YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで9月13日から9月19日にかけて集計されたミュージックビデオランキング、および急上昇ランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文 / 真貝聡
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、5位にYOASOBIの「UNDEAD」が登場した。7月1日に配信リリースされてから、MVの完成を心待ちにしていたリスナーが多く、YouTubeのコメント欄では「2カ月間以上待ち望んだMVがやっと出た」「MV待ってた。この曲はYOASOBIの最高傑作だと思っている」と喜びの声が多く上がっている。
57位にはサザンオールスターズの「ジャンヌ・ダルクによろしく」がランクイン。6月にリリースされた前作「恋のブギウギナイト」のEDMを取り入れたディスコサウンドとは打って変わり、今回はサザンロックを打ち出したサザンの原点とも言えるロックンロールサウンドを楽しめる。
69位にはMAZZEL「K&K」のダンスプラクティスビデオが登場した。まるで心臓の鼓動を表しているかのような、躍動感のあるダンスに目を奪われる。
94位は¥ellow Bucksの「My Resort Pt. 2」。「目の前広がるオーシャンビュー」「優雅な時間流れるMorning」などのリリックとマッチしたロケーションのMVを観ることで、楽曲の解像度が高まるはずだ。
96位にはReol & nqrseの「ULTRA C」がランクインした。これはリズムゲーム「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」に登場するユニット・Vivid BAD SQUADにReolが作詞提供した曲を、nqrse とともにセルフカバーしたもの。Reolの高いテンションの歌に合わせてか、普段は低音のラップを歌うnqrseも高音の歌声を披露しているのが新鮮だ。
ロックからダンスミュージックまで幅広い楽曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップした。
宝鐘マリン「パイパイ仮面でどうかしらん?」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場13位
宝鐘マリンが10月16日にリリースする1stアルバム「Ahoy!!キミたちみんなパイレーツ♡」に収録される「パイパイ仮面でどうかしらん?」のMVが13位にランクインした。アラブ音楽のような異国の雰囲気を感じるサウンドと、80年代のアニソンを彷彿とさせるどこか懐かしい歌メロ、魅惑のヒーロー・パイパイ仮面について歌った世界観の強い歌詞も含め、すべてにおいてインパクトの強い楽曲だ。MVは80年代のアニメーションを想起させる画作りと、アラビアの踊り子が着るガラベイヤなど、楽曲とリンクしている点が多い。
MVのほかにもYouTubeでは、同曲の振付を担当した振付師・わたが踊ってみた動画を公開中。TikTokでは宝鐘マリンとおそろいのパイパイ仮面を付けられるエフェクトも公開しており、多角的に楽曲を楽しむことができる仕掛けが用意されている。
ちなみに宝鐘マリンは、12月7、8日には神奈川・Kアリーナ横浜で1stライブ「Ahoy!! キミたちみんなパイレーツ♡」を開催することが決定している。「パイパイ仮面でどうかしらん?」をはじめとしたアルバムからの新曲や、これまでに発表されてきた人気曲の数々が、リアルなライブ会場でどのように披露されるのか楽しみだ。
樽美酒研二「新NISA始めます。」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場23位
ゴールデンボンバーの樽美酒研二(Dr)が9月13日に公開したソロ曲「新NISA始めます。」は、タイトルの通り“新NISA”について歌った斬新な切り口の楽曲だ。ちなみに新NISAとは、投資による運用益が非課税になる、個人投資家のための新しい税制優遇制度のこと。この曲では「新NISA始めます / 制限まで積み立てる / 今は信じ夢抱いて / 天国への架け橋を そっと築く」と、壮大なスケールの歌詞と演奏で新NISAへの思いを歌っているのが面白い。
楽曲はもちろんだが、樽美酒が素顔を出して出演したMVも大きな話題となっている。昨年発表されたソロ曲「野グソング」のMVでも顔を出していた樽美酒。YouTubeのコメント欄では「なにこの訳のわからない曲のMVの時だけ樽美酒研二の素顔がバッチリ見れる謎のシステム(褒めてる)」と顔出しのタイミングを面白がる声が上がった。
この素顔の樽美酒がGACKTに似ていると評判になった。その結果、9月16日にGACKTがX(Twitter)でこのMVに反応。「樽美酒がGACKTに似てるという話が溢れていたから、MVを見てみた。GACKTというよりは筋肉をつけた及川みっちーに見えたのはボクだけか?それはともかく、新曲のふざけたタイトルとは予想に反した曲の展開と意外にもいい曲だったことにビックリだ。しかも声が甘い。樽美酒はこんな声してたんだな、、、と思わずにやけてしまった。」とポストしたことで、さらにこの曲が注目を浴びることになった。
NEWS「NEWSニッポン」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場33位
NEWSが結成記念日の9月15日に全シングルの各サブスクリプションサービスでの配信を解禁。続けて10月1日に全アルバムのサブスク配信もスタートさせる。さらにNEWSのYouTubeチャンネルでは、9月15日からMV全曲を毎週水・土曜日に2本ずつ順次公開していくという企画を開始。その第1弾として公開された1stシングル「NEWSニッポン」のMVが33位、メジャーデビューシングル「希望~Yell~」のMVが79位にランクインした。
2003年の「バレーボールワールドカップ」イメージソングになった「NEWSニッポン」は、メンバー9人時代の唯一の曲だ。この曲のリリース後にグループを脱退したONE OK ROCKのボーカル・Takaの今では貴重なパフォーマンス映像が観られることもあって、MVが公開されると話題に。YouTubeのコメント欄には「この9人全員が21年経った今もそれぞれの場所で音楽を続けてるって本当にすごい。みんなNEWSになってくれてありがとう」と、現メンバーや卒業したメンバーの活躍に賛辞を送る声が上がっている。
「希望~Yell~」は「2004アテネ五輪バレーボール世界最終予選」のイメージソング。ちなみに、2020年にリリースされたNEWSの11thアルバム「STORY」の中には「希望~Yell~」を元にメンバーが作詞作曲をした「クローバー」が収録されている。20年前に「幾千の星の夜を越えて Yellよ 届け」「夢を目指す君に幸あれ!」とフレッシュな姿で希望に満ちたエールを送っていた彼らが、さまざまな経験を経て「ずっと同じ景色見てきたね / 君がいるから幸せ / 幾千の悲しみや別れ乗り越えて / 永遠に君に幸あれ」と深みのある歌に行き着いたドラマを知ると、胸に込み上げてくるものがある。