YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで8月9日から8月15日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、THE FIRST TAKEのパフォーマンス動画から2本が初登場。5位にAqua Timezの「虹」、6位にaespaの「Supernova」がランキング入りをしている。
そのほか、乃木坂46のMVも3本が初ランクインを果たした。5期生の井上和がセンターを務めた36thシングルの表題曲「チートデイ」が26位に、一ノ瀬美空がセンターを務めた5期生楽曲「熱狂の捌け口」が61位に、36thシングルアンダー楽曲「落とし物」が71位に登場し、新しい世代の存在感と力強さを見せつけた。
10位にはBE:FIRSTの「Blissful」がランクイン。「Mainstream」や「Masterplan」などVFXを駆使したアーティスティックなMVが多い彼らだが、今回は夕日をバックに踊る温かい雰囲気の映像となっている。
33位には8月12日に20歳を迎えたMIIHI(NiziU)が、バースデー記念に宇多田ヒカルの名曲「First Love」をカバーしたMVが登場。歌い出しの深みのあるウイスパーボイスや、サビで聴かせる厚みのある高音、曲間の絶妙なフェイクなど、MIIHIの歌唱力の高さを改めて再確認できる。
往年の名曲やアイドルソングなど幅広い楽曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップ。
WEST.「まぁいっか!」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場22位
今年CDデビュー10周年を迎えたWEST.の23rdシングル「まぁいっか!」は、日常で起こるプチトラブルや困難な状況に対して「まぁいっか!」と明るく笑い飛ばす、彼ららしいポジティブなナンバーだ。楽曲提供をしたのは「POP&POP」でもタッグを組んだシンガーソングライターのmeiyo。
MVではメンバー1人ひとりがハプニングに見舞われるが、それでも笑顔で「まぁいっか!」と開き直る姿が印象的で、曲と同様に7人の放つ“陽のエネルギー”に元気をもらえる。振付は「膝銀座」以来2度目のタッグとなるパワーパフボーイズが担当。「OK」や「ピース」のポーズなど、歌詞に合わせたコミカルな動きにも注目してほしい。
YouTubeのコメント欄では「『ええじゃないか』でデビューして『まぁいっか!』で10周年迎えるWEST.が底抜けに明るくて前向きで大好き」「WEST.の言う『まぁいっか!』には無責任な感じが一切しないのが非常にいい」など絶賛する声が上がっている。
Kvi Baba「Friends, Family & God feat. G-k.i.d & KEIJU」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場64位
Kvi Babaが自身の誕生日でもある8月7日に配信リリースした「Friends, Family & God feat. G-k.i.d & KEIJU」のMVが翌8日に公開された。同曲は今年2月に東京ドームで惜しまれつつ解散したBAD HOPのG-k.i.dと、「Too Bad Day But… (Remix)」「Luv Myself」などKvi Babaの楽曲でたびたびコラボをしているKEIJUをフィーチャリングに招いて制作された。フックの「ありがとう 神様 Friends & Family / たまには行くよ会いに」というフレーズの通り、この曲で3人は仲間や友達、家族をテーマにリリックをつづっている。
Kvi Babaは仲間と過ごした思い出の場所を振り返り、KEIJUは「神様 もう誰も連れてかないで」と離れ離れになった大切な人への思いを歌う。そしてG-k.i.dのリリックはBAD HOP解散後の思いを表現しているように感じられる。そんな胸に迫る叙情的な言葉が、BACHLOGICの爽快なトラックと重なることで、温かみのある表情を見せている。
MVの監督を務めたのは坂本龍一、桑田佳祐、RADWIMPS、ONE OK ROCKなど有名アーティストのMVを制作し、Apple、日本コカ・コーラなど大手企業CMも手がけている柿本ケンサク。8mmビデオで撮影したような映像を組み合わせたことで、楽曲の持つエモーショナルな雰囲気が際立っている。
tuki.「ひゅるりらぱっぱ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場68位
早くも今年4作目となるtuki.の新曲「ひゅるりらぱっぱ」のMVが到着した。芝居や舞踊で使う拍子木で始まるこの曲は、三味線などの和楽器の音が鳴っていたり、民謡のような歌メロだったりと、全体的に和の雰囲気が感じられる。そこに速いビートを合わせることで、踊れるアッパーチューンに仕上がっているのが面白い。「人生寄り道回り道 生きたいように生きなはれや」「酔狂に遊べさぁ ここで踊れ」など幻想的な祭囃子を表した言葉遊びも見事である。改めて、15歳でこれほど完成された世界観の楽曲を作れてしまうtuki.の才能に驚かされる。MVのアニメーションはナナヲアカリの「奇縁ロマンス」、めいちゃんの「あっけない」などを手がけた十八番茶が担当しており、楽曲の雰囲気をイラストで見事に表現している。
この曲はPlayStation 5の新テレビCM「人類、あそぼー。」のCMソングに使われていることもあり、MVは58秒でPSのコントローラーのような物体が登場したり、観客が振っているペンライトがPSの○□△×ボタンの色に光ったりと、随所にCMとリンクする仕掛けが楽しめる映像となっている。