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コンガ、ボンゴ、ジェンベの違いって?

キニナル君が行く!
12分前2024年10月02日 9:03

ヤッホーみんな! 僕、キニナル君。音楽愛する大学生♪ 将来の夢は音楽でごはんを食べていくことだよ。でも、正直わからないことばかり。だからこの連載を通して、僕が気になった音楽にまつわるさまざまな疑問を専門家の人たちに聞きに行くよ。

こないだライブを観に行ったんだけど、パーカッショニストがいる編成でカッコよかったなあ。やっぱコンガのリズムって体が勝手に踊り出しちゃうよね。あれ、ボンゴだっけ? いや、ジャンベだったかな……。考えてみたらそのへんの違いがよくわからなかったので、YouTubeチャンネル「TAKAFUMI PERCUSSION CHANNEL」でパーカッションにまつわるさまざまな情報を発信しているTAKAFUMIさんのもとへ聞きに行ったよ! 実際にTAKAFUMIさんにパーカッションを叩いてもらった動画もあるので、最後まで楽しんでね!

取材・文 / キニナル君 写真撮影 / 押尾健太郎 動画制作 / AOI Pro. イラスト / 柘植文

コンガとボンゴの違いは

──今日はよろしくお願いします! それにしてもとんでもない数のパーカッションですね……!

学生時代から興味を持って、20年近く集めていたらこうなったよ(笑)。数えたことないけど、しまってあるのも入れたら100種類以上あるんじゃないかな。

──そんなに持ってるんですね! そもそもパーカッションってドラムとは別の扱いのことが多いと思うんですけど、どう違うんですか?

パーカッションは打楽器──手や道具を使って叩く、こする、振るなどして音を出す楽器全般を指す言葉で、ドラムも広義にはパーカッションに含まれるんだ。ただドラムセットとしてバスドラムやスネア、タム、シンバルなどある程度決まったフォーマットがあるから区別して呼んでいるんだね。パーカッションはコンガのように叩くものもあればウインドチャイムのようにキラキラした音を鳴らすものもあるし、かなり幅は広いと思うよ。

──今コンガの名前が出てきましたけど、いつもコンガとボンゴとジャンベがごっちゃになっちゃうんです……。それを教えてほしくて今日はやって来ました!

じゃあまずコンガとボンゴを解説していくよ。この2つはラテン由来の楽器で、樽のような形をしているのがコンガ、2つでワンセットになっているのがボンゴだよ。ボンゴは太鼓の径が小さい方がマッチョ(男)、大きいほうがエンブラ(女)と言って、径が小さいほうが高い音を鳴らせるんだ。

──へえ、ボンゴって“男と女”でワンセットなんだ。ラテンってことは中南米ですか?

うん、キューバだね。諸説あるんだけど、コンガはアフリカがルーツとも言われている。パンロゴっていう西アフリカの楽器なんて、見た目はコンガそっくりだよ。奴隷として中南米に連れてこられたアフリカの人たちにはもともと太鼓を叩くカルチャーが根付いていて、だけど楽器がなかったから現地にあった樽に皮を張って代用したんじゃないかと言われているんだ。なのでコンガはよりプリミティブで、コード楽器を使わないような、それこそ即興で踊るルンバで使われてたりする。一方、ボンゴの原型はもともとキューバにあったと言われていて。キューバにトレスっていうギターによく似た弦楽器があるんだけど、それとボンゴで演奏するミュージシャンがたくさんいたんだ。カホンと同じで、ボンゴは歌モノの伴奏という位置付けだね。

──コンガとボンゴってセットで使われることが多い印象があったんですけど、同じキューバの楽器でもルーツはまったく違うんですね。

そうだね。その後、ルンバにジャズ要素を加えたマンボっていうダンスミュージックが1940年代にキューバで流行って、2つが一緒に使われるようになっていったんだ。

──ライブだとコンガを2台とか3台並べて使うパーカッショニストも多いですよね。

ボンゴが径の大きさの違いでマッチョとエンブラに分かれる話をしたけど、コンガも一緒で、径の小さい方からレキント、キント、コンガ、トゥンバ、レトゥンバと5種類あって、それで音程の違いを出しているよ。昔は1つひとつ区別して呼ばれていたらしいんだけど、キューバに来たアメリカ人が現地の人に「これはなんだ?」って質問したところ、それがたまたまコンガだったから「コンガだ」と答えたら総称してコンガと呼ばれるようになったっていう説があって。

──え? じゃあもしそのキューバ人が持っていたのがキントだったら?

