01. たぶん、青春。
02. ストーリー
03. クラスメイト
04. プールの青は嘘の青
05. 髪を切る8の理由。
06. 2センチのテレビ塔
07. きっとすべては夜のせい
08. ねこのうた
09. こどなの階段
10. 少女、ふたたび
11. 月曜9時のおままごと
12. Fille! Fille! Fille!
13. ごめんね、私。
14. 乙女失格。
15. カノープス