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ZAZEN BOYS初の日本武道館ワンマンは3時間20分で36曲、自己紹介は11回

ビートに合わせて「ストレッチ・アームストロング」の腕をむんずと引っ張る向井秀徳(Vo, G)。(撮影:菊池茂夫)
18分前2024年10月29日 10:02

ZAZEN BOYSが10月27日に東京・日本武道館でワンマンライブ「ZAZEN BOYS MATSURI SESSION」を開催した。

日本武道館でのライブとは思えないほどに

2003年の結成から21年が経つZAZEN BOYSだが、彼らがこのステージで単独公演を行うのはこれが初。ライブではそのキャリアで作り上げたものをすべて出し尽くすかのように、約3時間20分という長い時間をかけて、初期曲から今年1月発売の最新アルバム「らんど」の収録曲までがたっぷり披露された。

開演時間を過ぎると、SEが流れるでもなく、メンバーは静かに定位置に。缶ビールを片手に現れた向井秀徳(Vo, G)に、待ってましたとばかりに拍手が送られる。缶を開けてビールを口にした向井は、興奮して立ち上がる観客に椅子に座るように告げ、「MATSURI STUDIOからやってまいりました。ZAZEN BOYSです」と挨拶。そして「You make me feel so bad」でライブをスタートさせた。メンバー4人は広大なステージの中央に固まって演奏し、演出も序盤はスポットライトなどの照明のみ。日本武道館でのライブとは思えないほどにシンプルな演出で、彼らは普段のライブハウスでのパフォーマンスを変えることなくそのままオーディエンスに届けた。

この日、唯一の映像演出は

ライブ序盤は「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」や「RIFF MAN」などで圧倒的なステージを展開。迫力あるタイトなドラム、グルーヴィにうねるベース、変幻自在なギターが正確無比に絡み合って一体となり、観客の耳に襲いかかる。そしてそんな曲が終わるたびに向井は「あの、ひと言だけ先に言っておきますね。MATSURI STUDIOからやってまいりました。ZAZEN BOYSです」「言い忘れておりました。MATSURI STUDIOからやってまいりました。ZAZEN BOYSです」「たぶん皆さん忘れてると思うんですけど、MATSURI STUDIOからやってまいりました。ZAZEN BOYSです」と何度も自己紹介。また時折、観客に向けて「Are You 吉岡里帆?」「Are You 長澤まさみ?」「Are You キャメロン・ディアス?」と問いかけるが、それ以外に長いMCはほとんどなく、バンドは次々に濃密なサウンドを畳み掛けていく。

「ポテトサラダ」が始まった瞬間、バンドの背後のスクリーンに、メンバーを指揮しながら歌う向井の姿が大映しに。さらに彼は手足が伸びる人形「ストレッチ・アームストロング」を取り出し、スクリーンには向井が曲に合わせて人形の手足を乱暴に引っ張る映像が流れ続けた。ちなみに3時間20分のライブの中で映像演出が行われたのはここだけ。これまでシンプルな照明だけでライブが進行していたこともあって、この演出は非常に大きなインパクトを残した。また「はあとぶれいく」では、飲み干した缶ビールをステージに投げ捨てた向井が、観客に深くお辞儀をしてから、かわいらしく両手でマイクを持って朗々と歌っていた。

休憩を挟んでライブは後半戦へ

血のような真っ赤な照明に照らされながら20曲目「Sabaku」を披露したところで一旦休憩タイムに。メンバーは退場し、その間は「公園には誰もいない」をBGMに、佐内正史が撮影したスナップ写真のスライドが上映された。休憩時間が終わるとZAZEN BOYSの4人は再びステージへ。サングラスをかけ、段平を片手に持って現れた向井は、そのまま段平を床に置いて「DANBIRA」を歌い始める。休憩を挟んでからも会場の熱気が冷めることはなく、「USODARAKE」や「安眠棒」など初期曲ではイントロが鳴るや否や客席から大歓声が。「HENTAI TERMINATED」と「HARD LIQUOR」はシングル「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」の収録音源を再現する形で、ノンストップで演奏された。