今頃「コンガ」じゃなくて「キント」と呼ばれていたかもしれない(笑)。

──面白い!

スピッツ「チェリー」に使われているのは

──コンガやボンゴのヘッド部分、ビンテージ感があってすごく味わい深いですけど、なんの皮を使っているんですか?

一般的に多いのは水牛かファイバー製だね。

──どう違うんですか?

単純に利便性の問題があって、本革だと湿度で伸び具合が変わるからチューニングが安定しないんだ。ライブでコンガやボンゴを使う人は安定性重視でファイバー製を選ぶことが多い。サウンド面では本革のほうが太くて温もりのあるトーンで、ファイバー製のほうがくっきりした音という印象かな。パーカッションがバンド編成に加わるときは大所帯なことが多くて、それだと帯域の被り合いがあるので、そういう理由もあってパキっと高音に抜けやすいファイバー製を使っている人もいると思う。でも僕はけっこうレアケースで、牛の皮を使っていて。

──水牛とは違うの?

水牛はバッファローのことで、バッファローのほうが皮が柔らかくて加工しやすいという特徴があって。牛は主にオスの皮を使うんだけど、オスって成長するとめちゃくちゃ硬くなる。ティンパニのようなクラシック音楽に使われる太鼓は子牛の柔らかい皮を使っているんだけど、僕が使っているのは去勢した牛。去勢すると加工できるくらいの柔らかさで、かつテンションがあるんだよね。けっこう厚みがあるからうまく使いこなすのが難しいんだけど、鳴らせるようになるとこっちのほうがパワーがあるんだ。あと楽器は日々触るものなので手触り感も大事だと思っていて。手で直接触った感覚に快楽を覚えるというか、叩いてるときの幸福度が違うんだよね(笑)。

──なかなかマニアックな世界ですね(笑)。ちなみに、ボンゴやコンガが使われてる曲でTAKAFUMIさんオススメの曲があれば教えてください!

めちゃくちゃディープな曲もあるんだけど、わかりやすいところで言うとアニメ「カウボーイビバップ」のオープニングテーマとして書き下ろされた菅野よう子とシートベルツの「Tank!」にボンゴが入っているよ。あとコンガが使われているのはスピッツの「チェリー」とか。ドラムだけだったらもうちょっとスッキリしていると思うんだけど、コンガが入ることでまろやか成分が加わって、優しい印象が強くなっているんじゃないかな。

──ホントだ! 今まで1万回くらい「チェリー」を聴いてきたけど、言われたら確かにコンガの音がする……!

もとは通信手段!? ジェンベの知られざる歴史

──ジャンベについても教えてください!

樽型のコンガに対して、上が広がっていてだんだん細くなるゴブレット型なのがジェンベだよ。西アフリカが起源の太鼓で、アフリカには文字の文化がなかったからいつからあるのか正確なことはわかっていないんだけど、少なくとも1200年頃にはあったと言われていて。最初は王様が街から街へ移動するときに、太鼓を叩いて「今出発したぞ!」って隣の街の人に伝える通信手段の道具だったみたい。それが時代を経て冠婚葬祭などの儀式でも叩かれるようになっていったんだって。気分を高揚させる音だからみんなで踊ったり歌ったりするのに向いていたんだろうね。

──あ、ちょっと待ってください! 「ジャンベ」ではなく「ジェンベ」が正式名称なんですか?

ジャンベのほうが一般的に広まっていると思うけど、REMOっていうドラムヘッドなどを作っている会社が「ジャンベ」を商標登録しているらしくて。実は僕も最近知って「パーカッション・マガジン」の連載などでは「ジェンベ」と書くようにしているよ。

──ヤマハが商標登録している「ピアニカ」みたいな感じですね。鍵盤ハーモニカに言い換えるっていう。

ちなみにジェンベのつづりは「djembé」で、これは実はフランス語だよ。アフリカでは「ジンベ」とか「ジェンベイ」とか「ディンベイ」って呼ばれていたんだけど、1800年代にフランスが植民地化したときにフランス人に認知されて「djembé」と呼ばれるようになり、それが世界のスタンダードの呼び方になったんだって。

──まさかフランス語だったとは……! アフリカ音楽はラテンミュージックほどは世界で流行ってないと思うんですけど、なんでジェンベはこんなに普及してるの?

