YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで9月6日から9月12日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、5位にNumber_iの「INZM」Hyper Band Liveミュージックビデオが登場した。バックバンドを従えて3人が向かい合って歌唱する映像になっており、彼らのグルーヴや歌唱力に圧倒される。9月15日には、ニューヨークのタイムズスクエアのビションに「INZM」のMVが流れた際の街の様子を記録した映像「Number_i on NY Times Square Vision(Sep. 6th, 2024)」が公開されているので、そちらもチェックいただきたい。
14位にはAぇ!group「Gotta Be」のMVがランクインした。ロックサウンドを全面に出し、ダンスや歌声にも熱さがみなぎっている。今年5月にデビューしたばかりとは思えないほど、5人の高い表現力が感じられる。
16位はAdo初の配信アルバム「唱LP」のリリースに合わせて公開された、「唱」の“アナザーストーリー”が登場。YouTubeのコメント欄では「旧『唱』のイメージカラーは黄色だけど、今回はその反対色の青紫?なのがすごい」という去年9月6日に公開された「唱」のMVと比較しての賛辞や、「日本に今まで存在しなかった『ハロウィンの定番ソング』という立ち位置で残り続ける曲になるのか」と予想する声が多く上がっている。
19位はツウィ(TWICE)の「Run Away」がランクインした。9月6日にMVが公開されて10日間で900万回再生を突破し、今もすごい勢いで再生数を伸ばしている。
20位は、King Gnuが今年1月から3月にかけて開催した全国5大ドームツアーの東京ドーム公演で、椎名林檎とコラボした「W●RK」のライブ映像が登場した。
25位は10月2日にリリースされるJO1の9thシングルの表題曲「WHERE DO WE GO」がランクイン。ハワイで撮影されたMVでは、砂浜を走る開放的なシーンやスーツ姿の11人が夕焼けを見つめるシーンなど、美しい映像を堪能できる。
迫力のあるライブ映像や思わず見入ってしまう美しいMVが並んだ今週は、下記の3曲をピックアップ。
MEOVV「MEOW」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場36位
BIGBANGのテヤン(SOL)、チョン・ソミ、 Zion.Tなど多数の人気アーティストが所属するTHE BLACK LABELから、初のガールズグループとなるMEOVVが誕生。そのデビュー曲「MEOW」が到着した。9月6日にMVが公開されると、YouTubeのMVチャートは韓国で1位、グローバルチャートでは21位と、いきなり好順位に輝いた。
新人グループながら多くの関心を集めている背景には、BLACKPINKの総合プロデューサーとしてグループを世界的な成功に導いたTEDDYがクリエイティブとプロダクションのすべてを手がけているというのがある。彼が選抜したメンバーの歌やダンスのスキルが高いことに加え、幼少期からアメリカのキッズモデルとして高い人気を誇るアメリカ人のELLAや、「ニコ☆プチ」「Seventeen」の専属モデルを務め、CMやテレビにも出演していた日本人のANNAなど、もともと知名度があったメンバーが所属しているのも大きいだろう。
デビュー曲は重低音のビート上で繰り出される5人の「Yo Yo Yo」や「MEOVV」の掛け声が印象的で、とにかく中毒性が高い。MVに関してはThe Beatles「Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band」のジャケットを想起させるような大勢でのダンスという、インパクトの強いシーンで始まる。ほかにも上下デニム姿やスポーティな衣装など、わずか2分54秒の間に彼女たちの魅力的な姿を楽しむことができる。
コレサワ「元彼女のみなさまへ」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場62位
最近TikTokやInstagramのリールなどのショート動画を中心に流行している、コレサワの新曲「元彼女のみなさまへ」。Billboard JAPANが集計する、TikTok上における楽曲の人気を測る「TikTok Weekly Top 20」では、9月18日公開のチャートで2位に初登場している。
この曲はカントリー調の軽快なサウンドに乗せて、自分が今付き合っている彼氏の元彼女たちへ「うちの人がお世話になりました / でもご安心を こっから先は / あたしが幸せにしますので」と感謝を伝える、コレサワらしい斬新な角度のラブソングになっている。そのフレーズだけを読むと、元彼女へ嫌味を言っているように思えなくもないが「喧嘩を売ってるわけじゃない / ただ素直に ありがとう そう思ってる」と純粋な気持ちで感謝の意を伝えようとするフレーズが面白いし、主人公の憎めない性格を端的に表している。
YouTubeのコメント欄では「元カノと5年付き合ってたって聞いて、私が越えられるのはまだまだ先か……って思うけど量より質だよね!!」「彼氏と元カノが長く付き合ってることにモヤモヤしてたけど、もう関係ないぞ!の気持ちで、わたしが彼を幸せにして素敵な毎日を過ごします」などの書き込みが見られ、曲を聴いた人の多くが自身の状況と重ねて鼓舞されていることがわかる。
GINTA & ODAKEi「UCHIDA 1」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場82位
3月にGINTAに改名してソロ活動を開始した元Repezen FoxxのDJ銀太と、元みきおだチャンネルのおだけいによる、本名が“内田”の2人によるコラボ曲「UCHIDA 1」が国内外で話題を集めている。TikTok上における人気を測るBillboard JAPANのチャート「TikTok Weekly Top 20」で、8月21日公開分から9月11日公開分まで4週連続で2位を獲得し、日本のみならず韓国や中国でもショート動画が大ヒット中だ。
MVの概要欄に「さぁ全国の内田よ、立ち上がる時が来た」と書かれている通り、「UCHIDA 1」は全国に約25万人いる内田姓の人々を鼓舞する楽曲になっている。同曲のプロデュースを手がけたリッキー・ルナは、去年4月にリリースされたDABOYWAY × Repezen Foxx 「BAKA」でもプロデューサーを務めたソングライター。過去にはピットブル「International Love」のトラックを作っており、「ラテン・グラミー賞」も受賞している。
8月5日にYouTubeで公開された「GINTAとODAKEiが語るUCHIDA1の制作秘話」の中で、GINTAは「『UCHIDA 1』の前に、まず(去年11月にリリースされた)『UCHIDA』という曲があるんよ。そのときに『UCHIDA 10』まで行こうと言っていて」と当時の計画を話し、おだけいは「『UCHIDA』じゃ全然物足りんかったもんね。『UCHIDA 1』を作るぞって、GINTAくんが西新宿のセントラルパーク前の公園で、芝生に座りながら語ってさ」と楽曲制作の背景を語った。
「制作秘話」の動画内でGINTAは、これからアメリカ、ラオス、ミャンマー、韓国、タイ、日本などで「UCHIDA 1」のリミックスが制作されることを明かしている。すでにマイアミのラッパー・スモークパープと元Repezen FoxxのDJまるによる「UCHIDA 1(Miami Remix)」、ラオスのラッパー3人による「UCHIDA 1(LAOS REMIX)」という2つのリミックスのMVが公開されており、今後この曲がどこまで広がっていくのか楽しみだ。