「Honnoji」ではMIYA(B)が前へ出てオーディエンスのハンドクラップを煽るが、複雑なリズムについていけない人も。「半透明少女関係」では「ラッセラー! ラッセラー!」「ええじゃないか! ええじゃないか!」という掛け声で会場が一体になった。「CRAZY DAYS CRAZY FEELING」が始まると向井は、キャップをかぶり、サングラスの上にさらにサングラスをかけてラッパー風に。大きなミラーボールの光の下で、ドスの効いた声でラップをし、スウィートに歌い上げた。そして最後に彼らは、最新アルバム「らんど」のラスト4曲を一気に披露。感情を込めてシリアスなリリックを歌った「永遠少女」では、曲の終わりに赤く色付いた木々の写真がスクリーンに映り、観客は不思議な余韻を味わった。

11回目の自己紹介、そして映画のようなエンディング

「本当に皆さん、ありがとうございます。MATSURI STUDIOからやってまいりました。ZAZEN BOYSです」と、この日10回目の自己紹介をしながら満員の来場者に感謝の意を示した向井。「胸焼けうどんの作り方」を歌い終えた彼は、終演を告げるように「屁のつっぱりはいらんですよ」とつぶやき、メンバーとともにステージをあとにした。このときすでに開演から3時間を超えているが、アンコールを求める観客の拍手は鳴り止まず、その声に応えてメンバーはみたびステージへ。向井はもう何本目かわからない缶ビールを開けてぐびっと飲み、「最後にですね、ちょっと深刻なお話をしなきゃいけないんですけど……」と真剣な表情で語り始める。その語り口から会場が「まさか解散?」という雰囲気に一瞬なるも、向井は続けて「我々、MATSURI STUDIOからやってまいりました。ZAZEN BOYSです」と11回目の自己紹介。フロアは安堵の気持ちが混じった笑い声で満たされた。

アンコールで披露されたのは「KIMOCHI」。回るミラーボールの下、ロマンチックなムードの中で4人は最後の1曲を届けた。この曲ではアウトロで向井が、ギターソロを弾く吉兼聡(G)に「見せ場だよ」と声をかけるひと幕も。このとき発生した観客と向井の「K・I・M・O・C・H・I」という大合唱は、曲が終わってメンバーが楽器を置いてからも終わらず、アカペラとしてしばらく続行。そして向井の合図で合唱が止まった瞬間、スクリーンにZAZEN BOYSのロゴマークが大写しになり、そのまるで映画のようなエンディングに会場は興奮で満たされた。

無駄のないストイックなバンドアンサンブルと、無駄なことしか言っていないようにも思える向井のシュールな立ち居振る舞いという、緩急のあるライブは全36曲で終了。バンドがたどってきた21年の歴史がいかに充実していたのかを、改めて確認させられる一夜となった。

セットリスト

「ZAZEN BOYS MATSURI SESSION」2024年10月27日 日本武道館

01. You Make Me Feel So Bad
02. SUGAR MAN
03. MABOROSHI IN MY BLOOD
04. IKASAMA LOVE
05. HIMITSU GIRL'S TOP SECRET
06. RIFF MAN
07. Weekend
08. バラクーダ
09. 八方美人
10. This is NORANEKO
11. 杉並の少年
12. チャイコフスキーでよろしく
13. ブルーサンダー
14. サンドペーパーざらざら
15. ポテトサラダ
16. はあとぶれいく
17. ブッカツ帰りのハイスクールボーイ
18. 破裂音の朝
19. I Don't Wanna Be With You
20. Sabaku

佐内正史写真上映(BGM:公園には誰もいない)

21. DANBIRA
22. USODARAKE
23. 安眠棒
24. 黄泉の国
25. Cold Beat
26. HENTAI TERMINATED
27. HARD LIQUOR
28. 6本の狂ったハガネの振動
29. Honnoji
30. 半透明少女関係
31. CRAZY DAYS CRAZY FEELING
32. YAKIIMO
33. 永遠少女
34. 乱土
35. 胸焼けうどんの作り方
<アンコール>
36. KIMOCHI

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