それはなんと言ってもママディ・ケイタの存在が大きいね。彼は3年ほど前に亡くなってしまったんだけど、ギニア国立舞踏団としていろんな国をツアーしたり、ワークショップを開いたりしてジェンベを世界中に広めた功労者。日本にも何度も訪れていて、1990年代にジェンベブームが起きたりもしたんだよ。

──ジェンベのヘッドはコンガやボンゴより白っぽいですけど、これはなんの皮?

チューニングしやすいファイバー製もあるのは同じだけど、本皮は水牛ではなくヤギの皮なんだ。ヤギの皮ってすごく薄くて、抜けのいいパキッとした音に聴こえるのが特徴だよ。あとやっぱり野性味というか“アフリカ味”があるので、そういうのを出したいシチュエーションと出したくないシチュエーションによって使い分けてるパーカッショニストが多いかな(と言って叩く)。

──コンガと全然違う! 血湧き肉躍るようなサウンドですね……!

だよね。この曲でもジェンベが使われているよ。

ラテンパーカッションが世界中に広まった理由

──日本のポピュラーミュージックにパーカッションが加わる場合、コンガやボンゴなどのラテンパーカッションが多い気がするんですけど、その理由ってなんでだと思います?

やっぱりブラックミュージックの存在が大きいんじゃないかな。世界中の音楽シーンにアメリカが与える影響ってものすごく大きいよね。アメリカにおけるブラックミュージックって、もともとはブルースやジャズから始まって、ソウルやモータウンの時代にスタジオミュージシャンがたくさん登場するんだけど、彼らがパーカッションをよく使ったんだ。モータウンにはコンガ専門の奏者がいたりして。さらにモータウンブームの少しあとの1970年代には、ラテン系の移民の影響によりアメリカでサルサブームが起きた。なので、その2つが主な理由なのかなと。ブラックミュージックとラテンミュージックでラテンパーカッションが使われていて、それが世界的にヒットしたからっていう。

──その影響が日本にまで波及したということですね。

日本でも1961年に西田佐知子さんが「コーヒー・ルンバ」をカバーしたり、Sergio Mendes & Brasil '66の「マシュ・ケ・ナダ」が大ヒットしたりとか、ラテンミュージックを積極的に輸入していた時期があって。けっこう演歌にコンガが使われていたりもするし、民謡とも相性がいいんだよね。

──TAKAFUMIさんはバンドのサポートでパーカッションを叩くとき、どんなことを意識してますか?

音楽は自由なので「絶対こうじゃなきゃいけない」という決まりはないんだけど、例えばバンドにドラムがいない編成の場合は役割的には下支えする係になるので、ジェンベのベース(※)やカホンのベースをドラムのキックに見立ててボトムを作るのがメインになるかな。プラスアルファで金物系を入れて、カラーリングというか、上モノ的なアプローチもがんばってやるとか。

※ベース:ヘッドの中央部分を叩いて低音を出す叩き方の呼称。ほかにヘッドの縁部分を叩いて中音(=ドラムのタム)を出すオープン、高音(=ドラムのスネア)を出すスラップなどの叩き方がある。

──ドラムがいるときは?

ドラムがシンプルなパターンを刻みながらそのうえでパーカッションが複雑に動くと気持ちいいダンスミュージックになるので、そうやってリズムをもっと面白くすることを意識しているよ。もちろんバラードとか曲によってはそんなにリズムを出さなくていい曲もあるから、そういうときはカラーリングのほうにウエイトを置いて。

──TAKAFUMIさん的にはリスナーにパーカッションのどんなところを楽しんでもらいたいですか?

パーカッションはセットの組み方によって“各国の民族楽器大集合!”という感じになるから、やっぱり音色の多彩さかな。例えばラテン系の楽器を使えばご機嫌なイメージが湧きやすいし、タブラだったらなんとなくインドっぽい感じがするよね。パーカッションはそうやって楽曲の雰囲気を強調できるし、まだまだ知らない音色の楽器もあると思うので、「なんだこの音!?」っていうのを楽しんでもらえたらいいんじゃないかな。

まだまだある! 世界のパーカッション

──せっかくこれだけパーカッションがあるので、いくつかほかのも紹介してください!

タンバリンとか面白いと思うよ。もともとフレームドラムっていう紀元前からある太鼓が起源で、のちにジングルが付いてアラブタンバリン(レク)になり、それを中世ヨーロッパの十字軍が持ち帰ってクラシック音楽でも使われるようになったんだ。さらに植民地時代にブラジルに渡ってパンデイロになったり、北米では最初にゴスペルで使われたりと、世界中で愛されてきた楽器だよ。モータウンに「タンバリンマン」と呼ばれたジャック・アシュフォードっていう伝説のパーカッショニストがいたんだけど、彼の影響でThe Beatlesが「Help!」や「Day Tripper」など多くの曲で取り入れたくらいで。

──それだけ多くの人を虜にするタンバリンの魅力ってどんなところですか?

入っただけでグルーヴを生み出す力とカラーリングの力がすごく強い。レコーディングでドラム3点(スネア、ハイハット、バスドラム)を録って、それに何かキラキラ感をプラスできないかっていうときに、タンバリンは存在感が強いから候補に上がりやすいみたい。さっき紹介した平井大さんの「Slow & Easy」のサビでも使われているし、Official髭男dismのサポートをやってるぬましょうくんからもそんな話を聞いたことがあるよ。

──今までタンバリンって、ライブ中にボーカルの人が1、2曲叩くくらいの印象だったんですが、ここまでガッツリ楽曲を彩るポテンシャルがあるんですね。なんかイメージが変わりました!

よかった(笑)。あと個人的に好きなのはダラブッカかな。

──すごくきれいな装飾ですね! 形状的にはジェンベに似ている……?

それはたまたまで、ダラブッカはお酒を飲む盃、ジェンベは穀物をひく臼が原型と言われていて。ダラブッカはアルミがメインなので、特に高音を鳴らしたときにより金属感が出るんだ(と言って叩く)。

──アラビアンな感じがしますね!

まさにディズニーの「アラジン」とかの印象だよね。あとはよくベリーダンスの伴奏楽器としても使われているよ。続いて振りもの系を紹介しようかな。シェイカー、カシシ、マラカス、シェケレが“4大振りもの”と呼ばれているんだけど、その中でも最強なのがシェケレだよ。

──あ、前にライブで観たことあります! 「なんかすごいの出てきた」って思ってました! なんで最強なんですか?

バンド演奏の中でシェイカーを使っても音が埋もれちゃうケースが多いんだよね。やっぱり楽器のサイズで音量が変わるから、シェケレはそういう意味で土台になりうるくらいのパワーがあって。

──確かに大きいですもんね。でもずっと振り続けるの大変そう……。

これはひょうたんを乾燥させたもので、中をくり抜いているからそこまで重くはないけど、それでもほかの振りものに比べたら大変だよね。周囲にビーズが付いているのでもちろん振れば音が出るし、ボディを叩いてもベース音が出せるから、そういう意味でもほかの振りものと比べて用途が多いね。シェケレはナイジェリアのヨルバ族が起源の民族楽器で、近くのイボ族にはウドゥという楽器があって、そっちも面白いよ。

──壺……!? 形はシェケレに似てますね。

そうそう、陶器でできた壺(笑)。ジェンベとダラブッカもそうだけど、音が響きやすい構造を探っていくと、物理学的に同じ形状になっていくんだろうね。ウドゥは穴が空いていて、そこを押さえると低音が出るし、ボディを指で軽く触れると高い音が出るんだ。アコースティック編成の音数が少ない場面で使うと、海の中とか夢の中みたいな幻想的な音風景を描けるんじゃないかな。まだまだいろんな楽器があるから、もし興味を持ったら一度楽器屋さんに行って叩かせてもらうと楽しいと思うよ。

──いやー面白い! パーカッションの沼にハマったら抜け出せなさそうですね……! 今日はありがとうございました!

プロフィール

TAKAFUMI

マルチパーカッショニスト。アーティストのサポート、個人レッスンやワークショップの開催、YouTubeでの情報発信、「パーカッション・マガジン」での連載など、幅広く活動中。

TAKAFUMI / PERCUSSION (@takafumiperc) / X
TAKAFUMI PERCUSSION CHANNEL - YouTube
TAKAFUMI SAKAI (@takafumiperc) - Instagram

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